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思惑

 薄暗い廊下に1人の青年の足音だけが重たく響いていたと思えば、目の前のある人物を見つけその歩みを止める。




「……なんのようだ」

「んー?用?僕はただ、ここでぼーっとしてただけだよ」

 苛立ちを含む声でアクシルは壁に寄りかかっているサータスに声をかければ、さも興味のなさそうな声でサータスは答える。


「ただね、君が色々と僕のペットちゃん達に手を出すのは面白くなくって」

 壁から離れつつサータスはアクシルに近づく。

「手を出す?俺は何もしてない」

「……あー、そうだね。()()何もしてないね」

 サータスはアクシルの前に立つとアクシルの顔を覗き込む。


 2人とも長身では有るが、若干アクシルの方が背が低いためサータスが覗き込む形になってしまいアクシルは顔を歪める。

「ヘンちゃんも君もよくわからない運命に固定観念を置きすぎじゃない?だから偶然や偶々が必然に感じてしまう。そのせいでありもしない事実をそれが運命だと感じちゃうんだよね。特にヘンちゃんなんて単純だから」


 サータスの目は細められ、口角がやや持ち上がる。整った顔な故に一見笑っている様にも見えるけれど、決して彼は笑っているわけではないのはみて取れる。

「……何が言いたい?」

 サータスに顔を背けることなくアクシルは冷たくいい放つ。


「さぁ?別に。ただ、思い込みがあると白いものも黒くなるんだなあって思って。そうだな、例えばそんなこと()()()()()()()誰かが突然あたかもそれをしたかのように叫べば、まるでその事実がおこったように思い込ませるのなんてらくなんだなって」

 クスクスと笑うサータスの目は相変わらず笑っていない。ただ、細められながらもアクシルを真っ直ぐに見ている。


「……何が言いたいのかわからんな」

 アクシルはサータスを押しやり、再びゆっくり歩きだそうと足を前に出した。

「そう?それならこう言えばいい?ヘンちゃんが男達をけしかけたって、君の掛け声1つでとっさにあそこに居た人達を誘導してその環境を作り上げるなんて簡単な事をして満足?」

 その声にアクシルの踏み出した足は止まる。

「あ、反応した。分かりやすく言ってあげたからわかった?おバカさん」

「……」

「まあ、それで自分が悪役なんだってヘンちゃんが思い込むのもどうかと思うけど。本当にヘンちゃん単純だから」

 躾が必要だよねっとサータスは呟く。

「まぁ、君の声のお陰でルイとヘンちゃんの仲は深まったみたいだからいいんだけどね。君のお姫様が白鳥になる日は来ないかもねー」

 すると突然アクシルはサータスの胸ぐらを掴み壁に押しやる。ギリギリと押しやられる力に思わずサータスは軽く眉間に皺を寄せる。

「っ!……痛いんだけどぉ?」

「選ばれないキャラクターの分際で俺たちの邪魔をするなサータス」

「俺たち?違うだろ?()()だろ?」

「うるさい!お前に何がわかる?」

 更にギリギリとサータスを押しやる腕にアクシルが力を込めれば、サータスは苦しそうに顔を歪めた。

「……わか、るさ。君はゲームだの、運命だとやらに、捕らわれている、だけ、のバカだってこと、はね」

 胸元を押しやられているためサータスの声は跡切れ跡切れではあるが、アクシルを煽る。

「はっ。言ってろキャラクター。お前は強制力を知らないだけだ」

 そう吐き捨てるように呟くとアクシルはサータスを掴む手を離し今度こそ歩きだした。

 解放されたサータスは壁にもたれかかったまま小さくむせこみながらも去り行くアクシルの背中を楽しそうに見つめていた。


「本当にバカだなぁ……」

 小さく呟き、今度は本当に楽しそうにサータスはクスクスと笑い出した。









 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️



(……成り行きとは言え)

(勝負と言われて思わずとは言え……)


 ヘレンは自室で頭を抱えていた。

(だってあれ、私に拒否権なかったじゃない)


 薄暗くてよく見えなかったが、多分、きっとあの腹黒無難攻略対象は笑っていた。



 ルイスの部屋から逃げ帰ってきたのは数分前のことだ。




『俺と勝負をしよう』

 ルイスがヘレンの傍で耳打ちした言葉が頭を反芻する。それだけ出はなく、同時にルイスの息がかかった耳や抱きしめられていた時触れられていた所が熱をもっているかの様に熱い。


『万が一ヘレンが勝ったら…………』

 そこまで思い出し、ヘレンは思わずベッドに潜り込み枕に顔を埋めた。


(これは敵前逃亡しないだけ。逃げるなんて何となく嫌なだけ)

 そっと枕から顔をあげれば、ベッドサイドに飾られたカモミールの花束が目にはいる。


 吹き飛ばされた時に一緒に吹き飛ばされたと思っていたのだが、ルイスの部屋を出て自室についた頃に、そこにいたデュランに花瓶ごと渡されたのだ。気絶しているヘレンと共にルイスが回収してくれていたらしい。


 あの少年の顔がルイスと被り、思わず笑ってしまう。

(さっきはあんなに落ち込んで、いっぱい泣いたのに……)


 何故だか少しだけ今は、前向きになれているような気がする。

(泣いたカラスが笑ったって私見たいな事を言うのよね、きっと)



(でもいいわ。勝負だもん、受けて立つわ)

 どうせなら勝って婚約破棄もお願いしてやるんだから。


 ヘレンはベッドから降りると自分の机に向かい合い、サータスからもらった仮装舞踏会の招待状を確認しはじめた。

あの……

明日は更新出来ないかもです(弱気)

すいません

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