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第15集《炎と雪が交わる時》

  いらっしゃい。


  今日はどんなお話をお望みかな?


  ん? テレビで南極登山の番組見たから、なんか身も心もあったまるような話しがいいって?


  そうだね。じゃあこれなんかどうだい? ある二人の熱々なラブストーリーだよ。


 ☆☆☆☆


  あなたは知っていますか。雲の上に学校がある事を。


  その高校の名前は雲ノ上高校といいます。


  雲ノ上高校には、八百万の神や魑魅魍魎達が通っているのです。


  その高校にはとても有名な女子高生がいました。


  名前を《いちのく ゆき》といいます。


  蒼いロングヘアに白い透き通るような肌を持つとても美人で、学校のすべての生徒から慕われていました。


  なので、彼女に告白(アタック)する生徒は、()()()()()後を絶ちません。


今日もまた一人の生徒が告白します。


「付き合ってください」


「ごめんなさい」


  しかし、ゆきはその告白を断ります。それだけではありません。今までの全ての告白を断ってきました。


  そして断られた生徒達は、身も凍りつくような衝撃で、本当に凍り付いてしまうのです。


  それでも美しい美貌と慈愛に満ちた優しい性格の彼女に、自分の思いを告げる者は後を絶ちませんでした。

 

  すべての生徒の告白をゆきは断ったので、ついに全校生徒が凍結してしまいます。


  全員が凍り付いても、先生達は特に気にはしません。だってみんな人外の者たち。これくらいでは死にはしませんから。


  けれど従業は先生とゆきの一対一なので、学校の中はとても静かで冷たい日が続いていました。


  そんなある日の事。一人の男子生徒が現れました。


「俺は《ヒノ カグツチ》よろしく」


  炎の髪を持つ彼はその見た目通りとても熱い生徒です。


  彼が通り過ぎるだけで、凍り付いた生徒達が解凍されていく程です


  そんな彼は、予想通りというかなんというか、ゆきを見て固まりました。


  周りの生徒たちも気づきます。彼は惚れたなと。


  休み時間のチャイムがなった途端、カグツチは立ち上がるとゆきの前に立ち屋上に呼び出します。


  ゆきは黙って頷くと、彼の後をついて屋上に向かいました。


  氷が溶けた生徒たちが、扉の隙間から向かい合う二人のことを見守ります。


  二人は最初は無言でしたが、カグツチが口火を切りました。


「いちのく ゆき。俺はお前の事が好きだ! 付き合ってくれ!」


  なんとも直球な告白に、周りはこりゃダメだなと様子を見守っていると、ゆきが口を開きます。


「ごめんなさい」


  カグツチの心に、凍りつくほどの衝撃が走ります。


「なぜ駄目なんだ? 理由を教えてくれないか?」


  なんと、カグツチは凍りつかず、ゆきになんで付き合ってくれないのか尋ねます。


  これは初めての事で、ゆきも驚いているのか口元に手を当てています。


  そして、今までの告白を断って来た理由を話していきます。


「知っていると思いますけど、私と一緒にいたら、身も心も凍り付いてしまうのです。だから私は誰の告白もお受けすることはできません。ごめんなさい」


  また、カグツチの心に強烈な寒波が襲って来ましたが、彼は持ち前の熱い心で耐えました。


「君と付き合ったら、みんな凍り付いてしまうと言ったか?」


「はい」


「なら俺は大丈夫だ」


「えっ?」


「だって俺の炎はどんな分厚い氷も溶かす事ができるから」


  そう言って、カグツチはゆきを思いっきり抱きしめました。


  カグツチの全身はどんどん凍結していきますが、それを気にせずに、強くしっかりと抱きしめます。

 

  すると、ゆきの白い肌がポッと火が灯るように赤くなり、カグツチの身体の氷が溶けていくではありませんか。


「なんで? 凍りつかないんですか?」


  ゆきが一番驚いているようです。


「言わなかったか? 俺の名前はカグツチ。これでも火の神なんだぜ。もう一度言う。俺と付き合ってくれ。ゆき」


「はい。こんな雪女でよければよろしくお願いします。カグツチさん」


  ゆきは涙を流しながら返事をします。その目からとても温かい涙が一粒流れました。


  こうして、雲ノ上高校に火の神と雪女のカップルが誕生しました。


  周りの生徒たちはもちろん先生たちまで、二人を暖かく祝福するのでした。


 ――完――

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