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買い物スタート

「うわー!ヘンちゃん見事にじみキノコ!」

 そう言ってサータスはヘレンの頭をポンポンしてくる。

「ちょっ!やめてください!と言うかどうしてサータス様がいらっしゃるんですか」


 約束の時間になりカトリシアとの約束の場所に行けばそこにはラフな普段着のサータスがいた。

 彼は元々綺麗な顔立ちであるため、すぐに気づき避けるように近くにあった銅像の影に隠れたのにサータスを前にしては意味はなかった。

 すぐに呆気なく見つかってしまい今に至る。


「だってさー、ヘンちゃんきっと姿隠しの魔法使うと思って。ソレだとカトリシアがヘンちゃんに気づけないでしょ?」

 にっこりと笑うとサータスはヘレンの手をとりオーイと声をあげて誰かに手を振った。

 見れば彼の視線の少し先、離れた所にキョロキョロと周りを探しているカトリシアの姿が見えた。

 カトリシアはサータスの声に気付くと嬉しそうにこちらにやってくる。


「えっ?!はっ!あの!」

 狼狽えて手を振りほどこうとするヘレンにサータスはダーメと指を絡めきつく手を結び直した。

 いわゆる恋人繋ぎだ。


「良いから良いから。あ、そうそうこの間渡しそびれてカトリシアに怒られちゃったからさ」

 はいどうぞと一枚の封筒を渡されヘレンは眉間に思わず皺を寄せてしまう。

「え?これは?」

「仮装舞踏会の招待状だよー。僕が企画したの」

 ニッコリと笑うサータスに更にどういう事か尋ねようとしたが、ソレはカトリシアの登場で遮られた。ついでに言うと恋人繋ぎも無事に解放された。

「ライラット様!ここにいらっしゃったのですね。すいません、サータス様からは姿隠しの事は聞いていたのですがいざ自分で探そうとするとその……」

(あぁ、見つけられなかったのね)

 やるじゃん私の魔法とヘレンは思わず自画自賛してしまう。


「さてと、これでとりあえず2人は合流出来たから僕はもういいね。ヘンちゃんの魔法は気付いてしまえば取りあえず今は効果ないし、カトリシアもいいよね?」

 ニッコリとサータスが言えばカトリシアも頷く。

「はい、ありがとうございます」


(え?ソレだけの為にいたの?いや、その前に私の魔法今はもう効果ないの!?カトリシアには効いてないの?)


 若干青ざめながらも、チラリとヘレンは2人を見る。それでも流石攻略対象、やはりヒロインのためならなんでも出来るのねとヘレンが2人を眺めながら思っていると、それに気づいたサータスが再びヘレンの頭をポンポンしてきた。


「僕は()()()()()興味ないよ。ただ、今すぐどうにかしつけ直さなきゃいけないもの(ペット)が居るからその()()()で来ただけ」

 ほら、僕優しいからとサータスはヘレンの耳元でささやく。


 驚いて咄嗟にサータスを見れば、その目は愉しそうに細められ更に少し弾んだこえで耳元で囁かれる。

「勿論いつでもヘンちゃんも僕のペットになって良いよ。躾てあげる」

「!?」

 驚いて目を見開いて居ればまたまたサータスはヘレンの頭をポンポンと満足げにしてくる。

「ま、そう言うことだから。はい、行ってらっしゃい」


 クルリとヘレンはサータスにカトリシアの方に向き直させられ、背中を押される。

「ほら、早くしないと良いの選べなくなるから」

「あ、はい!ありがとうございます。ではライラット様行きましょう!」

「えっ!あ、ちょっと!」

 サータスに背中を押され、駆け出すカトリシアに手首を掴んで引っ張られヘレンは動き出した。







(……で、結局何で私はここに居るのかしら?)

 カトリシアに連れられて(引っ張られて)来たのはいいが、一体自分は何をしているのだろうかと目の前のものをみてヘレンは上を向いた。


「んー。ライラット様はこれどう思いますか?」

 目の前の白鳥らしきキグルミがクルリと回る。

 キグルミとだけあってデカイ。と言うよりこの世界にもキグルミはあったのだなと現実逃避がてらに思わず感心までしてしまった。

「え、どうって……。白鳥……ですよね」

 どうかと聞かれても困る。白鳥の首辺りからポコンと顔だけ出ていて、その顔がとても可愛らしく穏やかそうな顔だと言うからまたなんとも言えない。

 正直に本音を漏らすとするなら似合わないの一言につきるだろう。どうして彼女はこれを選んだのか理解に苦しむ。

 そんなヘレンをよそに白鳥ヒロインはなぜか頬を赤らめモジモジしだす。


「そうです。白鳥って私凄く好きで。前にお兄様が見せてくださった本に白鳥についてかかれていて。それで、今回これにしようかとおもって」


 なおも頬を赤らめモジモジしているが、キグルミを着ている変な子がモジモジしているようにしか見えないのは失礼だろうかとヘレンは密かに汗を垂らす。


「あの、一応の確認ですが……今回ってこのサータス様の仮装舞踏会の事でよろしかったでしょうか」

 一応、一応確認しておこう。


 ヘレンがおもいきって招待状を見せつつ聞くと、白鳥は激しく頷く。

「そうです!そうなんです!」


(……ギャップが酷い)


 私の大好きだった恋パズに出てくるヒロインはこんな子だっただろうかとヘレンは思わず白目になってしまう。


 さすがにこんなキグルミでルイスの隣にヒロインが立つのはいかがなものだろうか。軽く想像してみて額に汗が流れ止まらない。

 いくら腹黒無難攻略キャラと言えど仮にも一国の王子。

 それに、ルイス自体は攻略キャラなだけあって顔立ちだって整っている。

 そんなルイスがにこやかな笑顔で白鳥のキグルミをエスコート。


 そんな王子と白鳥をみて回りはうっとりするのか。

「あの、そ、それも素敵かもしれないですが、こちらの方がより魅力的な白鳥に見えますよ?」

 キグルミヒロインに耐えきれずヘレンは近くにあった白いレースのフワリとした作りのドレスを手に取り進める。

「それに、こちらの方がきっと彼は好きですよ……」

(殿下の好みか……)

 本当はルイスの好みを知らない。5歳のあの時(婚約時)からよく考えたらルイスのエスコートというエスコートは殆どと言っていいほど受けてはいない。勿論贈り物も受け取ったりしてこなかった。

 いや、正しく言うなればヘレンが全て拒否してきたのだが。


 婚約破棄をかけての勝負は完膚なきにまで負け続けていたが、不思議なことにエスコートやパーティーの参加などにかけての勝負は大抵ルイスに勝てていた。その為殆んどパーティー自体をルイスとともには参加していないのだ。

(今更ながらだけどストーリーに直接関係ない事には運命の強制力は働かないのかもしれないわね)


 どうせ婚約破棄になるのだからとルイス自体にも極力興味を持たないようにしてきた。だから今更ルイスの好みなど聞かれても答えられるわけがない。


(まぁ、どのみち知ってても婚約破棄されるのだし)

 チラリとカトリシアを見れば真剣にヘレンが選んだドレスを見ている。

(どうして恋敵の私を誘うのかしら?やっぱり殿下の好みをしりたかったのかしら?)

 ――殿下の事なんて全然知らないのに。


「ライラット様」

 ヘレンがカトリシアを見ていると急にカトリシアがこちらを向いてくる。

「え?あ、はい」

「ライラット様はお兄様が好きなんですか?」

「え?はい??」

 唐突にきた変化球に狼狽えて間の抜けた返事を返すとカトリシアは悲しそうな顔を見せた。


「お兄様はライラット様のことばかり気にかけておられますし、ライラット様も殿下を避けてますし。ライラット様はやはりお兄様が……」


(はいいい?)

 アクシルがヘレンを気にかけているのは間違いなく、ヘレンがラスボス悪役令嬢道を突き進んでいるかどうかが気になるからだろう。ヘレンにしてみれば彼はカトリシアのハッピーエンド以外は絶対全く気にしていないだろうし、間違いなくヘレンには気にかけて欲しくない。

 それなのに、何を言っているのだろうかと思わず首をかしげてしまう。

「あの、いや……。カトリシア様?私別にアクシル様が好きなわけではないんですけ――」

「良いんです!隠さなくても私にはわかるんです。ただ、どうしてもライラット様に確認したくて……」


 発言を遮られ、瞳を潤ませ出すカトリシアにヘレンは思わず一歩引いてしまう。いったい何がわかるんだろうか?

 そんなヘレンにカトリシアは潤んだ瞳を携えて近づく。

「でもライラット様、殿下は殿下はどうなさるおつもりですか。婚約破棄されるわけでもなく、ただ避けるだけでお兄様に近付いて……お兄様を苦しめることだけはしないでください!」


(殿下はどうするって……、婚約破棄すらしないでって……)

 あなた(ヒロイン)がそれを言うのか?

 心にとげが生えてきた気がする。


「どうなさるって、失礼ですがお噂では貴女が殿下の次期婚約者に相応しい、お二人は仲睦まじいと聞き及んでおります。アクシル様どうのこうのの前に、貴女がどうなのですか?確かに殿下は避けてますけど、私はまだ殿下の婚約者なんですよ?避けてるのは貴方のせいだとはおもわないんですか?」

 カトリシアの発言に思わず耐えきれずヘレンはつい辛辣に言い返す。

 実際ヘレンがルイスを避けているのはヒロインが居るからだ。

 ヒロインのせいで婚約破棄を人前で晒されて、全てを奪われる運命になるから。それが怖くて避けていると言うのに。


「そんな、私は別に殿下と仲が言い訳じゃないんです!そんなのただの噂で、私は――」

「噂でも貴女が殿下に近付いているのは事実ですし、殿下もまんざらじゃないようで。そんな貴女に私がとやかく言われる筋合いはございません!」

 今度はヘレンがカトリシアの言葉を遮り言いきった。


 うつむくカトリシアにヘレンは呼吸をおき更に言葉を冷たくかける。

「殿下やアクシル様の事が言いたいだけのご用事のようですね。私はお二人については何ともおもっておりません。カトリシア様のお好きなようになされば言いとおもいます。けれど、私にはもう近付かないで頂きたいですわ」

(なにこの茶番劇。こんなことで私を悪役にさせないで……)


 それだけ言うとヘレンは足早にカトリシアを離れ、店を1人出た。

ここまでお読みくださりありがとうございます!


前のページ少し追加修正しましたので、もしでしたら前のページから読んで頂けると幸いです。


ブクマ、評価よろしくお願いします!

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