第二話「出会い side異世界」
【エリン】
私がいるこの世界には人がいて、魔術もあって、そして魔物もいる
それは当然のことだ。
「でも、もしもここ以外に別の世界があったら、そこはどんなところなのかな・・・?」
「おーい! エリン!」
少し散歩をしたくて町から離れたところにある草原に立ってどこまでも広がる青い空を見上げてそんなことを呟いていたら、遠くから誰かに名前を呼ばれた。
サラだ。
「どうしたのサラ?」
「いや、エリンが珍しく考えごとをしてるようだったから」
「『珍しく』は余計だよ。」
サラは私の幼馴染でいつもこんな会話をしている。
「でも、ほんとにどうしたの? 何か悩みでも・・・」
「そういうんじゃなくて、ただ・・・」
「ただ・・・?」
「・・・ううん、やっぱりなんでもない」
「そっか。」
なんだかんだで心配してくれる、優しい少女だ。
(別の世界があるなんて、考えすぎだよね)
「そうだ、ここら辺は魔物がよく出るって噂だから気をつけたほうがいいよ」
サラが思い出したように私に警告した。
「大丈夫だって。 戦闘用と回復用の魔術だってちゃんと習得したし、それに短剣も持ってる」
「町でも何ヶ月か前に行方不明になった人がいるって・・・」
そういえば、そういう事があったって騒ぎになってたな
「心配し過ぎだよ。 それにその事件は魔物のせいじゃなくて何かの魔術が原因だって聞いたけど」
「そうだったっけ?」
知らなかったのか・・・。
でも確かに魔術のせいだったていう確実な証拠は無いし、サラの言う通り気をつけたほうがいいかもしれない。
「じゃあ、そろそろ町に帰ろうかな」
その時だった・・・。
私たちが立っている位置から少し離れたところに黒い円環が突然現れた。
私たちは魔物こそ見たことあるものの、こんな不気味な物は存在すら知らない。
「えっ・・・何これ?」
サラが不思議そうに円環に近づく。
「サラ! そんなに近づいたら危ないって!」
私は動揺しながらもサラを止めようとした。
だがその拍子に足元の石ころにつまずいた。
「あっ!」
私はその勢いで円環の中に突っ込んでいった。
「エリン!」
遠くでサラの声が聞こえる・・・。
「わっ!」
その直後、私は見たこともないような場所に投げ出された。
高くそびえ立ち、光を放つ建物らしきものがある。
私は驚きと地面に叩きつけられたことで少しよろめきながらも二本の足でしっかりと地を踏んでその場に立つ。
そして目の前に見知らぬ人が立っていることに気づいた。
「あなたは・・・誰・・・?」
私は思わずその人に尋ねた。