2:目覚め
狭く薄暗い部屋で目が覚めた
いや、部屋というのが正しい表現かはわからない
天井がドーム型にガラス張りされていて、見事な満月からの光で夜にしては明るく白い床はその光を反射して綺麗に光っていた
「おお!聖女さまが目を覚まされた」
床は固く冷たい
こんなところに寝かされっぱなしだったと考えると少々不快に感じる
上半身を起こして周りを見るとコスプレのような格好をした人々がこちらを眺めていた
(ここどこ?っていうか聖女って?)
私がどうしてここにいるのか、ここはどこなのか
疑問は次々と出てくるが自分がここにいるのが当然のことのようにも感じる
自分がここにくることをわかっていたような感じ
それでも、コスプレのような馴染みが全くない格好や見たこともない場所に何にも感じないわけではない
もちろん心細さそしてこれからどうなるのかという恐怖は警戒という形で顔に現れているだろう
1番近くにはマントを身につけたいかにも王のような人、美しい金の髪は頭につけている豪華な王冠にも負けていない輝きで瞳は深い緑である
そして、その後ろに付き従うようにして3人の人物がいた
「どうやら成功したようだな、よく来たな聖女よ。」
王様が言う
いや来たって言うより、連れて来られたって言った方があってると思うけど
なんていうかこういう、所謂召喚の儀式的なものをするときはもっと広い部屋で大々的にするものだと思っていたけどずいぶん少人数でするのね
それよりも
[ここは]
どこかと尋ねようとして声が出ないことに気づく
首をかしげると
「どうやら言葉がわからないようですな」
3人のうちのヒゲがきれいに整えられた小綺麗なおじさんが言う
結構な年に見えるがそのきれいな青みがかった黒の髪には白髪は一本も見当たらない。
違うと首を振ろうとして少し考える
言葉がわからないって思わせておいてもいいんじゃないか
そうすれば小難しい会話はしなくて良さそうだし
私に聞かれてないとたかをくくって口が軽くなるかもしれないし
なによりなんとなくかっこいいじゃない?
てことで、首を傾げたまま少し困ったような表情を作った
「うむ、どうやらそのようだな」
王様が答える
「しかし困りましたな、言葉が話せないとなると」
「ええ、何かと不便ですし、あちら側がこちらを批判する口実にもなり得ます」
もう一人が会話に入る、多分王様の息子だ
なんとなく面影があるし、何より見事な髪色が同じだ
王子様がかっこいいのはどこでもおんなじなのね
あちら側?
詳しくはわからないがおそらくなんらかの形で敵対している勢力のことだろう
「もしかすると、聖ノラン語なら通じるかもしれません」
「そうだな、しかし聖ノラン語を扱えるものは少ないが連れて来られるか?」
「ええ、少々時間はかかるかもしれませんが」
「ああ、連れて来られるだけでも上出来だ。くれぐれも彼方側には悟られないようにな」
「はい」
「ではとりあえず暫くは用意しておいた部屋で過ごしていただくようにしよう。すぐに部屋にお連れしろ。それから侍女たちにくれぐれも粗相のないように釘を刺しておけ。」
「御意」
どうやら私の処遇が決まったようだ
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