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走馬灯

(し、死ぬかと思った……)

 バクバクと脈打つ心臓を押さえヘレンは地面にかがみ込んだ。


「いやー!やっぱり5階から降りると流石に怖かったねヘンちゃん!」

 ニッコリと向けられた笑顔にヘレンは辟易とする。

(怖いどころじゃないわよ!走馬灯まで見ちゃったじゃない!)

 この10年間色々な事があったなあとヘレンは走馬灯の中身を思い出す。

 初めて自分の属性を知ったのをきっかけに前世を思い出し絶望した日。ルイスと婚約したくないとルイス本人に泣きつき頼み込んだのに「いやだ」の一言で婚約が結ばれた日。

 それからルイスと婚約破棄をかけて切磋琢磨した日。

 ルイスが校門でカトリシアとであってしまい絶望した日。

 グシャグシャに汚れながらもヘレンを看病してくれた日。


(あ、あの時私ルイス様にちゃんとお礼言ってない)

 色んなルイスとの思い出がヘレンの頭を駆け巡る。多分あれが走馬灯だったのだろう。



「おーい、ヘンちゃーん。ヘンちゃーん。戻っておいでー」

 気づけばサータスにヘレンは激しく体を上下に揺さぶられていた。


(ああ、そういやコイツにも会ったな)

 頭をガクガクさせながらヘレンの頭にはサータスと出会ってからが今度は駆け巡る。


 チュートリアルから5年後、ヘレンが一人で人気のない廊下の端に置いてあるベンチに座って、陰気臭い不人気なうちの1つ中庭を眺めている時に彼と出会ったのだ。

 最初に見たときは綺麗な顔で女の子だと思ってしまった。思わず見とれていたらこちらに向けて微笑みが返ってきたので思わず一瞬不覚にも胸が高鳴ってしまった。

 本当に一瞬だけれども。

 直ぐに彼がヘレンにしたことによりその気持ちは後悔へとかわり、果ては彼が攻略対象兼悪役だとおもいだし絶望に変わったのだ。


 そして彼がヘレンにしたことと言えば……


「隙あり!」


 唇に近い頬に暖かな刺激が与えられヘレンは瞳を大きく見開く。

 目の前にはサータスの顔。

(え?)

 驚きでヘレンが固まってると、しばらくしてサータスの顔がはなれる。

「ヘンちゃん、隙あり。これで2回目」

「!?」

「んー、ヘンちゃんの驚いた顔って本当に好きだなぁ。次は唇にしちゃおっかな」

 その顔はとても満足気で、ヘレンが見つめていると先程までふれあっていたであろう自身の唇を彼はペロリとなめた。

「!?」

 尚も驚いて固まるヘレンにサータスは目を細めた。

「うへへ。ヘンちゃんのその顔好きー。これってルイに言ったらどうなるのかなぁ?僕ルイの怒った顔も好きなんだよねって、ヘンちゃーん!!」


 サータスの読めない行動にヘレンは白目になっていた。





 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️



「もう!ヘンちゃんたらチューぐらいで大袈裟だなぁ」

 サータスは地面に四つん這いになり項垂れるヘレンをつつく。

 もうどのくらいこうしていただろうか。それほどヘレンにとってはショックだった。


(前世でも経験がなく、今世でもルイス様と言う腹黒無難王子(婚約者)がいてもしたことがないのに!)


「うーん、ヘンちゃんルイとまだチューもしてなかったの?」

「私は健全なの!」

 サータスの一声にヘレンはガバリと顔をあげる。

「えー?そうなの?健全ならチューしたくないの?」

「全部が全部あんたと同じ人じゃないの!この頭の中変態エロチックサイコパス!」

 うわぁぁんと泣きながら凄い勢いで走り去るヘレンをみてサータスは呆気にとられていた。







「あ、仮装舞踏会の招待状ヘンちゃんに渡すの忘れてた」

 ヘレンの姿が見えなくなってやっと本来の用事を思い出したサータスはポケットに納めた封筒を取り出し呟く。

「あーあ、せっかくカトリシアにお仕事もらったのになぁ」

 まぁいっかと呟き楽しそうに笑う彼を誰も知らなかった。

⭐️閑話休題:健全とは⭐️

「ねー、ルイー。ルイくーん。ルイー?」

(ああ、鬱陶しい)

なぜこんなに鬱陶しいヤツが次期宰相候補なのだろう。

(しかも、ヘレンに馴れ馴れしいし)

「ルイってばー!」

ルイスに無視され我慢できなくなったサータスはガバリとルイスに抱きつく。

「そうやって僕を無視するとヘンちゃんとイチャイチャしちゃうよー。僕ヘンちゃ」

「サータス、ヘレンに近づくなよ。絶対近づくなよ」

サータスの言葉を遮りルイスはサータスに掴みかかる。

「俺だって、俺だって、俺だって、ヘレンとピーでピーなピーピーピーピーピーしたいんだぁぁぁ!」

サータスに必死の形相で放送禁止用語を叫ぶルイスにサータスだけでなく、どこからともなく盛大なため息が聞こえる。

「……ルイ、色んな意味で君はヘンちゃんに近づかない方がいいよ」

「俺が近寄ってもヘレンが逃げる……ヘレンが、ヘレンが……」

ヘレンがといつまでも呟き黒い塊になっていく友人をみてサータスは再び頭を抱えた。

「デュランはよく耐えれるね」

小さく呟いたサータスに「修行だと思ってます」とどこからともなく小さな返事が返ってきた。




ここまでお読みくださりありがとうございます。

ルイスはひそかに一人称を変えてます。

僕→俺に。

理由はいつか本編で。

そしてルイスは思春期真っ只中。


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