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100%……

 アクシル・ラディは身分はヘレンと同じ侯爵令息でゲーム開始時の年齢は12才である。彼は水・闇魔法を得意とする攻撃系のキャラで、年の割りにはゲーム開始時から大人の男と言う雰囲気を醸し出していた所謂お色気担当キャラだった。彼の妹のカトリシア・ラディが光属性を選択・強化した際に攻略者の一人となる。

 カトリシア・ラディは恋パズヒロインであり、元々孤児院で生活していた平民であった。しかし、5歳の時にうっかり魔力が有ることをしめしたがゆえにラディ家に途中で養子として拾われた設定だった。


 因みにこの世界設定では、魔力は貴族のみ出現させる事が出きるためカトリシアは貴族の血を引くのではないかという、ラディ家当主のしたたかな思いからたまたま拾われたのだ。

 本当にカトリシアの親が貴族であれば、うまい具合に恩を売ろうと言う当主の考えで、慈善・慈愛の念からなどからではない。それ故カトリシアはラディ家の令嬢とは名ばかりで、家では使用人と同じように雑な扱いで幼少期を過ごすことになるのだ。しかしカトリシアを日々見守り、家族からの雑な扱いから守り陰ながら支えて来たのが義理の兄となる2つ年の離れた―――


「……俺だ」


 普段とは違う合いの手にヘレンはハッとして目の前の人物をみる。

(え……あ、もしかして、私……)

 たらりとヘレンの額に汗が流れる。


「しかし……、ライラット嬢はうち(ラディ家)について良くご存じで」

 その一言がさらにやってしまった感を強く表す。


「あ、うっ……」

 言葉につまり、ヘレンの顔を流れる汗が止まらない。ついルイスと一緒にいる時のように回想を呟いてしまっていたようだ。

 日頃ルイスの前で回想を口走っていてもルイスは適当にヘレンをあしらってくれていたため、最近では特に気にしないで呟く様になっていたのが運のつきだった。


 しかし、呟いてしまったものは仕方ない。

 口からはなれた言葉は口には戻ってきてくれない。


 どうごまかそうかヘレンがアクシルを見上げれば、手遅れだと気づく。


 目の前に立つ彼はニッコリとヘレンに笑いかける表情とは裏腹に、切れ長の瞳はまったく笑っていない。むしろなにかおもしろい獲物を見つけたようなハンターの目となっている。


「しかも、ここがゲームの世界だとご存じでも有るようだ。まったく……」

 俺以外にも転生者がいたとはなとアクシルは小さく呟くがヘレンはその言葉を聞き逃さなかった。

(ゲーム、俺以外にも、転生者……)

 アクシルが放つ言葉を汗をかきながらもヘレンは必死で頭の中で反芻する。


「あ、貴方は転生者なの?」

 なんとかヘレンが声を絞り出せば、アクシルは無言でヘレンに近づき壁際迄押しやる。

「……そうだよ、ライラット嬢。俺も君と同じ転生者だよ」


 ヘレンの耳元でそっとささやかれ、思わずヘレンは赤面してしまう。

(ち、近い。顔が近い)

 イケメンは心臓に良くない。


 まして、アクシルはデュランに引き続きうららの推しメンの一人だった。


「へえ、もしかしてお前運命でも変えてとか、逆ハーレムでも夢見てた?」

 赤面したヘレンを面白そうに、でもどこか冷ややかにアクシルは見下ろす。

「そ、そんなわけないじゃない。私はただ、破滅予防のために婚約破棄されてひっそり……」

「それは困るから」


 言葉を遮るように、アクシルはそっとヘレンの顔の横に左手をつく。

 そのかっこうは端から見ればまさに壁ドンされているように見える。


「それだと、カトリシアが幸せになれない。お前にはちゃんとキャラ設定通り悪役令嬢して貰わないと」

 それから……



 そう言いながらアクシルは左手を退かす。

 その手には一冊の本が握られていた。


「これ、先に俺が借りるから」

 胡散臭い笑顔でニッコリとその本をヘレンに見せびらかすようにアクシルは持つ。


「えっ!?はっ!」

「俺もゲームで気になってたんだよねー。この本の中身。100%ナンパ成功ってどんなのか見てみたかったんだよね」

 先にお借りしますとクルリとヘレンに背を向けアクシルはスタスタと歩きだす。


「せいぜい悪役令嬢頑張ってね()()()()()()

  ヒラヒラと後ろ向きに手を振りながら去っていくアクシルの後ろ姿をただ、動くことが出来ずにヘレンは眺めていた。

ここまでお読みくださりありがとうございます。


不定期更新です。

アクシルもヘレンも見たかったのはナンパ成功伝授本。

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