表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/60

番外編SS☆コーヒー

ここから番外編です。


「あっつ……」

「……はしたないですよ殿下」

「そんな事をいったって……熱い」


 ムスッとした表情でルイスは手にしていたカップを下ろす。

 その中には黒い液体が香ばしい匂いを香らせていた。


 アクシル達の卒業イベントからしばらくしてヘレンとルイスは例のテラスでコーヒーを楽しんでいた。


「ルイス様は相変わらず猫舌ですね?」


 ヘレンは熱がるルイスをみてクスリと笑えば、ルイスは熱いのは苦手なんだとカップの中身を睨み付けた。


「毒味係りをとおしてから何かを食べるから、普段あまり熱々では食べものは俺の所に来ないからね」


 ルイスがそう言えば、ヘレンはそれはそうかと頷く。このコーヒーはデュランが傍で淹れて、淹れたてのかなり熱いうちにデュランが毒味をすませたので、ルイスは熱いまま飲むことになってしまったのだ。


「でも、これが飲めるようになったって事は、少しは大人になりましたねルイス様」

 笑いながらヘレンがそう言えば、ルイスは少し拗ねたように視線をそらす。

「……別に元から飲めてたよ」


 そんなところはまだまだ子供だとヘレンにまたクスリとわらわれ、ルイスはふんと鼻をならして一気カップの中身を飲み干した。




 ☆☆☆☆☆




「……これ、何が上手いんだ?」

「これがわからないなら殿下はまだまだお子様ですね。だからライラット様も他の男との噂をたてられてしまうんですよ?」


 そう言えばルイスはますますムッとした表情になった。


「あんなのは絶対出鱈目だし、僕は早く大人になるんだ……。早く他の男との噂が立たないくらいに……」


「それよりそろそろライラット様がお見栄になる頃では?」

 チラリと時計を見れば午後3時。

 そろそろ彼女の休憩時間に入る頃だろう。本日は彼女はこのちょっと薄暗いテラスにやってくるはずだと予想してルイスも薄暗いテラスに腰かけていた。


 どういうわけか学院に入学してからは彼女は薄暗い方へ薄暗い方へと好む場所をずらしていく。


 それはそれで、ルイスとしてはヘレンの可愛らしさや美しさが人目につかないのでいいのだが……。

「……今日は本当にこっちに来るかな?」

「どうでしょうね?昨日よりは薄暗い不人気そうな場所を選んで見たんですけど?それより俺は影に戻りますんで、殿下。くれぐれもライラット様に怖いかおで迫っては駄目ですよ!」


 デュランはルイスに念押しするとスッとどこかに姿をくらました。姿は見えないけれど、呼べばキチンと傍に居る位は近くにいるのだが、やはり姿がないのは不安になる。


 はぁとルイスは小さくため息をつく。

「違う。僕はもう大人だ。大丈夫」


 再びカップの黒い液体に口をつければ口内に苦味が広がる。


「苦……」

 やっぱり苦いとカップの中身と睨みっこすること数秒。ガサガサと回りの藪になりつつあるテラスまでの道が音をたて始める。

(来た?)

 ルイスが顔を上げればそこには、驚きに見開く赤い目につやつやとした黒髪の可愛らしい待ち人の姿があった。


「……え?ルイス様??」

「やあ、ヘレン。奇遇だね」


 冷静を装っては居るものの、内心ではヘレンの出現に激しく喜びで叫んでいるのはおくびにも出さず、ルイスは逃げ腰のヘレンをさくっと捕まえるとテーブルへと座らせた。

 ヘレンが逃げ腰でビクついているのは取りあえず見ない振りをして。


「ヘレン、コーヒーでも飲む?」


 最近は遭遇するだけでも難しいのに、やっと遭遇出来てもすぐに逃げ出すヘレンをとどめる為に、返事を待たず手早く彼女の好物とコーヒーを彼女の前に並べる。


 それでも、私は……と逃げ出そうとするヘレンをルイスは目で抑制する。

「僕が入れたの飲んでくれないの?それともヘレンはお子様だからコーヒーの苦味が苦手?」

 煽るように言えば、彼女がいつも食いつくのは知っている。


 チラリとルイスがヘレンを見れば、ヘレンはルイスの予想に反して瞳を輝かせていた。


「えー!この世界にもコーヒーあるの!?わー!久しぶりだわ!」

「え?」


 先ほどまでの逃げ腰はどこへやら、ヘレンは目の前におかれたコーヒーを口に運ぶ。

「はー、久しぶりに飲むと美味しいわ!良くテスト前に飲んでたのが懐かしい~」

 うっとりとまた一口コクりと飲み込むヘレンをルイスは静に見つめる。


(上手いか、これ?)

 ルイスもぬるくなったコーヒーを口に運ぶが、やはり苦い。

 思わず一瞬だけ眉間にシワを寄せてしまい、慌てて繕うもヘレンにはバッチリ見られていたらしい。


「やっぱりルイス様は子供ね。コーヒー苦かったんでしょう?」


 ニヤリと笑うヘレンは可愛い。可愛いが……。

「別に、これが苦かったんじゃないよ?子供じゃあるまいし」


 同い年なのに年上ぶられ、コーヒーの件で若干ルイスの負けず嫌いな性格に火が灯る。







(………あれから毎日どうすれば上手くコーヒーが感じられるか研究したからな)


 飲み干したコーヒーカップを置き、ルイスはふうっと小さく息を吐く。


 その努力の結果コーヒー自体は克服出来た。ただ、熱いのがなかなかなれないのは仕方がない事だと思う。

 猫舌は大人アピールに向けての今後の課題だなと密かに心で目標をたてルイスは再びコーヒーをいれるようデュランにカップを差し出した。

まったり番外編スタートです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ