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第3集《ヤジリとご主人様》

  こんにちは。僕の話を聞いてもらえますか?


  自己紹介がまだでしたね。


  僕はヤジリと言います。


  聞いてもらいたいのは、僕のご主人様のことなんです。


  ご主人様は狩人という仕事をしていてくて、僕はそのお手伝いをしています。


  ご主人様はとても綺麗な女の人で、いつも僕たちに優しくしてくれます。


  ああ、僕達というのはご主人様には、僕以外にも沢山のお手伝いさんがいるんですよ。


  数は、100くらいかな?


  その中でも、ご主人様の1番お気に入りは、この僕だと確信しています。


  なぜなら、昨日の夜。ご主人様は僕の体を丹念に洗い、優しく撫でてくれたからです!


  そして最後にこう言ってくれたんです。


「明日は、頼りにしてるぞ」って。


  美しいご主人様の口から、そんな言葉が聴けるなんて、僕感動のあまり、昨日は一睡もできませんでした。


  まあ、寝なくても体に支障はありませんけど。


  それよりも、ご主人様の寝姿を見ることの方が大事です!

  あっ、今のは内緒で、そんな覗きみたいな事をしてる事がバレたら、嫌われてしまいます。


  もしそうなったら……僕は生きていけません。


  えっ、内緒にしてくれますか! ありがとうございます!


  さてと、どこまで話しましたっけ?


  そう、それで夜が明けて、僕とご主人様は狩場である森に出かけたんです。


  ご主人様は何時間も森の中を歩き回り、獲物を探します。


  今回狙うのは、ある、小さな村を恐怖のどん底に叩き落とした獣がターゲット。


  四足歩行で素早く木々を飛び移り、鋭い爪で生き物を捉え、強靭な顎でどんな硬いものを食べてしまう恐ろしいモンスターなんです。


  村の人々はそのモンスターに襲われて、もう何人も帰ってきていないそうなのです。


  依頼されたご主人様は、そいつを狩るためにこの森に入ったのですが……中々見つかりません。


 日が昇る前に起きて森の中に入ったのに、気づけばお日様が真上からご主人様を照らしています。


  こら太陽、ご主人様が暑がってるから、もう少し離れろよ!


  そんな事を僕が言ってもお日様は知らんぷりで、地上を照らし続けていました。


  ご主人様は、その暑さに文句ひとつ言わずに、額から汗を流しながら、黙々とモンスターを探し続けます。


 頑張れご主人様。今の僕は応援することしかできないけど、力の限りを尽くして応援するよ。


  陽の光を浴びせるのを飽きたのか、お日様が眠りにつこうとしている時、ご主人様はまだ歩き続けていました。


  このままじゃ真っ暗になっちゃう。お月様の光じゃ、全然頼りにならないんだよな。


  神様がどういう存在かわかりません。


  けれどお願いです。ご主人様に力を貸してください!


  そんな僕の願いが通じたのか、突然ご主人様が足を止め姿勢を低くします。


  ご主人様の全身から緊張でピリピリとした雰囲気が僕にも伝わってきました。


  ついにモンスターを見つけたんだ。やった! 神様ありがとう。


  ここからはご主人様と僕の出番。


  ご主人様の細くてしなやかな指が僕の頭をしっかりと掴みます。


  うわ〜ご主人様に触れてもらえるなんてとっても幸せ……駄目駄目、今は目の前の標的に集中しないと!


  遂に僕、ヤジリの出番が来ました。ご主人様の緊張が手を通して僕の全身に伝わって来ます。


  頑張れご主人様!


  ご主人様がモンスターに狙いをつけると、力を込めて弦をまっすぐ引きしぼり指を離しました。


  僕は弦の弾力を全身に受けて飛翔。


  いってきますご主人様。僕の勇姿を見ていてくださいね。


  僕はゆるい放物線を描きながら、逃げようとしたモンスターの頭部に見事命中。


  人々を襲った凶暴なモンスターは断末魔の悲鳴をあげながら地面に倒れました。


  やった。やりましたよご主人様。僕の活躍見ていてくれましたか?


  見上げると、こちらを笑顔で見下ろすご主人様と目があったような気がしました。


  もうその笑顔を見れただけで僕は幸せ者です。


  だって僕は(ヤジリ)


  弓から放たれ、ご主人様の獲物を仕留めるのが矢である僕の役目なんですから。


  これで僕の話はおしまいです。


  もう夜だからかな? すごく眠いので少し眠ろうと思います。

 

  今日はとってもいい夢が見られそうです。

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