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31 歴史の語り手

 住民へのお披露目も終わり、城へ戻って来た秋斗達。

 昼食を食べた後、秋斗の部屋で婚約者2人と共に食後のコーヒーを飲みながら午後の予定を立てていた。


「午後からどうしますか? 街は大騒ぎらしいので……城内で出来る事の方がいいですよ」


 3人でマッタリとソファーでくつろぎながら、秋斗の隣に座るソフィアが街を巡回してきた騎士から得た情報を伝える。


「うーん。じゃあアランさんの所かね? 魔道具も見たいし」


「わかりました。アレクサ、じいへ連絡しておいてくれる? 1時間後に向かいます」


「承知しました」


 ソフィアの指示を受け、アレクサは部屋の外にいる者へ何やら伝えると所定の位置へ戻って来た。


「なんで1時間後?」


 秋斗がソフィアに問うと、ソフィアはソファーから立ち上がり、秋斗を挟んで反対側でぐでーっとソファーへ体を預けているリリを起こす。


「あちらも準備があるでしょうから。それと、私達は着替えてきます。ドレスを着たままなのも窮屈ですから。リリ、行きましょう」


「うん」


 2人はそう言うと、部屋を出て行った。

 秋斗は2人が戻るまでコーヒーを楽しみつつ、自分もトイレなどを済ませていつでも出れる準備をしておくことにした。

 30分程度すると部屋のドアがノックされ、2人が戻ってくる。


「お待たせ」


「お待たせしました」


 着替え終わった彼女達の格好に視線を向ける。初めて見る2人の私服は秋斗にとって新鮮に写った。

 

 リリは黒いチューブトップブラで胸を覆い、その上から白いジャケットを羽織っている。下は黒いショートパンツを履いていた。

 クールだが大胆な彼女らしく、動きやすい格好を選んだのだろう。

 ヘソ出しで、キュッとしたクビレ。さらにはショートパンツから露出するふともも。

 彼女の褐色の肌も相まって、とてもセクシーである。


 一方、ソフィアは清純と表現するのが似合うであろう白いワンピースのみというシンプルな服装。

 首から王家の紋章が入った翡翠色の宝石が付けられたペンダントを掛けている。

 リリのように肌の露出は少ないが、服の下からでもわかる彼女の大きな胸が存在感を主張する。

 サラサラと流れる金髪に白いワンピース。隠し切れない色気。佇む彼女は、穢れない女神のように思えるほど美しい。


「どう?」


「変じゃないですか?」


 リリは大胆に、ソフィアはもじもじとしながら私服の感想を秋斗に求めた。


「2人とも似合っているよ」


 秋斗がそう言うと、2人は笑みを浮かべて秋斗の両隣へ移動する。


「秋斗、ふともも好きでしょ。あとおなか。触り放題」


 リリは秋斗の手を取って、自身のふとともに手を誘導する。


「あ、秋斗様! 私も触り放題ですから!」


 ソフィアも負けじと秋斗の腕を取って、最大の武器である胸に挟み込む。


「天国かよ」


 秋斗は2人の婚約者による攻撃にデレデレになり、2人の婚約者は秋斗に密着しっぱなし。

 リリはいつものように秋斗の匂いを堪能し、ソフィアは秋斗の腕にスリスリと頬を擦り付ける。

 

「これならお世継ぎもすぐでしょう……。陛下にも伝えなければ」


 ボソリと呟かれたアレクサの言葉は、3人の耳には届かない。



-----



 この国の宮廷魔法使いの数は、騎士団よりも遥かに少ない。全員で10名所属し、内6名は魔道具研究者なので戦闘には参加しない非戦闘員扱いだ。

 他4名は筆頭のアランと部下のケビンを含む3人だが、アランとケビン以外は西側との国境にある砦に出向しているので不在。


 騎士団は城の敷地内に専用の兵舎が設置されているが、宮廷魔法使いの施設は城の1階にある一角に小規模なものが用意されている。

 宮廷魔法使いが使う施設の内訳は研究室のような魔道具を開発する専用部屋。そして、城に住み込む者に与えられた私室と筆頭であるアランの執務室。あとは小さな会議室のみ。

 魔法の訓練は騎士団の訓練場で騎士達と共に訓練するので宮廷魔法使い専用の訓練場は存在しない。

 これには宮廷魔法使いの待遇が悪い訳ではなく、人員採用への要求内容が高く募集しても中々集まらないというのが現状だった。



「こちらになります」


 約束の時間である1時間後、アレクサを先頭にアランのもとへ向かった。

 

「秋斗様。お待ちしておりました。こんなにも早く訪れて頂けて嬉しく思います」


 アランは秋斗にこの時代の技術を見て欲しいと王であるルクスにお願いしていた。自分の予想よりも早く秋斗が訪れてくれた事に笑みを浮かべて賢者の訪問を歓迎する。

 挨拶もそこそこに、3人を執務室に設置されたソファーへと促した。


「お邪魔するよ」


 秋斗も笑顔を浮かべて応え、ソファーへ腰を降ろす。


「さて、さっそくですがご用件をお伺いいたしましょう」


 アランは全員が席に着いたのを確認すると、待ちきれない様子で秋斗へ問いかける。


「まずは、アランさん。貴方が『歴史の語り手』だと聞いたんだ。俺が眠った後……2000年前の事を知りたい。あとは魔道具製作の見学かな?」


「ふむ。なるほど。わかりました」


 と、アランが秋斗の要望を受け入れた時、執務室のドアがノックされる。

 アランが返事を返すとドアが開かれ、中へ入って来たのはマルクを先頭にしたルクスとロイド。さらにはその妻達。


「おや、陛下?」


 アランが訪れてきた王族達に首を傾げていると、ルクスは軽く手を振って答える。 


「ああ、秋斗様がアランのもとへ行くと聞いてな。歴史の件と魔道具の件だと思ったので、我らも一緒に見学しに来た」


「お父様……。政務はいいのですか?」


 ソフィアは父親の行動にやや呆れ気味。


「ふふふ。昨日の夜に今日の分は終わらせておる!」


 腰に手を当てて、えへん! と娘にドヤ顔する国王。他の者達も政務を終わらせているのだろう。親一同は笑みを浮かべて、今日1日全員一緒に行動する気マンマンである。

 ソフィアも父親の態度に諦めたのか、仕方ないなぁといった感じで無言の了承となった。


「では、まずは歴史を語りましょう。少々準備をしてきますので、お待ち下さい」


 アランが準備をしに部屋を出て行き、その間にルクス達は執務室のソファーへ座る。

 マルクとアレクサが全員分のお茶を用意したところで、アランが何やら色々持って戻って来た。


「お待たせしました」


 20枚程度の木の板を持ち、後は何やら紙袋を持っている。

 アランはテーブルを用意して、その上に木枠のような物を立てる。そして、その中に絵の描かれた木の板を差し込んだ。


 それは紙芝居と呼ばれた古の手法である。当然、秋斗の生まれる遥か昔にあったモノでこれが紙芝居だということを秋斗は知らない。

 秋斗以外の者達はこれから起こる事を知っている様子だが、秋斗は用意しているアランに視線を向けて、何をするんだろう? と疑問を浮かべていた。


「さぁさぁ始めますよ。その前に、お菓子をどうぞ」


 と、アランは全員に紙袋の中に入ったクッキーを配った。


「これこれ」


「子供の時を思い出すわね~」


 ルクスやセリーヌ達の親世代もお馴染みの様子。


「子供の頃はおやつの時間以外に、おやつが食べられるので楽しみでした」


「このクッキーがおいしい」


 ソフィアとリリも子供の頃に経験しているようで、懐かしそうに話していた。

 秋斗はエルフ種の伝統なのか? と推測しつつ、配られたクッキーを齧る。クッキーはとてつもなく美味かった。


「これから語るのは、国に残されている言い伝えられた伝承を物語にした物です。子供向けになっておりますが伝承内容に変更はありません」


 アランの用意した木枠の中に差し込まれた板には『最初の5人』と書かれている。

 こうして、歴史の語り手アランによって賢者時代が終わった後の歴史が語られ始めた。

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