表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/60

匂いと魔力

「…………いない」

「いや、その辺にいるだろ」

 そう言えばキッと半泣きの暁色の瞳が此方を睨んできた。


(泣くほどのことか?)

 というか、良い年してなぜこれしきの事でなく?もうすぐ僕たち16才になるんだぞ?


 もしかして、ゲーム云々の前にコイツの性格に難があるからこんなことになっているんじゃないのかと思えてくる。


「サータス。今お前俺に失礼な事考えてただろう」

「え?うん、考えてた。ルイってバカだし」

 グサッ

「ダサいし」

 グサッ

「ヘタレだし」

 グサッ

「ヘンちゃんに好かれる要素ないのに、無駄に諦め悪いヨナーって思ってた」

 ドスッツ


 僕が言葉を隠すことなく言えばどうやらその言葉達はルイに突き刺さっていったらしい。とくに最後のヘンちゃんにーの言葉はクリティカルヒットでもしたのだろうか?倒れ混むようにルイは地面に四つん這いになっていた。


「……サータス、お前いつかその首と体離してやる。殿下、大丈夫ですよ。殿下はダサくないです。今日の服は私が選びましたし、多少イマイチでもライラット様とは拒否され続けてもギリギリ何とか10年婚約者でいられたじゃないですか?」

 バキューン

 優しい微笑みでデュランがルイスに留めをさす。

「……デュラン、ルイの生命力なくなったわ」

 僕が呟けば、ルイは口から白いモヤを出し白目を向いていた。


(全く……)

 僕、将来コイツに仕えるの辞めようかな?


 ため息を吐きながらサータスはルイに自分の手を近づけた。

 ヘレンが買い物に出たと伝えれば喜んでヘレンの後を追いかけてきたはいいがいまだにルイス達はヘレンと遭遇出来ずに今に至る。お陰でルイスのテンションはおかしな方へと暴走仕掛けていたのでサータスはついついいたずらを仕掛けていた。


「ほーら、ルイ。戻っておいでー。ほらほらほら、この匂いは誰のだー」

 ルイスにサータスの手をかざせば途端にルイスはハッと意識を取り戻すからサータスは思わず気持ち悪いと呟いてしまった。

「サータス!!こ、これは……」

(……僕、ちゃんと何度か手を洗ってるんだけどなあ)

 いったいコイツの鼻はどうなっているのだろう。


 思わずサータスが白目になっているのをお構いなしにルイスがサータスの肩を掴みかかり揺さぶる。

「サータス!なんでお前からヘレンの、ヘレンの匂いが!!」

「……なんでって、僕がヘンちゃんと手を繋いだから」

 こんな風に、と尚も肩を揺さぶるルイスを無理やり押し返しサータスが自身の両手を使って指を絡ませた恋人繋ぎをルイスに見せつける。

「!?」

 驚いて動けなくなっているルイスにサータスはニヤリとあくどい笑いを見せる。

「僕ヘンちゃんと恋人繋ぎしちゃった。ルイはしたことある?ヘンちゃんと」


 その言葉を皮切りにルイスは人混みにもうスピードで駆け出していた。


「……全く、サータス。もう少し優しい励ましは出来ないのか?」

 デュランはサータスを睨むが、サータスは気にしない。むしろにっこり笑い返す。

「いや、十分優しいでしょ。だいたい未来の王様ならさっさと気づかなきゃダメでしょ」


 ()()()ヘレンに指を絡ませて手にサータスの風魔法を絡ませたから、匂いで辿るで有ろう彼には彼女を探しだす十分なヒントにはなるだろう。

 いつ彼は彼女が自分にかけている地味な魔法に気付き、その魔法の解き方をわかるだろうか?彼女にまとわりつく闇魔法は風で吹き散らせばいいと。もしくは……。

「サータス、楽しんでるだろ?」

 デュランに声をかけられサータスは思考を止める。


「勿論!僕だって普段からルイに振り回されてるんだから、多少遊んだっていいでしょ」

「……殿下がお可愛そうだから、ほど程にな」

「ハイハイ。それより早くルイ追いかけなよ、影さん」

「……今日は休みだから影じゃない。執事だ」

 軽く舌打ちするデュランをみて、更にケラケラと笑うサータスに背を向けてデュランは渋い顔をしてルイスを追いかけるべくして走り出した。


「全く、皆手がかかるね」

 多分ルイスは日が完全に傾く前にはちゃんと見付けられるだろう。見つけたら見つけたらで恩を売ったと遊び、もしも見付けられなかった時はお仕置きと称してしてまた遊べばいい。

 サータスの笑いは止まらなかった。




 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️


(どこだ?どこに?)

 ヘレンの甘い香りを便りにルイスはポケットから魔法玉を取り出し、走りながら魔力を注ぐ。

(ヘレンの匂いを運んでこい)


 若干変態の様な魔法をルイスは発動する。

 ここまで来ると寧ろストーカーレベルだが、残念ながら誰もそれを否定するものはここにはいない。


 ルイスはひたすらストーカー魔法をかけ続け、走り続けるも街は広い。


 いったいどのくらい走っただろうか?


 ゆっくりと日が傾いてきた空をみてルイスは汗ばんだ額を拭う。

 彼女はもう街には居ないのだろうか?



 何度か通りすぎていた街の中心部である噴水の縁にルイスは腰掛け、空を見る。

(……ヘレン……ん?)


 ふと気付けばヘレンの残り香とある事にルイスは気付く。

「ヘレンはここに、きた?それにこれは……闇魔法?」


 ルイスが残像した魔力に触れようとすると途端に存在感が薄くなる。

(…………これは、ヘレンのか?)


 腐っても王家の血筋。

 ルイスは、魔力については自分の身を守り、ひいては国を守るために知識としてある程度は身に付けさせられていた。いくらヘレンに腹黒無難攻略とこき下ろされていようと、一応次期王。教育は徹底されている。お陰で魔力の残り香とも言える残像をみて何となく発動した人物を多少は特定できる。


 ゲームではそれ故プレッシャーから逃げるため、キツく煩く、可愛げのないヘレンより、優しく包むカトリシアと結ばれるとヘレンはよく呟いていたのだ。





 それはさておき、今までなぜ気付かなかったのだろうかとルイスは思わず頭を抱えた。

 サータスがわかって、ルイスがわからなかった理由。

 ルイスがヘレンと真逆の属性を持つため魔力の相性が実はわるかったから。

 こうして実際に触れようとすればその前に魔力は掻き消されていたし、まさかヘレンが魔力を使っていたとは考えた事がなかった。

 ヘレンが使える魔法はさほど多くない。

 彼女は特に攻撃系はてんでダメで主にステータスを下げる様なものしか使えない。

 強いて言うなれば、隠れたりその場をしのぐものばかり。


 そう考えれば最近どうがんばってもヘレンに会えなかったのにも何となく想像はつく。


 彼女はおそらく自分に姿隠しを使っていたのだろう。

 そして、ずっとサータスはそれをしっていた。


「サータスあとで絶対しばいてやる」

 頭のなかでにこやかに微笑むサータスに毒づき、ルイスは魔法玉に再び魔力を込めた。

ど、とうしよう

ルイスが変態になっていく気がしてる。

(;´д`)ピエン

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ