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殿下の陰謀

「助けに来たのに、ブーたれられるとかおかしくナーイ?」


 頬を膨らましつつ、4人を乗せたボートはサータスの風魔法により学院側の岸へと素早く進む。

 ボートの中にはデュラン、サータス、ヘレン。そして、ヘレンを抱きしめ続けながらブスッとしているルイスが乗り合わせていた。


 結局気まずい現場を見られたヘレンとルイスは、あのあとぎこちなくサータスの誘導に従いボートに乗り込んだのであった。



 助けられて直ぐに気づく。ヘレン達がいた岩場は落ちたテラスからさほど離れて居ない所に位置していたと言うことだ。

 そして、意外にも落ちてから1時間しかまだ立っていなかったと言う事実はヘレンを混乱させた。


 体感では相当な時間を過ごしたきでいたのに……。


 そして風魔法を受けたボートはきっとあっという間に学院側の岸につけると言うことを、ヘレンは一人ボンヤリと流れる景色を見ておもっていた。


「と言うかさー、だいたいなんでルイは自分でさっさと戻ってこなかったのー?ルイなら勝手にもどってこれるでしょ!?ルイが勝手に落ちて勝手にヘンちゃんと不健全にイチャイチャしてたせいで僕なんて戻ってきて早々にデュランにひどい目に会わされたんだからね!しかも、まだぴったりくっついてて何まだイチャイチャしてるの?僕仕事してきたのに」

「すみません。私がうっかり落ちたせいで殿下を巻き込んでしまって……。私も殿下も魔法玉を落としてしまったせいで動くに動けなくて……」


 流石に落下に巻き込んでしまって、挙げ句ルイスが怒られるのは申し訳なく感じヘレンは思わず口を挟めば、久しぶりに見たサータスは怪訝な顔を隠さない。


「は?魔法玉を落としたから魔法が使えない?そんなのルイなら――」

「サータス、お前仕事疲れで鬱憤がたまっているみたいだよ。デュランに湖でも見せてもらったらどうだ?」


 それまでサータスの小言に無視を決め込み、ずっとヘレンを抱きしめ続けていたルイスは突然サータスの言葉を遮る。

 そしてルイスの言葉を受けたデュランは、慣れた手付きでサータスの顔を水面下に押し付けた。


 その光景はヘレンから見れば、良く映画とかで見た何かの拷問シーンのようで、慌ててデュランを止めにかかった。








「……ない、あり得ない。ルイもデュランもあり得ない。鬼、悪魔、鬼畜」


 水面下に顔を押し付けられたサータスは、髪に水を滴らせ恨めしそうに2人を睨む。

「あ、あの……サータス様。濡れて……」


 ヘレンがビショビショになったサータスを拭こうとポケットから、やはりまだビショビショのハンカチを取り出し渡す。するととサータスは驚いた顔を今度はヘレンに向けてきた。


「え?なんでハンカチが濡れてるのって!ヘンちゃんももしかして濡れてるの!?」


(……ん?)


「え?あ、はい……。湖に落ちたので」

「……そう、そう言うことね」


 ヘレンがそう言えば、サータスはまじまじとヘレンを見つめわかったと手をたたく。


 そしてルイスを変態と呟くときっと睨んだ。対するルイスは若干気まずそうに顔を反らしていたのをヘレンは見逃さなかった。

 ルイスの様子が先程からおかしい。

 サータス達がきた先程から何となくソワソワしているルイスに、なんだか引っ掛かりを覚えてはいるのだが、それがなんなのか良くわからないではいたためヘレンは閉口しているのだが……。


「……ヘンちゃん、流石に服乾かしてあげる」


 そう言うとサータスは魔法玉を取り出すことなく、風魔法を使い自分とヘレンの服を一気に乾かした。


「魔法玉……」

(使ってないのに、魔法が発動している)

 ヘレンはその事実に目を見開いて反応した。


(そう言えば、このボートも魔法玉がなくても魔法を発動させて動かしてる!)


 今さらながらに、ヘレンはその事実に気づき驚く。

 そんなヘレンをみて、ニヤリとサータスは笑うとどや顔をルイスに向けた。

 対するルイスは苦々しい顔になっている。


(……ルイス?)

 ジトリとヘレンがルイスを見れば、ルイスは明後日の方向に慌てて目を向けた。


(これは、何かある……)

 なおもヘレンがジーッとルイスを見つめるが、ルイスの目は反らされたまま動かない。


「ヘンちゃん。知らなかったのー?王家近辺の人間は、有事の際に備えて――」

「あ、つきましたよ殿下。俺とサータスはボートを返しておきますんで殿下とライラット様は一旦控え室に行っていてください」


 やはりサータスの言葉は今度はデュランによって遮られ、ヘレンとルイスは案内されるがままボートを後にして、一番近くの学院内の控え室へ歩みをすすめることにした。


「……殿下、先程からサータス様が言っていた言葉に私、少し気になることがあるんですけど……」

 歩きながらヘレンがルイスを再び見れば、今度はルイスは爽やかな王子スマイル全開で微笑みを向けてきた。


(くっ……笑顔が眩しい)


「ヘレン。サータスはちょっと国の仕事をしていたから疲れてるんだよ。ちょっと仕事任せすぎたかな?」


 何にも気にすることはないよっとニッコリと笑うルイスの背景が心なしか黒く、なぜかそれ以上話題には触れては行けないような雰囲気でヘレンは思わず閉口してしまった。


「ん……まあ、いいや」

 コホンと咳払いをし、ヘレンは気を取り直す。気になるのだが、ルイスをみる限り今は聞くべきタイミングではないだろう。

(後でサータス様に聞こう。それより今は……)


「ルイス様、私は少しカトリシア様が気になるのですが」


 彼女は大丈夫なのだろうか。


 ゲームではヘレンによりテラスに突き飛ばされたカトリシアは打ち所が悪くて気を失う。それは、先程の出来事もゲームと一緒の展開だ。

 しかし、ゲームでは直ぐに騒ぎに気づいた殿下がカトリシアに気づき介抱しようとして嫉妬に狂ったヘレンはカトリシアに魔法を放つのだ。


 そしてここが分岐点となり、誰がカトリシアを庇いヘレンに立ち向かうかでルートは異るはずだった。因みにカトリシアは戦闘時中に意識を取り戻し参戦となる。

 しかし、現状を考えるとシナリオからは掛け離れすぎているため誰ルートか完全にヘレンにはわからなくなってしまっていた。


(そもそもテラスが壊れたことや、私がここにルイス様と一緒に居ることは完全にゲームのシナリオじゃないはず)


 それに、戦闘が始まっていない今はカトリシアが意識を取り戻しているのかも気になる。それにシナリオから離れている今、アクシルの出方も気になるところだ。


「そもそも殿下がテラスから落ちた時点で会場もきっと騒ぎに――」

「なってないよー。だってそうならないように僕らがきちんと手はず整えたもん。ルイはその後で()()()()迎えにきてほしそうだったし、ね?」


 いつの間にかひょっこり背後に現れたサータスにヘレンはガバリと抱きしめられ、ヘレンはわあっと令嬢らしからぬ叫び声を小さくあげた。


「さ、サータス様!?それって」

 どう言うことですか?と言葉を続けようとヘレンが口を開きかけた瞬間、今度はルイスの腕がヘレンをグッとサータスから引き離し抱きしめる。

「サータス!」


 珍しくルイスが声を張り上げれば、サータスはわざとらしく肩をすくめてハイハイと口角をあげていた。


「いいじゃん、久しぶりに会えたんだし。しかも、僕ずーっと色々働いてきたんだよ。多少のご褒美いるんじゃない?」

「だからってヘレンに寄るな、触るな、話しかけるな。それから、色々うるさい」


 ガルガルとでも音を音を立てそうな程ルイスはヘレンを自分の身体でサータスから隠し言えば、サータスのクスクスと笑い声が聞こえる。

 どうやら彼はルイスをからかって遊んでいたようだ。


「それよりも、ライラット様。カトリシア様ですが今も救護室にてお休みになられてますが?」

 いかがしますかとデュランが口を挟んでくる。


 その言葉に、ヘレンは真顔になると静かに伺いたいのですがと告げた。

閑話休題☆陰謀の裏側

「なんでデュランまで僕の話の邪魔するの?しかも、ボート返すとか適当な嘘までついてさ。こんなのおいときゃ後で誰か取りに来るじゃん」


ヘレン達を控え室へ誘導したデュランにサータスはしかめっ面で問いかける。

「お前が殿下の邪魔ばかりするからだろ」

対するデュランはシレッと答え、サータスを見ずにテキパキとボートがどこかに流れてしまわないように杭にくくりつけていた。


「邪魔ねぇ。僕は本当の事を言おうとしただけだよ」



会場についたサータスは突然テラスが崩れ去る所にたまたま遭遇していたのだ。

そして、運悪くルイスにも見つかっていた。

だからだろう、ルイスは瞬時にカトリシアを会場の誰かに向かって放り投げ、サータスにやっとけの一言を残してヘレンが落ちた所に飛び込んだのだ。

「やっとけって……何を?」


ルイス達が落ちた所をサータスが覗き込めば、テラスからルイスはきちんと風魔法を使って瓦礫を避けながらヘレンを抱き抱えている姿がみえる。そして、そのまま彼が再び会場に戻って来るのかと思いきや、今度は何故かヘレンをかかえたまま湖の中に浸かっているではないか。

「なにしてんの?あれ……なんでわざわざ体ぬらしてるの?」

思わずひとりごちっていれば、これまたいつの間に姿を表したデュランが

「あれは殿下は何か不健全な事を思い付きましたね」

とサータスの呟きに加わる。


(不健全ってなんだよ……)

「いいの?デュラン。不健全をルイにさせちゃって。ってかアイツ戻ってこないんだけど。この高さなら余裕で戻れるでしょ?風魔法だって余裕で使えるんだから」


いつもなら不健全はなりませぬなどといって全力で止めに入るのに……。そうこうしているうちに2人はあっという間に見えなくなっていた。

「僕ちょっとルイ達迎えにーー」

「1時間」

「は?」

「1時間だけ、殿下とライラット様を2人にしておきましょう。殿下は何時でも魔法が発動出来ますし、何か危ない事が有ればすぐ連絡がくる手はずになってますし。それに……」

また半泣きで枕を投げられても困りますし。

そう呟き、会場のざわつきを止めにデュランは会場内へ向かう。


「?」

そんないつもと様子が違うデュランにサータスは、訳がわからないと首をかしげつつも、やっとけと言われた事を片付けようとデュランの後を追いかけたのだった。


おそらくルイスは会場を片付けとけと言う意味だったのだろうとサータスはため息をついていた。










ここまでお読みくださりありがとうございます!

昨日は更新できずすいませんでした。



閑話休題で書ききれなかったけど、

ルイスは色々腹黒不健全陰謀を抱えていた模様。


久しぶりにサータス参戦です。

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― 新着の感想 ―
[一言] サータスお帰りぃ~♪ 王子より、愉快なサータスが好きです☆ サータス頑張れ(≧∇≦)♪
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