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番外編SS☆策略

「ルーイー!見てこれ!」


 ジャーンとルイスの部屋で満面の笑みで一本の瓶をサータスはルイスに見せる。

「……これは?」


 ルイスが瓶の中を覗けば、そこには透明な液体が入っている。


「コレ?これね、中々手に入らない透明なのにお酒な珠玉の逸品!」

「酒?」

「そう!水みたいでしょ?なのに酒なんだよ?飲むと中々甘い果実のジュースみたいなんだって」

「へー」


 ルイスの素っ気ない反応に、サータスは頬を膨らます。

「あー、あんまり興味ない感じ?」

「……まだ未成年だからな」

「頭、硬いねルイー。デュランに似たんだね」


 今度は呆れる様に眉を下げるサータスにルイスは思わず良くそんなに表情が動くものだと苦笑いをこぼした。

「まあ、いいや。だったら成人したら飲みなよ、後一年でしょ?」

「……そういや、そうだな」


 先日ルイスは17歳を迎えたばかりだった。


 後一年。

 やっとここまできた。



(5歳で婚約したくないと泣かれ……)


 最初は自分を拒否された事に腹を立て、意地で婚約していた。

 なんで会ったばかりの子にまで拒否されなきゃいけないのかと。


 それから婚約破棄をかけて勝負と言う名目で度々会うようになり、常に予想の斜め上を行きこちらを翻弄してくるくせに、絶対に懐かず手にはいらない。真っ直ぐで飾らない裏表のない性格にゆっくり惹かれて――


 それなのに中々自分に見向きもしないで逃げ回る彼女を捕まえたくてもがいて。


 去年やっと彼女が昔から恐れていた恐怖のイベントなるものが終わった?ようなのに……。


(成人する頃には婚約からなんとか結婚に持ち込めるといいんだけど……)

 思わずルイスは肩を落とす。


 逃げられる様な事は少しずつ減っては来ている。

 前よりも穏やかに、ゆっくり少しずつお互い距離を埋めてもいる。それは確かだ。

 ヘレンの反応を見る限り嫌なわけでも、嫌われているわけでもないはずだ。

 なにより、意識して欲しくて昔より男らしくなっているアピールだって出来ている。それなりに良い雰囲気になるときだってあるのに……。



「それなのに、なんで……」


 拳にだけはグッと力が入る。


「まだチューもしてないしねー」

「!?」


 サータスの間の手に驚きルイスが顔を上げれば、呆れた顔のサータスがいる。


「大丈夫、流石にヘンちゃん見たいに心の声が駄々もれしてたわけではないから。ただ、ルイの事だからヘンちゃんとのいやらしい不健全考えてるんだろうナーって思っただけ」

 当たりでしょ?とサータスはなぜかため息をついてきた。


「……不健全なことはまだ考えてない」

「まだとか言うな。まあいいや。兎に角これ折角手に入ったんだから大事にしてよね」


 そう言うとサータスはじゃあねとルイスの部屋を後にした。


「全く、こんなの今置いていかれてもどうしようもないだろう」


(後でデュランに城で保管してもらおう)


 そう思いルイスはテーブルに瓶を置いて部屋を後にした。

 今日こそは未だに完全に捕まえられない彼女を捕まえる為に。







 ☆☆☆☆☆


「……で、なんでこうなった?」


 目の前の光景にルイスは思わず眉間の皺を指で押さえた。

「申し訳ありません殿下」


 ひたすらに頭を下げるデュラン。

「デュランは毒味をしなかったのか?」

「……今回はサータスが」

「……やっぱりか」


(嵌められた)


「……サータスはどこに?」

「先程用事があると離れて行きました」

「ここは俺が何とかしておくから、デュランはサータスと湖にでも行ってきたらどうだ?サータスも久しぶりに湖が見たいだろうから」


 冷めた目でルイスはデュランに言えば、デュランは至極真面目な顔で御意とだけ言うと直ぐに姿を消した。

 それを確認するとルイスはゆっくりと、頬を染めながら赤い瞳を潤ましながらトロンとした溶けるような表情のヘレンを横抱きにした。


「ふえっ……。んん、ふいしゅしゃまぁ(ルイス様)?」

「……ヘレン。呂律が回ってないし、可愛すぎてこんなところに居ると色々危ないから俺の部屋で休もう?」


 優しく言えば、抱かれたヘレンはふぁーいと、やはり呂律が回らない返事を返しながらルイスの胸にスリスリと頬を寄せてきた。

 ルイスはそんな状態のヘレンを無言で、かつ足早に速攻部屋につれていくと、早々と優しくベッドに横たえる。


「ヘレン……、無防備に可愛いすぎるだろ」


 触れたくてそっと頬を撫でれば、くしゅぐったいとルイスの手にヘレンはすり寄る。


「っ!……ヘレン」

「んー、るいしゅしゃまの手はぁ~あったか~い」

 尚もスリスリとルイスの手にニヤケながら頬擦りするヘレンを見て、ルイスの動きは急激にぎこちなくなる。


「あ、えっと……。へ、ヘレン、そ、ソロソロ、水でもの、飲むといいよ」

 パッと手を離し、傍から離れようとすればヘレンが急にルイスの腕を掴んでベッドに引きずり込んできた。そのせいで体勢を崩したルイスはヘレンに覆い被さる。


「!」

「へへへ~」

 驚いて見れば、ヘレンはにこやかに笑っている。その顔を見てルイスは息を吐く。

「……こんなこと、されたら……我慢できない」


 一房手に取り、漆黒の髪へ優しく口づけを落とせばルイスの動きは止まらなくなる。

 髪先から鎖骨へ、鎖骨から耳朶へ。

 その度にヘレンから甘い声が漏れ、益々ルイスの理性に歯止めが効かなくなっていくのがルイス自身にもわかる。


 耳朶から、額へ軽く触れるだけのキスを落とす。

 額からヘレンの柔らかい頬へ。


「……っ、ヘレン」


 頬から、採れたての果実の様な潤いで艶めく桃色の唇へ目線を移し、ルイスはゴクリと喉をならす。


「ヘレン……」


 甘い果実の誘惑に誘われる様にルイスが吸い込まれる様にヘレンの唇に己のそれを重ねようとした瞬間――


「ふへへ、おかあしゃんくすぐった~い」


 そう言ってフニャりと笑うヘレンにルイスは思わず固まってしまった。


(まさかのこのタイミングで……)


 まさかの、おかあしゃん……。


「……ヘレン、流石にそれは……萎えるから。しかも、噛んでるし」

 ガックリ肩を落としつつ、ヘレンを見れば既にヘレンはニヤケながら夢の中の住人になっていた。


「……まぁ、うん。まあ、ね……」

 ため息を吐きつつルイスもゴロンとヘレンの横になる。


「今度はちゃんと起きてる時に、ね」













「………」

「………」

「なんで、寝てんのこの人達」

「……殿下は、最近ライラット様とのお時間を捻出するために業務を片付けててお疲れでしたから」

「……でもさぁ」


 はあっとデュランとサータスのため息が被る。


 2人の目の前にはベッドで仲良く並んで寝息を立てるルイスとヘレン。


「据え膳食わぬは男の恥ってどっかの国では言うらしいよ?にしても――」

 せっかく上手くやったのにとサータスが呟けば、デュランの瞳が光る。

「サータス。未成年にお酒を飲ますとは……」


 やっぱり沈めてやるとサータスを羽交い締めにしてデュランは再び湖と向かうのであった。

次あたりで完結にしますねー。


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