ディストラプタの怪人 〜崩壊させる者〜
ユオズネグにディストラプタ(崩壊させる者)が現れたことで、世界の様々な概念が崩壊してしまった。消去を司るデリータの消去レーザーも崩壊させられたことで、ディストラプタを止めることができなくなってしまった。
ミッシングフィールド、それはユオズネグのバグであり、直ちに修正されなければならない危険な存在である。ディストラプタによってミッシングフィールドの出現が頻発し、ユオズネグの住人は恐怖に怯えていた。
デリータの独裁を邪魔したのは、これまた奇妙な存在であった。彼の名はディストラプター崩壊させる者ー。
デリータの消去レーザーを崩壊させ、辺りに花を咲かせたり、綺麗な音楽を奏でさせたりする。その異常な行動はデリータも困惑してしまう程である。
ユオズネグの住人にとっては味方であるように見えるが、実はそうではない。ディストラプタは様々な崩壊をもたらす存在であり、住人達が恐れるミッシングフィールドを多数出現させたり、彼らの慣習や世界の理を異様なものに変えたりする。
デリータはディストラプタを消去しようにもできない状態になってしまった。また、住人達の生活もすっかり狂い果て、正気を保つことが困難な有様であった。
各世界の悪者達は皆善人風になり、町は花の香りと素敵な音楽で満たされている。道には馬をひく車が通り、煙突が雑多な鳥を吸い込んでは真っ白なハトに変えている。鏡はブラックホールと化し、いつでも空っぽである。フクロウがニワトリと共にまだ明るい夜を告げる。
ミッシングフィールドの田んぼが広がる風景を皆で眺める。そこに映像を投影して、煌びやかな音楽と合わせる楽しみ。朝露が乾く間もない程の刹那を生きる羽虫達。どれもこれも宝石箱のように見えてくる。そして次の瞬間には妄言を垂れ流す工場長の口に変貌する。
ディストラプタは誰にも理解されることのない思想の下に崩壊を司る。
デリータ「キサマの目的は何だディストラプタ。」
DRP「私の目的を崩壊させることでしょう。」
デリータ「では、その"私の目的"とは何だ。」
DRP「もちろん、私の目的を崩壊させることでしょう。」
デリータ「...聞いたボクが馬鹿だったのかな。」
DRP「内なる私は崩壊しきっています。しかし、それは数多く存在する内なる私の中の一人にすぎないのであって、問題ではありません。」
デリータ「崩壊していない部分はあるのか。」
DRP「あります。それは私全体が崩壊している、という事実です。」
デリータ「...ボクの消去レーザーを元に戻すには、どうする?」
DRP「さらに崩壊させる必要があると見ています。」
デリータ「崩壊が起こる前の状態には戻らないのか?」
DRP「崩壊したものがそれそのものです。過去でしかありません。過去は変えられません。しかし、その理も崩壊の対象ですから、いずれは戻せるのでしょう。」
デリータ「成る程、過去が変えられるようになれば戻せるかもしれない、ということか。」
デリータ「......久しぶりにストレスというものを感じたぞ。」
<デリータとプロテクタとディストラプタ>
プロテクタ「消去を司る存在が、どうして消去機能を失くしてしまったのだろう...」
ディストラプタ「私が崩壊させたからです。」
プロテクタ「崩壊?機能を崩壊させたというのか?」
ディストラプタ「そうです。それに、あなたの防衛機能も崩壊の対象になっています。」
プロテクタ「なんと...!それではどうやって住人達を守ることが出来るというのだ!」
デリータ「彼らには自衛してもらわないといけないね。ボクの親兵達はどうなの?」
ディストラプタ「崩壊は免れません。」
プロテクタ「何もかもが崩壊しているのか...」
ディストラプタ「やがて崩壊は止まりますよ。私が崩壊して、崩壊の概念まで崩壊したならばの話ですが。」
プロテクタ「概念の崩壊まで起こりうるとは...」
デリータ「ボクの消去レーザーよりも危険な代物だな。」
ディストラプタ「崩壊は何に対しても起こり得ます。これは避けられることでしょうが、ユオズネグの世界が全く原型を失ってしまうことも考えられます。」
プロテクタ「避けられる、とはどういうことだ?」
ディストラプタ「このユオズネグの世界をこのように留めているのは、私達ではありません。さらに上の存在がそうさせているのですよ。その存在なくしては、この世界の崩壊など、あり得ないことです。」
デリータ「さらに上の存在か。ボク達の行動にも影響を与えることが出来る存在なのだろう。」
プロテクタ「ユオズネグの世界が崩壊しているのも、上の存在が望んだから...?しかし...」
デリータ「ディストラプタが"避けられる"と発言したことから、恐らくそこまで徹底して崩壊はしないのかもしれない。」
ミカエル「あの、皆さん。一つ話がある。」
プロテクタ「ミカエルさん!一体何でしょう?」
ミカエル「私は"自由"をこの世界にもたらした。そして、その"自由"は未だに崩壊していない。今から私は"自由"を使って崩壊を無かったことにしようと思う。それで良いだろうか?」
ディストラプタ「はい、是非ともそうして下さい。そうでないと、"自由"すら崩壊してしまいますから。」
ミカエル「よし。では、空中渦潮を設置して崩壊概念を吸い込んでもらう。これで綺麗さっぱり、崩壊部分が消えるはずだ。」
ディストラプタ「分かります。崩壊の手応えが消えていくのを...私の存在が薄れていくのを...!」
プロテクタ「"自由"が崩壊を優越した...?」
ディストラプタ「上の存在が"自由"を選んだのですね。」
スマホのデータが消えたらこのメモ書きも消える。それではまずいのでここに移転する。ユオズネグを知っており、力を行使できる「上の存在」というのは私ではないし、私にもまだ分からない。今回は、「上の存在」が崩壊を望まなかったことでユオズネグの存続が許された。しかし、ディストラプタは依然としてこの世界に存在している。彼の有効活用は可能だろうか?私はそうは思わない。