五つの赤い月が昇る荒野にて
ぱぁん。
乾いた爆発音。勢い良く飛び出し、その急な加速に体が悲鳴を上げる。
そして耳を劈く轟音が辺りに木霊した。乗っていた機体が墜落したのだろう。
手足を伸ばし、なんとか回転を止めて。
下と思われる黒い奈落の底のような暗い大地へと視線を向け、訓練通りに紐を引く。
一瞬強く上へと引っ張られた。
だが頬を撫でる風が未だに落下していると教える。
漸く一息吐き、視線を上げる。
なんとか星が見えた。
夜。暗闇の中でのパラシュート降下。危険極まりない。
俯いて下に見える大地を探す。
離れたところに炎が煙を立ち昇らせて一部の星を隠している。
それ以外、地面までの距離が分かる手掛かりがない。
着地のタイミングが分からなければ、下手すれば骨折もあり得る。
それでも何とか目を凝らす。
しばらくすると、ぼんやりと見えてきた。
徐々に近づく着地の瞬間。
まだあると思っていた階段のように、踏んだと思ったらまだ遠く躓きかけた。たたらを踏む。
しかし転倒せずに数歩進んで勢いを打ち消していく。
駆けるように。
パラシュートが落ちて、ブレーキを掛けてくる。
転ばないように注意しながら速度を落とす。
立ち止まるとパラシュートが沈むように影へと消える。
ベルトを外し、この後を思う。
救助を待つしかないが、いつ来るだろうか。
地面に座り込むとしばらくして月が昇ってきた。
赤い、赤い月。真っ赤な、最初なんだか不可解な物と警戒したぐらいだ。
先ほど通信から聞いた噴火の影響だろう。
大気中に火山灰による粉塵が舞い、散乱されて赤い光だけが残ったのだろう。
眺めていたら赤い光が伸びていく。
赤い塔のように。
多量の火山灰が凝結核となって六角柱の氷が作られたのか。
太陽なら太陽柱、月なら名称はなんだろう? 月光柱とかか。
珍しいものが見えた。
そう思ったのもつかの間、もっと珍しい幻月が左右に現れた。
当然それらも赤い。
しかも左右に二つづつ。
星空の下、五つの赤い月が幻想的な風景を作っている。
これが火山灰の影響なら当然飛行機のエンジンにも影響したと推測される。
エンジンの熱で火山灰が融解し、吸気口を塞ぐ、などしたのだろう。
恐らくこれが墜落の原因だ。
そして救助もしばらくは来ないということ。この状況じゃあ、二次災害が待っている。
落ち着くまでは空からの救助は期待できない。
徒歩で近くの人が住む村までどのくらい時間がかかるだろうか。
俺は荒野で一人佇み、途方に暮れたのだ。
月は気分的に十六夜のイメージ。
角度がちょっと悪い。大三角とかもう少し傾けたかった。
とある企画に参加しようと思いましたが、オチがないために止めました。
転移ものにしようと思いましたがギミックが悪くて冒頭だけに調整。そしてオチなしに。
下のはイメージ。