お預け
(流石、無難攻略皇子キャラ……)
ルイスの話を一通り聞き意外にハイスペックだなあと、ヘレンは岩の隙間を遠い目で見る。
まだ明るいので、体感時間よりもそんなに時間は経っていないようだと言うことがわかる。
どうしてルイスがここに居るのか。カトリシアは?そしてなぜテラスは崩れ落ちたのか。
ルイスの話を纏めるとこうだった。
ヘレンがテラスから落ち去る瞬間カトリシアを抱えていたルイスは、会場に向かってカトリシアを放り投げヘレンの後をおって一緒に落下したらしい。その時にアクシルが血相を変えてカトリシアを受け取った様子が、視界の隅に見えたので彼女は無事だろうということ。
そして何よりもヘレンとルイスがここに居るのは、落下しながら気を失っていたヘレンを抱えてルイスがテラスの瓦礫を避けつつここまで泳いできたからだったらしい。
もっとも、ここについて直ぐに流石のルイスも気を失ってしまったようだ。そして、更なる不幸な事は落下の際にヘレンとルイスの魔法玉は何処かに流れてしまったようで、魔法が使えない状況にさらされて居るらしい。
因みにテラスは築年数の問題だったようだ。
かなり歴史有る学院自体の耐久性に限界が来ていたところに、カトリシアが勢い良く吹っ飛んできて衝撃を与えたせいで亀裂に止めをさしたのでは無いかとルイスは考えていたらしい。
学院の構造の脆さに呆れ、この国の、この世界の建築基準法は大丈夫なのかとヘレンは心で呆れていたのにはルイスは気づかなかったようだ。
(それでも、良くここまで一人でテキパキと対応できるわね)
多分ヘレン一人だけで落下していたらもしかしたらラスボス云々の前に、テラスの瓦礫に潰され湖の藻屑になってヘレン自身がお空に行っていただろう。
(それとも、まだ私がラスボス悪役令嬢の役割を全うしていないからゲームの強制力がいいように働いたのかしら?)
そうであれば、始めて強制力に感謝したいぐらいだとヘレンはますます遠い目になった。
「あれ?ヘレン……そこはさ、惚れ直すとかなんかじゃないの?」
遠い目をしたヘレンを不思議そうにルイスは覗き込んできて、そのタイミングで暮色の髪はサラサラとヘレンの頬に当たりくすぐったくなる。
「……なんで、惚れ直すとかになるんですか。私、あんな嘘つく人嫌いです。と言うか、どうして今殿下私に抱きついてるんですか?離れませんか?そして、そのサラサラヘアーがくすぐったいです。殿下」
(セクハラだわセクハラ)
失礼な事を思いつつ、つっけんどんにそう言えば、ルイスは背後でクスリと笑いを溢す。
「髪はごめん。それからさっきのも本当に悪かったって反省してる。ごめんねヘレン。だからそんなに他人行儀な呼び方しないで。あと、これ、セクハラじゃないからね。ヘレンが風邪引くと悪いから暖めてるつもりなんだけど?寒くない?」
そう言いながらルイスはヘレンを抱きしめる腕に力をこめてきた。
――遡ること体感一時間前。
ルイスから事の成り行きを聞いていた、ヘレンは話の途中で寒気に襲われていた。それもそのはず、全身びしょ濡れのままだったのだ。濡れた制服は容赦なく体温を奪いにかかる。
そして、薄暗く岩に囲まれたところにいたせいで日差しも入らず、結果ヘレンは寒さで震えていた。
そんなヘレンに気づき、ルイスは自らの制服のジャケットを脱ぎ羽織らせ、背後から抱き抱えて暖めてくれて居たのだ。
ルイスのジャケットは同じように湖に落ちたのにもかかわらず、有り難いことに既に乾いていてヘレンの身体に暖かさをもたらしてくれた。
加えてルイスに抱きしめられた事で、寒気は収まったのだが……
「と言うか、殿下だけ乾くの早くないですか?」
彼の話通りなら、テラスから一緒に落ちた時ヘレンと同じように湖に落ちている。それなのに彼はもう既に乾いているのだ。
髪なんて既に無駄にキラキラと王子を主張するようにサラサラしている。
「ん?そう?まだ少し俺も湿ってるけど?まあ、男物のジャケットは乾きが早い作りになってるし、俺の髪はヘレンよりも短いから乾きやすいんじゃない?」
そう言われれば、それもそうかとヘレンは納得する。
なんにせよ乾いてくれたお陰でヘレンは暖かい。
それに、疲労感もありそれ以上に詳しく考える事は正直めんどくさかったのもあり、このはなしは早々に切り上げることにした。
今問題にするのはそこではない。
「まあ、殿下が助けてくれたのには本当に感謝してますが!」
スルリとヘレンはルイスの腕の中で向きをかえルイスに向かい合う。
「無理するのは良くないです!貴方はこの国の王子様何だから何かあったらどうするんですか!それから、死んだフリもだめです!」
プクッと頬を膨らませれば、ルイスは嬉しそうにヘレンの頭を撫でる。
「……子供扱いしないでください。私は怒ってるんです」
「ん、してないって。ヘレンが可愛いと思ってるだけ」
そう言われれ、益々頬を膨らましたヘレンは再びからだの向きをクルリと変え、ルイスに背を向けつつ再び腕の中に収まった。
悔しいけれど、今はルイスの暖かさを手放せるほどヘレンは乾燥していない。
「ヘレン……だけど、心配してくれてありがとう。嬉しかった」
そう言ってルイスはギュッと優しく更に抱きしめ、ヘレンの耳元で優しく呟く。
耳にかかるルイスの甘く名前を呼ぶ声が、こんな時なのにヘレンの胸を高鳴らせる。
「ヘレン……こっち見て……」
そっとルイスの手がヘレンの身体の向きを変え、再びルイスとヘレンは向き合う。
「ヘレン、ヘレンが無事でよかった」
ルイスの片手がヘレンの頬にそっと添えられる。
「……ルイス、様」
近づく2つの唇が重なろうとしたまさにその時。
「ルイー?ヘンちゃーん?僕ここにいるんですけどー?」
わかってるー?とのんびりとした声に、2人は動きを止めたのだった。
あの!本当にブクマ、評価ありがとうございます!!
感謝かぎりです!!
評価、ブクマこれからもよろしくお願いいたします。土下座!




