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第21輪《未来の掃除屋》

今回は近未来のアクションものです。


ちょっと過激ですが楽しんでください。

  建物が空高くまで伸びたその世界では、朝も夜も変わらず地上はとても薄暗いものです。


  誰も掃除するものはいないのか、道には空き缶や食べ物が散乱し、それを求めてネズミ達が集まっていました。


  その汚い路地を黒い格好の2人が、両手をポケットに入れて歩いています。


  1人は30代くらいの男で、短い銀髪の髪に、メガネをかけた細い銀色の瞳はとても優しそう。

 

  黒い喪服のようなスーツを着た彼の名はジルバといいます。


  ジルバは落ちているゴミを革靴で踏み潰しながら、隣にいる15歳の相棒に声をかけます。


「眠そうだなオウロ」


  オウロと呼ばれた紫色のショートカットに、トロンとした眠そうな金色の瞳のボーイッシュな少女は返事の代わりにあくびで返します。


「もう昼の12時だぞ。それでも眠いのかい」


「……眠い」


  黒のパーカーに緑のホットパンツを着用しているオウロは、右手で目をコシコシしながら、履いているコンバットブーツで踏まないように、落ちている生ゴミを避けて歩きます。


  左手はずっとパーカーのポケットに突っ込んだままです。


「寝るのは掃除を終えてからにしよう」


「分かってる」


  その返事を聞いて、ジルバは視線を前に向けると、2人で目的地である廃ビルに向かいました。


  2人が立ち止まったのはある部屋の前です。ドアに書かれた部屋番号は4001。


  そう、2人がいるのは40階にある部屋の1つでした。


  因みにこのビルは200階建です。この世界ではこれが普通で、これでも低い方。富裕層達は清潔な環境を得るために10000階もの高さの建物に住んでいたりするのです。


「ここで間違いないの?」


  オウロがジルバを見上げます。


「ああ、信頼した情報屋から聞いたんだ。間違いないさ」


  ジルバは指でメガネを押し上げると、懐に手を入れます。


  懐から出した右手には、銀色に鈍く光るリボルバーが握られていました。


  フレーム上部にはドットサイトが装備してあります。


 使う弾薬は44マグナム弾。それがレンコンのようなシリンダーに7発収められています。


  その姿は豊満な女性のようで名前はシリブロ44。


  オウロもパーカーのポケットから左手を抜きました。


  左利きの彼女の手には、紫の光沢に包まれた拳銃が握られています。


  スラリとした筋肉質のスライドに、視認性の良いアイアンサイト。アウターバレルは彼女の瞳と同じく金色。


  スラリとした筋肉質のスライドに対して、グリップは少しふくよか。


  理由は45口径という大口径の弾薬をダブルカアラムマガジンに14発込められているからです。


  その銃の名はヴァイオレット45。


  フレームには接近戦用に、光を反射しない黒塗りのナイフが装着されていました。


「それで、どうやって突入するの?」


「君がドアの前に立って呼び鈴を鳴らしてくれ」


  オウロが首を傾げます。


「それで相手が扉を開ける?」


「もしかしたら君がタイプだという男が喜んで扉を開けてくれるかもしれないだろ」


「つまり私は娼婦役ね」


  15歳の少女から娼婦という言葉が平然と出て来ました。


  この世界では十代に満たない男女が平然と身体を打っている世界なのです。


「そういう事。あんまり立ち話もなんだから、そろそろ頼むよ」


「ん」


  オウロはドアの覗き穴から自分が見える位置に立つと、右手でブザーを押します。


  まるで、クイズを間違えたような音が三回響いた頃、部屋の中で何か物音が聞こえて来ました。


  オウロとジルバの耳が捉えたのは微かな金属音。


  それはボルトを引いて初弾を装填する音によく似ていました。


  2人は素早くドアから離れた直後、連続した銃声が響き渡る。


  瞬く間にオウロが立っていたドアが穴だらけになっていく。


  銃声でドアと壁が破壊されていく中、2人は平然と会話していた。


「ヒステリックな銃声と、高回転の発射速度……サブマシンガン?」


「そうみたいだね。弾痕から見て口径は9ミリと言ったところだろう」


「あと何発で弾切れる?」


「30発マガジンなら、あと五発かな」


  ジルバが言った通り、きっかり5発で銃撃が止んだ。


  室内では、何かが外れ落ちる音が聞こえた。


「行くぞオウロ」


  ジルバが先陣を切って、ドアを蹴破る。銃弾で破壊されたドアは完全に砕け、今にもサブマシンガンをリロードしようとしていた男が驚愕の表情で固まっていた。


「失礼」


  ジルバは薄く笑いながら、シリブロ44のドットサイトで男の頭を狙い、引き金を引く。


  轟音と炎と共に、弾丸が発射され男の眉間に食い込んだ。


  弾丸は、そのまま脳と一緒に後頭部から吹き飛ぶ。


「僕はこのまま奥へ行くよ。オウロは左右の部屋をクリアリングしてくれ」


「分かってる」


  2人が突入した部屋は、玄関を抜けると真っ直ぐ奥の部屋がリビング。左右のドアにはユニットバスと寝室などの部屋がある。


  事前に調べてあったので、部屋の配置は頭に入っていた。


  ジルバが銃を構えて直進。その背中を一瞥してオウロは1番近い右のドアノブに手をかける。


  その部屋はユニットバス。狭い浴槽の中には男と女が全裸で絡み合っていた。


  オウロは何の感情もない瞳で、2人に狙いをつけ引き金を2回引く。


  放たれた弾頭は2人の頭をほぼ同時に貫き、透明なお湯は真っ赤に染まった。


  廊下に出ると、やっと迎撃の準備が整ったのか、他の部屋からも男達が出て来た。


  1人がジルバの背中に銃を向けようとする。


  オウロは素早く銃を構え、ジルバを狙っていた敵を撃ち殺す。


  他の音かな達がオウロの方を見た。どうやら狙いを彼女に絞ったようだ。


  複数の男達から殺気を込めた眼差しを向けられても、オウロは眠そうに素早く男の一人に近づく。


  ハンドガンを向けようとした男の手に、ヴァイオレット45に取り付けられたナイフを突き刺し、すぐさま引き抜いて心臓をひと突き。


  その死体を盾にしながら、2人目に死体ごと身体をぶつける。


  男からの反撃を塞ぎ、1人目の身体を貫いたまま、トリガーを引いた。


  2人目を無力化すると、髭を蓄えた男がバールを持って殴りかかってくる。


  オウロはそれを2度3度と避け、振り下ろして隙だらけの右手の甲を切った。


  男は痛みのせいか、顔を真っ赤にして奇声をあげながら、左拳で殴りかかって来る。それを下に潜り込むようにかわして、脇腹から心臓に向けてナイフを差し込んだ。


  オウロは銃を引き抜き、棒立ちになった3人目の顔面に向けて引き金を引いてトドメを刺す。


  4人目のスキンヘッドがサブマシンガンを二丁構えて乱射。


  オウロは地を滑るように体勢を低くして近づくと、身体を一回転させて爪先で蹴り上げる。


  爪先はスキンヘッドの顎に決まり、口から血と折れた歯を吐き出しながら仰向けに倒れる。


  縦の回転蹴りを繰り出したオウロは、着地すると廊下に倒れて動かない男の口の中に、弾丸を撃ち込んだ。


  その頃、ジルバは部屋の1番奥にあるリビングに飛び込んでいた。


  部屋にいた6人の男達は、テーブルやシンクをバリケードにしているようだが、ジルバは構わずに、バリケードごと男達を狙って引き金を6回引いた。


  主人の命令に従い放たれた六匹の金属の獣は、バリケードを貫き、男達の柔らかい肉に食らいついて噛みちぎる。


  リビングにいた6人は、大口径のマグナム弾にはらわたを引きずり出されて即死した。


  「ふ〜」


  仕事を終えたジルバは、シリンダーを横にスイングアウトして、中の空薬莢を下に落とし、新しい弾丸を7発込める。


「?」


  周りに敵がいないと油断していたジルバは、背中の鋭い痛みに気づくのが一瞬遅れた。


「な、なぜ君が?」


  後ろを見たジルバは予想外の人物を見て、ぎょっとした。


  紫のショートカットのボーイッシュな雰囲気の少女、仕事の相棒であったオウロであったからだ。


「……死んで。生きている貴方は()()()にとって邪魔なだけ」


  オウロはジルバの心臓を突き刺したまま、トリガーを引いた。


  14発全弾が、ナイフで傷ついた心臓を完膚なきまでに引き千切る。


  シルバの胸部から爆発したように血と肉片が飛び散り、その身体は膝から崩れ落ちた。


「……なぜ……」


  口から大量の血を吐きながら、ジルバが尋ねる。


  オウロは返事の代わりに、リロードしたヴァイオレット45を頭に突きつける。


「早く死んで」


  銃声が轟き、ジルバの顔を原型も留めないほど破壊し尽くした。


 ☆☆☆☆


  建物で太陽の光が届かなくても、雨が降れば下まで落ちてくるもの。


  オウロはずぶ濡れになりながら、5階の部屋のマンションの呼び鈴を押しました。


  何度か押すと扉が開き、エプロンをつけた女性が出て来ます。


  オウロより少し年上の20代でしょうか、茶色がかった髪で顔――どこか気弱そうで守ってあげたくなるような――の右半分を隠した女性でした。


「どうしたのオウロちゃん。そんなずぶ濡れで……それに血が!」


  オウロの黒のパーカーは、血で真っ赤に染まっていたので、それを見た女性は、慌てて彼女の傷の具合を見ようと手を伸ばします。


「これは私の血じゃないよ。マキ」


  オウロは微笑みながら、マキの右手を取るとその掌に軽く口づけをします。


「どういう事? そういえば()は一緒じゃないの」


  夫とはジルバの事です。


 マキが発した夫という言葉にはとても冷たい感情が込められていました。


「ジルバは私が殺した」


「殺した?」


「うん。貴女に酷いことしていた()()()は私が掃除した」


  オウロは左手で、そっとマキの顔を隠していた髪を掻き上げます。


  そこから現れたのは、痛々しい青アザができた右頬でした。


「こんな事をしたあいつはもういないよ。マキ」


  マキの目尻の下がった茶色の瞳から、大粒の涙が溢れました。


「ありがとう。ありがとうね。オウロちゃん」


  2人は雨の降る空の下、部屋の前の廊下でしっかりと抱きしめ合うのでした。


 ――おわり――

最後まで読んでいただきありがとうございました!


ここでオウロとジルバの使っていた銃の元ネタを書いておきます。


ジルバのシリブロ44はS&W M29。映画ダーティーハリーで主人公のハリーが使っていたのが有名です。


オウロのヴァイオレット45は、コルトガバメントにダブルカアラムマガジンと、フレームにナイフを装着させたものです。


色は光沢のある紫ですが、実際こんな銃があるのでしょうか?


海外だと結構あったりするかもしれませんね。


それでは長くなりましたが、この辺で失礼します。

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