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サイコパス

「あー!またヘンちゃんカビ臭い魔法つかってるー!」

 じみキノコー!

 ガバリと後ろから抱きつかれヘレンは思わず前へつんのめってしまう。

「へ、ヘンちゃんじゃありません!じみキノコとか言わない!」

(くっ、見つかった!)


 ヘレンは抱きついてきた人物を無理やり自分から剥がし、軽く睨んで諌める。

「だいたい、どうして貴方はいつもいつも私を見付けるのよ!」

 そっとしておいてよと、やっとはがした自分よりも背が高い見た目女の子なのにボイスがやたら男に向かって盛大にため息をはいた。

「えー。だって、ヘンちゃんの魔力の波長スッゴク僕と合うんだもん」

 ニッコリとあどけなく笑うその顔はまさに美少女だ。

 長い睫、クリクリとした灰色の瞳。

 深緑の艶々した髪。

 一見すると華奢なのに、抱きつかれると意外に男性らしい筋肉質な彼は間違いなく男だ。そして悔しいけれど確実にイケメンの分類だ。


「いや、合いません。合いたくないです。嫌です。無理です。却下、拒否、否定、ダメ」

 イケメンだろうがなんだろうが嫌だと、ブンブンと頭をふってヘレンは全力で拒否する。


「やだー、ヘンちゃんったら全力で拒否してさ。ヘンちゃんってほかの女の子と違うから面白いよね。僕、ヘンちゃんみたいな子がペットに欲しいな」

 そういってサータス・アドレインはニヤリと笑った。


 サータスの笑い顔にヘレンは背中にゾクリと悪寒が走る。


 サータス・アドレインは現宰相の息子で、アドレイン伯爵家の嫡男である。アクシルやヘレン達と同学年でヒロイン(カトリシア)が光属性を選んだ時の攻略対象の一人である。

 これでヘレンは光バージョンの攻略対象全員と遭遇したことになる。サータスと遭遇したときはヘレンはこれでもかと再び運命の強制力に絶望したのは記憶に新しい。


 ただし、彼は攻略担当でもあり何故か光バージョンの悪役でもあるのだ。

 彼はヒロインに選ばれなく、好感度がさほど上がらないときのみ悪役にもなる。

 仮に選ばれた場合も彼とのハッピーエンドは微妙だ。うららも気になって一度彼のルートをネットで調べたことがあるが、彼とのハッピーエンドはサイコパスエンドだとおもった覚えがある。


『君を困らせたコレを僕と飼い慣らしてみない?』

 そう言ってハッピーエンドで鎖を持っていたスチルを思い出しヘレンはブルリと体が震える。また、ノーマルエンドでも『僕、これからコレをちょっとしつけようと思ってさ』とイケメンスマイルと共に大きな麻袋が背景に写っていた。

 ネットでもコレについて色々な憶測は上がっていたが、多分コレが指すものは……。


(いや、考えるのはやめましょう。うん、怖いし)

 ヘレンは頭を振る。


「とにかく私は貴方のペットには絶対なりませんからね」

 引きつつもサータスを睨むのを辞めないヘレンにサータスはクスクスと笑う。

「そう?ヘンちゃんなら何時でも僕のペットにしてあげるのにって、あー。ヘンちゃんそう言えばもうすぐルイがこっちくるけど?」

 言うの忘れてたーとニッコリと笑うサータスにはもう敵意しか感じない。サータスはルイス殿下をルイとよぶ。

 彼の辞書には不敬もなにも載っていないのかもしれない。殿下を扱き下ろしたり、馴れ馴れしくしているのは普段からだ。


「っ!それならそうとなんで私を止めるのよ!しかも貴方のせいで魔法も解けちゃってるし!」

 慌ててまたポケットから魔法玉を取り出し意識を集中させようとするも気が競ってしまってどうにも上手くいかない。

「んー、困ったねぇヘンちゃん。それじゃあ魔法使えないよ。もう、仕方ないなぁヘンちゃんは」

 そう言ってヘレンから魔法玉を取るとサータスは相変わらずニコニコしながら魔法玉に魔力を注ぐ。


 魔法玉に注がれる淡く光る緑色。

「さてと、じゃあルイがくる前に行こうかヘンちゃん」

 そう言うとサータスは魔法を繰り出す。サータスの持つ魔法玉から柔らかな風がふきだし、ヘレンを包み込むと廊下の窓を開け飛び降りた。

「あ、ヘンちゃん。叫ぶと舌かんじゃうからねー」


 飛び降りるときに言ったサータスの言葉はヘレンには残念ながら届かなかったのは言うまでもない。

⭐️閑話休題:誤解と五階⭐️

「………」

「殿下?」

突然立ち止まったルイスを不思議に思い、彼の目線の先を見れば窓が開いていた。

(ああ窓が開いていますね)

ここは五階だから誰か鍵をきちんと閉めずに風で開いてしまったのかもしれない。そうおもい窓を閉めようとすれば面白くなさそうな顔をした彼がそれを止める。

「……ヘレンの可憐な匂いとそれにまとわりつく異臭がする」

ポツリと呟く彼の言葉を聞き、周りの匂いに気を配るがサッパリわからない。と言うか、匂いとか言ってる時点で少し彼の精神状態を疑ってしまうのは不敬だろうか。

そんなとき、すれ違った2人の女子生徒がヒソヒソとキャーキャー呟く声が聞こえる。

チラリと2人を見れば、2人もこちらをチラチラ見ていた。多分誤解しているのだろう。

「……殿下、早めにその拗らせ何とかしてくださいね。こちらも頑張りますから」

ため息をつきつつも呟けば、拗らせてないと言いつつも彼もチラリと先ほどの2人を見てため息を吐いていた。

「5階なだけに誤解が生じたな」

ポツリと彼は呟く。ああ、寒い。

今日はこんなに暖かい日なのに。

「……お戯れを言ってないで、はやく何とかしてください」

全く、先が思いやられるわと開いた窓を閉めつつ盛大にため息を吐き出した。







ここまでお読みくださりありがとうございます!

ブクマ、評価お願いします!


閑話休題ですが1、寒いジョークをルイスに言わせたかった。2、ルイスは只今ヘレン欠乏症って感じで書きたかっただけって言う。

閑話休題は箸休め的な感じで、読んでも読まなくても大丈夫仕様になってます。

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