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なくなった釣り堀

日間恋愛異世界転生/転移ランキングBEST300でランキング98位になりました!

皆様のおかげです!

本当にありがとうございます!!

 ヘレンは目の前の景色にただただ首をかしげていた。


(これもまさかの運命の強制力?)

 ここまで強制力は影響があるのだろうか?





 ――事の発端は数日前だった。


 デュランと楽しく釣りをしたヘレンはなぜか釣りで糸を下すたびに装飾品や宝石、ゲームではマジックアイテムと呼ばれるようなものばかりを吊り上げる事が出来ていた。

 そしてそれはあまりにも大量に釣ることができたので、ヘレンは思わずそれらを売りさばいて追放破滅エンドに備えた軍資金に充てようとしたところ、デュランに止められ、挙句吊り上げた装飾品のほぼすべては持ち帰られてしまったのだ。


 だから一人で今度は釣りに出かけ、再び装飾品等を吊り上げ換金し今度こそ破滅エンドに備えた備蓄にしようとヘレンは考えたのだ。もしくはルイスと婚約破棄するための慰謝料にしようともくろんでいたのだが、どういうわけかその目論見は今、かなわぬものになっていた。


(なんで?)

 ヘレンはがっくりと肩を落としため息を吐く。

 街に釣り道具を買いに行けば、どの店にも釣り竿らしきものどころか釣り用具もなく。

 仕方ないとヘレンが自作で釣り竿を用意すれば今度はあの釣り場がなくなっていたのだ。


(釣り竿とかまでなら何となく納得はできるけど、まさか釣り場がなくなるなんて……)

 これはもはや強制力と言わずになんというのだろうか?

 これでは完全にヘレンがゲームの舞台を降りることを許さないと言われているようなものだ。


 ヘレンは何度目かもうわからなくなった盛大なため息を目の前の立ち入り禁止の札をつつきながら付いた。


 そうして札の先に目線を移せば、そこには釣り場ように整えられたベンチも、柵も、そもそも地面もなくなった見たことのない景色だけが広がっていたのだった。


(なんか、ここまでゲームからそれられないようにされると、もう笑えるわ……)

「恋パズ恐るべしね……」

 いや、それともラスボス悪役令嬢パワー恐るべしといったところか……。


「まあ、ここにいてもどうしようもないわよね」

 ヘレンが仕方なく、元釣り場を離れようとしたその時、一陣の風が吹く。

「ライラット様?」

 風が去ると目の前の人物に、ヘレンははっとする。

「カトリシア、様……」

 なぜここに?


 しかし、カトリシアの格好を見てヘレンはすぐに納得する。カトリシアは釣りに来たのだろう。柔らかそうな黄金色の髪を後ろで一つにまとめ、ぶかぶかのシャツにズボン姿、挙句手にはヘレンと同じように竿を持っていた。ただ、ヘレンと違うのはカトリシアの竿は使いなれているような年季の入ったもので、竿とは反対の手にはバケツがしっかりと握られていたことだ。

 対するヘレンもカトリシアと同じとまではいかなくてもシャツにズボン、漆黒の髪はポニーテールに結ばれ手にはその辺で拾った棒切れに糸を巻き付けた竿を持っている。


「ら、ライラット様……その、もしかして……」

 まさか、そんな、ありえないかもと小さくつぶやきカトリシアはその先の言葉を発しようかどうか迷っているようだった。そんなカトリシアを見てヘレンは口を開く。

「まさかも、何も。あなたのような立派な竿でなくても釣りに来ていたのよ」

 ヘレンがそういえば、カトリシアの透き通った青い瞳はこれでもかと言わんばかりに見開かれた。

「ま、もっとも釣りをしようと思ってたんだけど、釣り場がこんな感じになくなってしまったから、今から帰ろうと思っていたのだけれども」


 チラリとヘレンは目の前でまだ瞳を大きく見開き、口をパクパク動かしているカトリシアを見て内心ドキドキしていた。


(な、なんかここでイベントってあったかしら?)

 ここで何かしらのイベントが起きてしまったらどうしよう。ヘレンの頭の中はいかにこの場を波風立てずに去ろうかでいっぱいだった。


(へ、平常心よ!平常心よヘレン!ここはさりげなく嫌みのないようにカトリシア様にご挨拶をして足早に去るのが一番!)

 よし!とヘレンは覚悟を決め、一歩カトリシアに近づくとごきげんようと頭を下げてカトリシアの脇を足早に通り過ぎようとしたその時だった。

「ライラット様!」

「へ?」


 カトリシアが竿とバケツを放り出し、ヘレンの腕をつかんで引き留めてきたのだ。


 ヘレンの脳内はそれだけでパニックになる。

「か、か、カトリシア様!?」

 思わず素っ頓狂な声を出しヘレンがカトリシアを見れば、カトリシアは真剣なまなざしでヘレンを見つめ返してきた。

「あ、あの……カトリシア様どうし」

 ました?そう言いたかったのだが、ヘレンがすべての言葉を言い終わる前にカトリシアの声がかぶさる。

「ライラット様、すいませんでした!」


 いや、一体何がすいませんなのか。

 ヘレンの頭の中はてんやわんや状態になる。

「いや、あの……」

「私、ずっとライラット様に謝りたかったんです!」


 カトリシアはつかんだヘレンの腕を力強く抱きしめる。


「ひぇ、あ、あの……カトリシア様?」

 わけがわからないんですけども!

 ナニコレ、ナニカノ強制力?


 あわあわしながらヘレンがカトリシアに声をかければ、カトリシアは今度は青い瞳を潤ませる。

「えええ!?カトリシア様!泣かないで!あの、私何かしてたらごめんなさい!」

 そんなカトリシアを見てヘレンの脳内はますますパニックに陥り、ヘレンはとりあえず全力で謝罪を繰り返すと、カトリシアは違うんですと声を張り上げた。


 その声にヘレンは思わずびくつき動きを止めた。

「違うんです。悪いのはライラット様ではないんです。悪いのは、私と……私のお兄様なんです」

「え?」


 その言葉に今度はヘレンの真紅の瞳が開かれることとなった。

前書きにも

書きましたが、皆様ありがとうございます!!

良き思い出とします!



そして、すいません。

もしかしたら明日は更新できないかもです。

明後日は頑張るんで……。

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