第三話「新宿はダンジョン」
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よろしくお願いします。
あり得ないことが起こった。
俺が驚いていると、目の前にいた少女が突然駆け出した。
「ちょっ・・・ちょっと!」
俺が止めるように言っても呼びかけには応じない。
今の状況が整理できない。
何なんだよこれ!
動揺のあまり俺は声を出してしまったが、そもそも関係ないじゃないか。
関係ない・・・俺には・・・。
「くそっ!」
そんな事を思いながらも、俺は少女が駆けだしていった方に向かって走った。
なんだかわからないが、放っておくことができなかった。
俺がよく知るこの新宿という街は他の地方から来た人にとってはダンジョンのようだと言われてる。
実際、新宿に住んでいる俺でさえ高層ビル群に囲まれたここで迷ったことが何度もある。
「どこに行ったんだ・・・!?」
大通りまで来た。
人通りも多く、ここで人捜しをするなんて困難なことだ。
だが、あの少女は明らかにこの都会、いやこの時代に似つかわしくない格好をしていた。
そんなに難しいことでもないかと思ったが・・・。
(全然見つからないじゃないか!)
思ったよりもその少女の足が速かった。
そもそも大通りまで来たところで少女の姿は全く見えなくなっていた。
それなのに探すなんて。
「まったく・・・!」
俺は駅の方に走っていった。
駅の近くには、さらに高いビルが建っている。
その代わりさっきよりも視界が開けている。
幸い、ここは夜になれば人も少なくなる。
人捜しはしやすいと思うが・・・。
「いた!」
やっと見つけた。だが少女が立っている場所は横断歩道の真ん中だ。
信号が赤になった。
危ない。
「おい! そこから早く離れろ!」
「えっ?」
俺の歩道からの声に驚いてこっちを見た。
「っ!トラックが!」
少女の前にトラックが迫ってきている。
運転手が急ブレーキをかけたようだが間に合わない。
だめか・・・!?
「っ!」
だが、その少女はぶつかるすんでのところでトラックに気づいて歩道側に素早く避けた。
すごい身のこなしだ。とても常人にできるものではない。
「大丈夫か!?」
トラックの運転手が運転席から心配して声をかけてくれた。
「大丈夫です!」
(軽い交通事故だな・・・これ・・・・)
「ありがとう、教えてくれて」
少女が俺に礼を言った。
「いや、何事もなくて良かった。」
「そういえばさっきの・・・?」
「ああ、あなたを追ってここまで来ました」
つい丁寧語になってしまった。
「それはごめんなさい 混乱してしまって」
そりゃあ混乱もするよな。あんなことがあったら。
「ここがどこかわかる?」
「ここは新宿ですけど」
「シン・・・ジュク? ダンジョンかなにか?」
ダンジョン? 確かに地下道は入り組んでるけど。
顔を見たところ日本人ってわけじゃなさそうだけど、かといって他のアジアの国やアメリカ、ヨーロッパの
人って感じもしない。
言葉も通じてるし。
「そうだ、あなたはどこから来たんですか?」
あの不気味な円環から突然投げ出されたのを見て“どこから”なんて聞くのも不思議なものだけども・・・。
「私はジーラスの町から」
ジーラス? 聞いたこともないところだな。
「しまった、最初の質問に答えていませんでしたね」
俺は最初に会った時に言われたことを思い出した。
「最初の質問・・・?」
「俺が誰かっていう・・・」
「ああ、それね! あの時は突然目の前に君がいて驚いたから ごめん、私も名乗ってなかった」
「俺の名前は上田俊之」
「私はエリン、よろしくね!」