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58 雑談 / 夕食会(男性陣編)


 秋斗達が楽しく談笑していると、新たな客が部屋へと現れる。


「イザーク殿下。こちらも終わりました」


「オルソン公爵。ありがとうございます」


 魔獣とは戦わなかった分、戦闘後の処理でブノワ伯爵を補佐するべく忙しく動いていたカールも1段落したので戻って来たようだ。


「秋斗様~! 戻りました!」


 エルフニアの王女であるソフィアもブノワ伯爵と共に遺族へ挨拶を行ったりしていたが、全て終わらせて秋斗のもとへと戻ってきた。

 戻ってくると、秋斗の隣にピタリと寄り添って仕事の疲れを癒すように、秋斗の腕へグリグリと頭を擦り付けていた。


「本当に2人は賢者様の婚約者となったのだな」


 秋斗に寄り添うリリとソフィアの姿を見て呟くのはオリビア。

 

「ん。秋斗の嫁になった」


「もちろんです。私も嫁です」


 秋斗の腕を抱きながら、むふんとドヤ顔するリリとソフィア。


「まぁ、確かにルクスからの書状で知った時は意外であったな。特にリリ嬢だが」


 ヨーゼフも髭を撫でながら頷く。


「私はソフィーと同じように昔から秋斗に憧れていたし、エルフ狩りに遭った時に助けてもらった。秋斗はチョーかっこよくて優しくて、一緒にいると楽しい。絶対離れない。好き。愛してる」


 リリは発した言葉を証明するように、ぎゅぅぅっと秋斗の腕を抱きしめる。

 ソフィアも「私もです!」と言いながら秋斗の腕を抱きしめ、2人の柔らかい感触にデレッとなった秋斗だが、話を聞いていた他の者達はそれどころじゃない。


「ち、ちょっと待って。今、エルフ狩りに遭ったとか言った?」


 エリオットが皆を代表してリリに問うと、リリからは「うん」と返される。

 そして、室内には「嘘でしょォォォォッ!?」と皆の叫び声が響き渡った。

 

 秋斗とソフィア、当事者のリリが皆のリアクションに首を傾げていると


「書状には婚約したとしか書かれていなかったので……」


 と、イザークが溜息を零しながら教えてくれた。

 その後、皆を落ち着かせてからエルフ狩りの詳細と秋斗との出会いを伝える。


「なるほど。そういう経緯だったのですか」


 ケビンとの出会いから始まり、その後のリリとの出会いを経てソフィアとの婚約までを話すと皆は「そうだったんだ」と冷や汗をかきながら頷いていた。

 リリが秋斗に救出されなければ、今頃は西側と大戦争状態だっただろう。本当に良かった、と胸を撫で下ろす。


 その話の流れで、イザークやエリオット達がリリとソフィアの両名と小さい頃からお互いの事を知っていると教えてもらう。


 長寿種であるエルフ、ダークエルフの2人は200年も生きているので、当然彼らよりも年上であり、この中では一番の年長者。

 人族であるカールは見た目通り45歳、ヨーゼフは長い髭がある通り、100を超えているがドワーフも人族よりは長生きなので中年といったところ。

 エリオットは魔人族なので100以上生きるがまだ25歳。イザークとオリビアは20歳。こちらも年齢通りの見た目をしている若者。

 この場にはいないが、イザークの妹であるエルザは18歳。一番年齢が下なのは13歳のダリオ。

 カーラは年齢不詳(教えてくれなかった) クラリッサは1歳半。

 

 というワケで、リリとソフィアはこの中にいる全員を小さい頃から知っており、全員のお姉さん的存在だった。

 彼らの父や母が小さい頃も知っているのだが、決してお婆ちゃんではない、と入念に説明された。


 ただ、リリとソフィアのような長寿種は成長が緩やかなので年齢 = 精神年齢も高いというわけではない。

 200歳で人族に換算すれば20歳程度の肉体年齢と精神年齢だし、エルフは見た目の成長も遅いので100を超えるまで幼さが抜けないうえに成人として扱われないのであまり国外へは出ない。

 異種族溢れる現代で年齢というモノはあまりアテにならないものだ、と秋斗は改めて感じていた。


「ところで、エルザって子は?」


 秋斗は話が一区切りついたところで、この場にいない1名の件を問いかけた。


「エルザは魔法の撃ちすぎでフラフラしていたので、客室で休ませているんですよ」


 イザークが少し心配そうな表情を浮かべながら答える。


「あぁ、エルザの事を話しておいた方がいいでしょうか?」


 と、ソフィアがイザークに問いかける。


「そうですね。僕が話します」


 ゴホン、と1つ咳払いをした後にイザークは自身の妹の事を秋斗へ伝える。

 昔、ヴェルダの使者によって男性が苦手になってしまった事。

 本人は克服したいと願っているが心が考えについていかない事。

 初対面である秋斗に対して、不快な態度を取ってしまうかもしれないと本人が心配している事など、秋斗はエルザに関することを包み隠さず教えてもらった。

 

 話しを聞き終えて、まず秋斗が感じたのは怒りだろう。

 東側の住人を奴隷にしたり、国のお姫様にトラウマを植えつけたりと東側全体を馬鹿にしているのは理解できた。

 リリを攫おうとしていた奴等は処理したが、やはりいつかはヴェルダという国に対して痛い目を見せないとダメかもしれないと心に決める。

 

「そっか。理由も聞けたし、俺は気にしないからさ。力になれる事があるなら言ってくれ。その子にも気楽に接してくれ、と伝えてほしい」


 理由が理由なだけに、秋斗的には何があっても受け止められる。不敬やら不愉快などという気持ちになるわけがない。


「俺は挨拶は控えた方が良いだろうか? 刺激するのもよくないだろ?」


「私とリリでフォローはしますから、大丈夫ですよ」


「ん。エルザは妹みたいなもの。任せて」


「エルザの為に、ありがとうございます」


 イザークは少しばかり目尻に涙を浮かべて頭を下げた。



-----



 秋斗がいた客室で寛いでいると、ブノワ伯爵に夕食会のお誘いを受けた。

 一行はパーティールームで並べられた食事と飲み物を立食形式で楽しみながら和やかに談笑していた。

 

 リリとソフィアは何やら女性陣で固まって話をしている様子。

 秋斗は男性陣に囲まれながら、食事と飲み物を堪能しつつ街の様子をブノワ伯爵達から聞いていた。


「いやはや、秋斗様の救援で街は無傷。住民達も喜んでおります」


 魔獣と戦っていた者達の奮闘もあり、街の中に魔獣が入り込む事は無かった。

 しかし、街の被害は無いが人的被害は多く死亡した者も多い。

 今回倒された魔獣の素材は換金され、生き残った3ヶ国の王家と騎士団は報奨金を受け取るのを拒否しているので、戦って生き残った傭兵達への報酬支払いと亡くなった騎士や傭兵達の遺族へ支払われる事となった。


 それを聞いて、小型ミサイルで全てを吹き飛ばしたのは失敗だったか、と秋斗は後悔しながら肩を落とす。


「いえ、仕方ないですよ。素材目当てで倒していたら、街に被害が出ていましたから。アキトが気に病む事ではありませんよ」


 イザークが後悔する秋斗の背中に手を当て、慰めるように告げる。


「そうよン。私なんてアキトが来なければ死んでたわよン」


「全くだな。ワシやオリビアも限界だった」


 イザークの言葉にエリザベスとヨーゼフも頷く。


「でもなぁ。もうちょいやりようあったよな……」


「うーん。なら、遺族達にアキトさん自らが何か渡したらどうですか? ほら、クラリッサにあげた髪飾りみたいに」


 と、エリオットも気が晴れない秋斗をフォロー。


「何か勲章みたいな物とか?」


「そうですね。それが良いかと思います」


「じゃあ、今夜中に作っておくよ」


 遺族へ渡す物が決定すると、ブノワ伯爵からも「皆も喜びます!」とお墨付きを貰えた。

 

「秋斗、少し良い?」


 彼らと勲章の件で話し合っているとリリから声を掛けられる。

 そして、リリとソフィアの間に立っている1人の茶髪の女性。

 

「この子がエルザ」


「は、初めまして賢者様。エルザ・レオンガルドと、も、申します」


 イザークがイケメンであるように、彼女もまた美少女と呼ぶに相応しい顔立ち。

 キリッと少し釣りあがった目は、秋斗の学生時代にいた真面目で勉強が得意だったクラス委員長を思い出す。

 思い出の中の彼女のように赤い縁のメガネが似合いそうだ、と秋斗は心の中で感想を抱いていた。

 

 かなり緊張しながらカーテシーで挨拶をするエルザに対して、エルザ以外の者達と事前に決めていたやり方で秋斗も挨拶を行う。

 まず、握手をしない。穏やかな空気で。笑顔を絶やさず。


「初めまして。御影 秋斗です。気軽に接してくれると嬉しい」


 ニコリと笑みを浮かべて挨拶。

 秋斗とエルザとの距離は、5m以上離れているが気にしてはいけない。

 安心させるように微笑みかけて無害であると全力アピールする事、と婚約者2人から言われているのだ。


「は、はい。この度は助けて頂き、あ、ありがとうございました」


「うん。何かあれば力になるから。気軽にね」


「は、はい。ありがとうございます」


 エルザはペコリとお辞儀した後、ソフィアに連れられて女性陣の中へ戻って行った。

 遅れてリリが戻ろうとしている際に、リリへ視線を送ればグッジョブと親指を立ててから戻って行った。


「アキト。ありがとうございます」


 エルザとのやり取りを見ていたイザークが秋斗に対して礼を述べる。


「大丈夫だったかな?」


「ええ。緊張はしていましたが、姉上達が上手くフォローしてくれたみたいですしね」


 こうして、秋斗はエルザとの挨拶は無事に終わった。 

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