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断罪

(なんかシュールだわ……)


 サータスはルイスの言葉を受けて麻袋からアクシルを出した。

 しかも顔だけを。


 攻略対象である彼の顔は現状虚ろでは有るものの、やはりルイスやサータスと同じくらい整っている。その整った顔が虚ろな瞳のまま顔だけ麻袋から出ているのだ。

 これをシュールと言わずなんと言うとヘレンは心でサータスに引いていた。


(流石サイコパスサータス。にしても……)


 ヘレンはアクシルを見る。


 彼を見れば、うつむき、小さくブツブツと何かを呟いていた。


「……アクシル様」

 そんな彼に勇気を出してヘレンが声をかけたその時、虚ろなアクシルの表情が怒りを露にしてヘレンを睨み付け声をあげる。


「っ!!お前の!お前のせいだ!お前がちゃんとシナリオ通りにしてくれなかったから、俺はまた妹を、姫を助けてやれないんだ!何で……なんで――」

「いい加減にしろ!」


 まだ麻袋に体を拘束されているので飛びかかって来られてはいないが、それほどの勢いで声を荒らげるアクシルにヘレンを庇うように立っていたルイスが声を荒げた。


「っ!殿下!騙されているんです!その女は本当ならば悪役だ!!貴方の本当の運命の人はカトリシアなんです!カトリシアは隣国の拐われた姫なんです!!それなのに、その女は自分が助かりたい一心で殿下のお気持ちを蔑み、欺いているのです!!殿下どうか目を覚ましてください!」


 アクシルのその訴えにヘレンは思わずビクリと肩を震わせる。

(そうよ、カトリシアはルイス様の本当の運命の人……。本当はルイスに庇われるのは私じゃなかった……)


 アクシルに図星を指摘されたようで心がズキリと軋む。


 確かに、ラスボス悪役令嬢となりたくなくてシナリオを変えたくてヘレンはルイスの気持ちなど最近まで考えて来なかった。


「黙れと言っているのがわからないのか?」


 表情こそ背後に居るためわからないが、声色でルイスが相当怒っていることがヘレンにもわかる。


「でん――」

「黙れ」


 ルイスのその一言で空気が変わる。

 ピリピリと張り詰められた空気が救護室を満たす。


「先程からベラベラとうるさい。貴様には発言など許していない。それからカトリシア・ラディは貴様が言うように誰と寄り添おうが隣国の姫になることなどない」


 あり得ないとルイスは冷たく言い放つ。


「そ。そんな、そんな事ない!カトリシアは、カトリシアは――」

「それはゲームの世界だからでしょ?」


 今度はアクシルの言葉をサータスがにこやかに遮る。

「え?」

「いやぁ。そのせいで僕ね、殿()()から超キッツーイお仕事押し付けられたんだよぉ?ワザワザ隣国までいって拐われたお姫様について調べてきたんだからねっ」

 大変だったんだからね、とサータスがわざとアクシルに微笑む。


「っ!そんなカトリシアは――」

「だから、それはゲームの事でしょ?ここは、現実だから、ね?」

 よく考えてとサータスはアクシルの頬をわざと突っつく。


「それにね。ねえ、知ってた?隣国は今王位継承争いで血で血を洗う内争を水面下で繰り広げてたんだよ。今はね、継承第2位のお姫様と第5位だったかな?の王子様対決らしいよ?あそこの国はそもそも昔から側室が大量にいるから、継承権を持ったお子さまが沢山いらっしゃってね。それこそ一人、二人跡継ぎが居なくなったくらいじゃ騒ぎにはならないんだよねー。むしろ今更出て来られちゃうと……」

 この意味わかる?とサータスは告げる。

「それ……は……」


 アクシルの顔色はどんどん悪くなる。それに反してサータスの笑みは深まる。


「ねえ、殿下。今更ポッとでの末席の姫君がまさかまさかで隣国の王子とできてたって事になったら隣国はどうなるんだろうね?」

 微笑んだままサータスはルイスを向けば、ため息をつきながらルイスは抑揚のない声で答える。


「まあ、まず隣国はこちらと繋がりが持てる末席の姫を利用しようと躍起になって継承権をあげるだろうな。何せ隣国よりはうちの方が上だ。そうなれば間違いなく隣国の継承権争いの上位に立っているものは末姫が邪魔になるだろうな」


(そんな事……)

 ゲームの設定には乗っていなかったとヘレンは唾を飲み込む。


 ただ、ルイスとハッピーエンドを迎えたカトリシアは隣国との交流の際、向こうの国にいたカトリシアの母や使用人達によって隣国の姫だと発覚するのだ。


「そんな事……」

 多分ヘレンと同じことを思っていたのだろう。アクシルの顔色は最早ない。


「そんな事はゲームになかった?そりゃそうだよね、ゲームはただ、ハッピーエンドを迎えさせて終わりだから。でも現実は違うよ」

 おバカさんとサータスは再びアクシルの真っ青な頬をつつく。


「まあ、その前に俺はヘレンと婚約破棄することもないから。間違ってもカトリシア嬢とどうこうなることがない」

 ルイスのその言葉でヘレンは少しキュンとしてしまった。

 嬉しいような、恥ずかしいような……。


「あ、ルイ。そう言う惚気今いらないからね。そうそう。それからね、僕ね途中で面白い事実も見つけたんだよー?ラディ家の現当主、スッゴーイゲスだったね。あの人ね、人身売買を始めとしてかなりの悪行に手をだしてたんだよ?しかも、人身売買についてはうちの国だと禁止されているからってよりにもよって隣の国でね。悪人だよねー、悪人は裁かれなきゃいけないよね?」

 だからね、とサータスはアクシルから離れてルイスの傍らに移動してきた。それ故ヘレンからはもうサータスの表情は見えないが、声色で楽しんで居るように感じてしまい思わずヘレンは身震いをしてしまった。


「ラディ家は人身売買、および数々の悪行にて、本日を持って王命のもと侯爵の爵位剥奪・貴族の証しでもある魔力剥奪、その子孫を含む貴族への復帰は永遠の不可、それから現当主は斬首となった。故にその嫡男であるアクシル・ラディお前からも魔力を剥奪させてもらった」

「この麻袋は王家代々伝わる秘伝のマジックアイテムでーす。その名も魔力吸いトール!」


 この期に及んでサータスの不真面目な雰囲気がルイスのピリピリした空気を切り裂く。

(ダサっ……。スッゴいダサい名前……)


 お陰でヘレンはつかの間、このピリつく雰囲気から現実逃避仕掛けてしまった。


「ま、待ってください!お兄様は、お兄様は何も悪いことをしてません!虐げられていた私を庇って――」

「カトリシア嬢、立場をわきまえろ」


 ルイスの発言をうけ、カトリシアが声をあげたがそれは再びルイスから出るピリピリとした空気で遮られた。


「カトリシア嬢、君は虐げられていた。君が望んでラディに入ったわけではないと調べはついている。だから君には温情として一代限りで準男爵の爵位は与えられた。だが一代限りであるため、魔力継承出来ないよう後で処理は受けてもらう」

「私は、私はなんだっていいんです!」


 カトリシアは唐突に声を荒らげる。

「私は、私は……元々何もない孤児だった。だから何でもいいんです!ただ、ただお兄様だけは……お兄様だけは助けてください」

「それは出来ない」


 カトリシアの決死の訴えは、ルイスの冷たい声で切られた。

「そもそもソイツはヘレンに……未来の王妃に対して悪事を働きすぎだ。ただ、ここが学院で、学院では権力行使できない決まりになっているだけだから、ヘレンには申し訳ないが仕方なくその事について裁かないで置いただけだ。それに、君にはヘレンを庇うために情報をもらったりしたから、これでも俺は相当我慢した結果の対応なんだが、まだ君は俺に温情をかけろと?」


(え?そ、そうだったの?)


 その言葉にヘレンが反応すれば、ヘレンの表情はうかがえないはずなのにルイスはヘレンの方に体を向けてきた。

 しかも大変申し訳なさそうな顔で。


「ヘレンすまない。本当はあんな害虫は捻り潰したかったんだが()()これしか出来ないんだ。あんなのに温情をかけることになってヘレンには本当に申し訳なく思ってる。ごめんね」

「あ、いや……別に……」

(今はって……。今じゃなければ、どうなるの?)


 むしろこれ以上は、やり過ぎなような気がして申し訳なさそうにこちらを見つめてくるルイスの視線をうけ、ヘレンは一人背中に大量に冷や汗を流していた。

ブクマ、評価ありがとうございます!

かなり励みになります!


今回はアクシルに現実を突きつけて見ました。

王族とか簡単じゃないんだぞー的な。

そしてやっとラディさん家を裁けましたー。

デュラン様はお医者様を呼びに行ってますので不在です。

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