いつもの作業、そしてお茶会。
side:シロ
朝食を食べ終えた後は、分かれて活動します。
今日はボクが薬草などを、クロちゃんが動物さんやお魚さんを捕りにいきます。明日はその逆です。交代交代に担当します。
さーて、薬草集め、始めますか。
「あ、ハーブ見ーっけ。」
ハーブはお料理には欠かせないものです。お肉の臭みをとるのにも使いますし、お茶にすることも出来るスゴイやつなのです。この調子でしばらく集めます。
一通り薬草は取り終わりました。
「あとは・・・お、あっちの木の下にキノコはっけーん♪」
そうそう、キノコも見かけたら集めるようにしています。大切な食材ですからねー。片っ端から採っていきます。
「なんか赤いやつもあるけど・・・まぁ大丈夫でしょ。」
火を通せば大体のものは食べれるって言いますし。おそらく大丈夫でしょう。
かごいっぱいの薬草とキノコを持って帰る途中、花畑を通ります。そこは、クロちゃんが趣味で作っている花園です。そこを通っているとき、ふとある植物が目に入りました。
「・・・スズランの花・・・。」
ぴこーん。悪魔的な思い付きをしました。ボクはスズランを1本摘んでかごの上に載せます。1本ならばれないでしょう。クロちゃんの反応、楽しみですねー。ふふふ。
――――――
side:クロ
さて、シロも薬草集めに行ったことだし、私も狩り、始めましょうか。
私が今日狙う獲物は、イノシシ。深い理由はない。ただ何となく、食べたいと思っただけ。
「・・・いた。」
イノシシを探すこと10分。かなり早く出てきてくれた。まだこちらには気づいていないようだ。気づかれないようにこっそり近づく。そして、
「パラライズ。」
魔法だ。これは相手を麻痺させるもの。私やシロは魔法が使える。こういう時はけっこう便利だ。イノシシを麻痺させたら、近づいて家から持ってきた槍を突き刺す。イノシシはしばらく痙攣した後、動かなくなった。
「よし、あとは処理をして・・・。」
血抜きもぬかりなく。毛皮は何かに使えるだろうからきれいにしておく。
「うーん、私とシロの分なら1匹で十分だけど・・・まぁいっか。ちょっと寄り道して帰ろう。」
帰る途中、私の花畑に立ち寄る。と、誰かがいる気配がした。
「誰かしら・・・?」
木陰からそっと覗いてみると、シロが私のスズランを採っているのが見えた。
「なんだシロか・・・スズランなんか採ってどうするつもり・・・?・・・まさか、また何か企んでいるんじゃ・・・。」
家に帰ったら警戒しておこう。
――――――
side:シロ
ボクが家に帰ってちょっとすると、クロちゃんも帰ってきました。
「クロちゃんお疲れさまですー。お茶にしませんかー?」
「・・・そう。分かったわ。」
ちょっと考えるそぶりを見せましたが、了承してくれました。よし、これでボクの計画が実行できますね。
お茶はハーブティーを。一緒にクッキーも焼いておきました。ふたりぶん分けてありますが、クロちゃんとボクのクッキーは、同じものではありません。クロちゃんのほうにだけ、スズランの花を入れてあります。さぁ、どんな反応を見せてくれるんでしょうか。
「おまたせです。ハーブティーとクッキーですよー。」
クロちゃんとボクのを間違えずに渡します。ここで間違えたらボクが食らっちゃいますからね。
それでは、
「「いただきます。」」
クロちゃんはまずはお茶から。でも、
「あっつぅ!?」
がしゃーん。お茶をこぼしてしまいました。それほど熱くした覚えはなかったんですけどね。猫舌でしたっけ、クロちゃん。
「あー。今拭くもの持ってきますね。」
ボクは布巾をとりにいきます。そして戻ってきます。
「ごめんね、シロ。」
クロちゃんが申し訳なさそうに謝ってきます。そんな気にしなくてもいいんですよ。この後悪戯の餌食になってもらうんですからね。
お茶も淹れなおして、改めて楽しいお茶会のスタートです。
ボクとクロちゃんが同時にクッキーへ手を伸ばします。そして口に入れます。
「ん、おいしい。」
クロちゃん、そんなのんきなことを言っていられるのも今のうちですよ。しばらくしたら・・・。
ぐるるるるるるる。
そう、このボクのおなかのようにぐるぐるなり始めるはず・・・。
え?ボクのおなか?
「・・・うっ!?」
痛い。今もーれつにおなかが痛いです。うそ。こうなるのはクロちゃんのはず・・・。
「・・・ふふっ、無様ね、シロ。私に毒を盛ろうだなんて百年早いのよ。」
ばれてーら。でもなぜ分かった?
「貴方がスズランを採っていったとき、何に使うのかと思ったら・・・。クッキーなんて珍しく焼いたと思ったら、こういうことだったのね。」
見られてました。オワタ。
「ちょ、ちょっとお花を摘みに・・・。」
「またスズランを摘みに行くの?大変ね。」
うるせー。このボクがしてやられるなんて・・・。ちくせう。
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