殿下と臣下
「どうしよう、俺死ぬかもしれない。ヘレンと恋人繋ぎしちゃった!しかもヘレンから!!しかもしかも!ヘレンが可愛い、可愛すぎる。なにあれ!俺の腕の中でモゴモゴして、殿下のせいで乱れたとか!顔が赤くなってるのとか可愛い過ぎる……。あれ襲ってよかったのか!誘ってたのか!誘われたのか俺!」
ベッドでゴロゴロと枕を抱きしめて、キャーキャー言いながら転げ回るルイスの姿をみてサータスはため息をつく。
「誘われてないし、それで襲ってたらヘンちゃんに嫌われるからマジでやめときなよルイ。しかも最後にものすごい勢いで逃げられてたじゃん」
全く……。
自分はルイスが放つ雑音を聞かされるために呼び出されたのかと、サータスは隣で座り優雅にお茶を飲むデュランを睨み付けた。
「……デュラン、あのバカは君がしつけて育ててきたよね」
「……俺はただ天使の如く殿下を大切に慈しみ、お世話をさせてもらっていただけです」
さも悪いのは自分じゃないとばかりにしれっと言って退けるデュランをサータスはさらに睨み付けた。
「それを育てたって言うよね?」
「いえ?むしろ幼少期より殿下に使える仕えるために、共に学び支え合い、悪いことなど入れ知恵してきた立場にいた貴方がああいう風にしてしまったんです」
まあ、きっとあの腐った大人達にルイスが放置され続けているよりはましだったかもしれないけれど。彼らはもう色々と終わっている。考えるだけでも反吐がでるとサータスは眉間にしわを寄せた。
因みにルイスはまだキャーキャー言って転げ回っている。
あの姿を全国民に晒したら彼の時期国王としての威厳は坂を転げるより早く落ちるだろう。
それよりもヘレンに見せたら多分彼女はドン引きするだろう。一度見せてみようか?とサータスは想像してさらに深く眉間に皺を寄せた。
きっと落ち込んだルイスのうざさが増すだけだ。
全くとサータスのため息はつきない。
「ねえ、そんなことよりルイはいつまで転げ回ってるの?いい加減うざい。ヘンちゃんに見せるよその姿」
(絶対しないけど……)
呟くようにいえば、デュランが今度はサータスを睨む。
「10年ですよ?10年もライラット様と上手く行ってるようで全く行ってなかった殿下が、ここに来てやっと抱きしめる事ができて、多分男?もしくは人として認識してもらって、と言うかやっと見て貰えて、挙げ句何とか手を触れてもらえたんですよ!この世の幸福を全て殿下は受けられたのです。しばらく喜ばせてあげてください。また嫌われたらお可哀そうで……」
ホロリと涙をぬぐうデュラン。
(ヘンちゃん抱きしめて手を繋ぐだけがこの世の幸福なのか?やっぱりデュランがルイをダメにしてる)
デュランも何気にルイスをけなしているように思えたのだが、そこはきっと触れない方がいいだろう。これ以上の対応は正直めんどくさいとサータスは引いてしまった。
(それにどこの世界に枕を抱いて転げ回ってキャーキャー騒ぐ王子が居るんだよ。これで良いのか、この国は)
そもそもヘレンと関わる事がこの世の幸福なら、サータスはルイスよりも早くその幸福全てを受けている事になるはずだ。
はあああ、とサータスは思わずこの国の未来を嘆きつつ眉間のしわをできるだけ解そうとこめかみをもむ。多分このまま眉間にしわを寄せ続ければ、自分の顔はひどいことになるだろうとため息までもこぼれてしまう。
「まぁ、どうでも良いけど。僕、ちょっと忙しくなりそうだよ」
そう言えば、キャーキャー王子は騒ぐのをピタリとやめたようだ。チラリと見れば、いつの間にか真顔になりベッドで座っていた。
「……ってことは、サータスはしばらくヘレンに近付かないでくれるんだな」
急に真顔になったかと思えば……
「……ルイ。なんか一発殴っていい?」
「ダメに決まってますよね」
思ったことを呟けば、デュランが即座に否定してくる。
「じゃあデュランが責任取って僕に殴られて」
「寝言は寝ていってください」
「二人ともやめろ。まあサータスがヘレンに近付かないのが嬉しいのは本音だけど……」
「本音かよ」
「うん。それよりサータス」
ルイスは暁色の瞳を細ませる。
その瞳にはヘレンにむけるような暖かさなど微塵も感じられない。むしろどこか冷たくくすんでいる。
そんな真顔のルイスは先ほどまで、はしゃいでいた人物とはまるで別人。
彼が座っている場所はベッドではなくて、まるで王座のようだ。
これこそ本来の彼の姿だ。
淡々と、でも確実かつ迅速に物事を推し進めるように手綱を握る。まるでルイス自身が運命を作っているような姿にサータスは口角をあげる。
彼のこの姿は一番好ましい。
チラリとデュランをみれば、同じように感じているだろう彼も心なしか嬉しそうだ。
「しくじるなよ」
その一言で詳しい話などしなくとも、彼が既にサータスがしてきた事やこれからすることを理解しているのが伺える。
そう言う所がサータスには堪らない。
「承知しました。ルイス殿下」
(ヘンちゃんが絡ないとルイはマトモなのにねぇ)
未来の王妃予定であるヘレンが絡んでもいつもこれくらいなら良いのにと、思う時もあるけれど腑抜けた所も所で調教しがいがあるからいいかとサータスは益々口角をあげる。
やっぱり彼のそばにいるのは何が起こるのかわかっていたとしても面白い。
亀ですいません!
ちょこちょこ修正しながら進んでます。
多分時々見直すとあれ?ってなるかたもいらっしゃるかと……すいません。
そして、この間大量に誤字修正ありがとうございます!
いつも助かってます!
ブクマや評価などアクションがあるとやっぱり嬉しいもんです。
みてて貰える=やる気になる人間なので本当に皆様に感謝です。
そして、相変わらず亀歩みで不定期は変えられなくてすいません。




