頑張れ日本刀!
令和と言う時代に刀鍛冶を続けている40歳の刀匠秀勝。
ハイテクな近代戦に於いては、無用の長物として衰退の一途をたどっている刀鍛冶業界だったが、秀勝は強い信念を持って刀を作り続けていた。
人気の無い山の中腹の荒ら小屋から、金属を叩くリズミカルな音が響いている。
少し音がしたと思うと、長い静寂が訪れる。
しばらくの沈黙の後、またリズミカルな槌音が聞こえる。
刀匠は、1000年前から殆ど同じ手作業で刀を製作する。
向槌を打つ、先手は残念ながら姿を消し、大正時代から動力ハンマーが主流になったとは言え
横座と言われる刀匠の仕事は全く変わっていない。
炉の前で、フイゴを操り勘で炉内温度を管理し、鉄を出すタイミングを測る。
小槌で火造りをする等、ここだけは令和の時代でも機械化が出来ない繊細な技術だ。
先手が居ない為、全ての雑用を刀匠自らこなし、接客、営業、経理等、事務職、営業職、生産業と全てをしないと行けないのが、現代刀匠である。
そんな中、秀勝は、情熱を燃やせる作刀を一心不乱にしていた。
作刀は勘のみが頼りなので、打つ時は飛び散った鉄が皮膚を焼いても気にならない程、集中している。
秀勝は、叩いている最中に激痛に襲われ、手が止まった。
あっ頭が割れる!
あまりの激痛に目が白黒するが、せめて鉄は炉へ、と気力で刀を炉へくべた瞬間、秀勝は気を失ってしまうのだった。