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第五十二話『再会する人々』

 二つ目の町も駆け足で通り、僕らは帝国首都が見える場所まで来た。

 遠くには城が見え、その左側には大きな湖、其処から流れる川が城や城下町を通って長く成っているのが見えた。


 円を描く様に二重になる城壁、そこから四方に伸びる街道からは馬車などが通るのが見え、活気があるのがわかる。 


 僕と一緒に馬に乗っているマリエルが遠くを指差す。


「城の横にある窪みは訓練所かしら黒い煙上がっているわね」


 僕もその場所をみる。城壁で中まで見えないが黒い煙が数本上がっているのが見えた。

 もう片方の馬に乗ってるアデーレが横に来ると、僕らに教えてくれた。


「恐らく火薬ではないかと思います。帝国は能力者も然る事ながら火気の開発も力を入れていると聴きます」


 マリエルの質問にアデーレが答える。アデーレと縄で繋がっているフローレンスお嬢様がぐったりした顔で僕を見てくる。

 

「そんなのはどうでもいいから、ヴェルー。早くオーフェンって人を助けて帰ろうよー」


 いくら馬に乗っていると言えとフローレンスお嬢様には強行の旅はきついのだろう。それでも、自分から休もうとは一度も言わなかった。


 僕は、オーフェンを助けられるのかは解らない事を黙っておく。少なくとも城に行けば会えるとジンは言っていた。


「そうですね。取り合えず行きましょうか」


 ここ数日でかなり旨くなった手綱捌きで馬を走らせる。直ぐに城下町が見えてきた。


 城下町に入ると帝国色が凄い出ているのがわかった。あちらこちらに帝国兵の服を来た人物が歩いており談笑しているのがわかる。

 王国では兵士は城や詰め所にいる事が多く一般市民と一線を引いているのが多い。


 フロレーンスお嬢様は僕らから離れ一人で壁に寄りかかっている兵士の前に歩く。

 

「ねーねー。お城に行きたいんだけど」


 無造作に近づくと行き成り声をかけはじめた。

 僕は驚いて、兵士の前に行き無礼を謝る。僕らの姿をみて旅人とわかったのか笑顔になる兵士。


「ああ。いいって事。観光かい? それともお嬢ちゃんは違うようだけど君達三人は剣を持っているって事は兵希望かな。何にせよ、ここをまっすぐ言って橋が見えるから、其処を越えたら直ぐだよ」


 言われた通りに道を歩く。横一列で歩くわけには行かないのでアデーレとフローレンスお嬢様が前に歩いていた。

 フローレンスお嬢様といえば最近は僕よりアデーレにくっついている時が多い気がする。

 マリエルは先ほどの話を持ち出してきた。


「ヴェル、序だから兵士に志願したら?」

「別に僕は兵に成りたいとは思ってませんけど」

「力があるのに勿体無い。私から奪った力なんだし有効に使いなさいよ」


 小さな声で「それに」と呟き僕にだけ聞こえるように喋る。


「力を継承したままじゃ。もう、王国に戻れないよね……」


 王国に戻って王国軍に入るなど色々手は在るかもしれないが、現状ではハグレ扱いされるのが定番だろう。少なくとも第七聖騎士団には僕の情報は伝わってるはずだし。


「そうだとしても、帝国にも属するきはないですよ」

「ね。もし全部終わったら、その一緒に来ない?」


 僕はマリエルの言葉に耳を疑い立ち止まる。


「王国に所属すれば君の罪状は何とかなると思うんだ、それに第七聖騎士だって別に女性だけを限定してるわけじゃないし――」


 僕は黙って首を振る。


「全部終わったら。何処かでひっそりと暮らすつもりです」

「そっか。でも、まだ時間はあるし選択肢は増やして置いたほうがいいわよ。あっ、アデーレーちょっとまってー」


 大声で先に行く二人を呼び止めるマリエル。振り返る二人がこちらに戻ってきた。

 マリエルが指をさす店は看板に手紙のマークがついている。

 ちょっと待っていてね、とマリエルが店に入ると。直ぐに笑顔で出てきた、手には小さな箱を持っている。


「手紙、届いたんですね。何かいい事書いてあったんですか」

「全然、手紙にはファーの恨み事しか書いてなかった」


 笑顔で喋るマリエルに、ファーの心労を心配する僕。


「えーっと、では何で」

「これよこれ」


 僕らに箱の中身を見せつける。赤や緑の宝石が何個も見える。


「綺麗……」


 フローレンスお嬢様の呟きが聞こえ。アデーレも頷いている。


「ファーに、私とアデーレ、それと一般人二名が旅費が無くなって帰れないって手紙を送ったのよ。これを全部売れば1ヶ月は遊んで暮らせるわね。全員1個はもって、後はアデーレに任す」

「なるほど、それでは預からせて貰います」


 これで万が一財布を紛失したり盗まれても大丈夫である。

 兵士に言われた通り川を渡る橋に、左右に道が別れていた。左のほうに詰め所があり、そこの兵士に尋ねる事にする。


「すみません。面会を求めたいのですが」

「はいはいー誰に」


 笑顔で応答してくれる兵に僕は探し相手を伝える。


「ジンって兵士に」

「ジンねぇ、名前だけ言われても何処のジンかわからないと。特徴とかないかな」

「特徴ですか。黒髪で黒眼鏡です。ヴェルが来たといえば解るかもしれません」


 兵士の表情が変り始める。


「それって、黒マント着込んでるジンであってる?」

「ええ」

「君ねぇ。何者が知らないけどジン隊長にホイホイ会えるわけないでしょ。それとも、何。約定の書類とかあるの? 武功を認められたいなら隣で兵士募集してるからまずはそっちにって」


 取り合わない兵士。僕の前に一歩でるお嬢様は、兵士の前に立ち大きな声で叫ぶ。


「フローレンスが来たって言えばきっとわかるわよっ!」


 アデーレがフローレンスお嬢様を兵から守るように前に立つとダメ押しの一言を伝えた。


「帝国の兵は、勇敢と聞いた。せめて取り次ぐだけ取りづいてもらえないだろうか、それでダメなら私達も諦める」


 マリエルもう一押し「お願い」と声をかけると「聴くだけですよ」と詰め所に戻る門兵、直ぐに別の人間が城門に入っていった。


 僕らは邪魔にならないように道の端で固まっている。

 何人もの男達が兵受付にいっては中へ入っていく。別れている左からは傷ついた人間がちらほらと歩いてくるのが見えた。


「何してるでしょうね……」

「兵の訓練かしら。他国の訓練かぁ、きになるわ」


 時間を潰す事暫くすると、僕らの前に先ほどの兵士が戻ってくる。


「お待たせしました。こちらにどうぞ」


 随分と丁寧になり城の中へ通される。王国で見た城と作りは変らないようにもみえる、すぐ小さな部屋に通されて、ここで待つようにといわれた。


 応接室というのだろうか、日の光が入る部屋。大きな石のテーブルが一つその上には装飾のかかれた赤いテーブルクロスが引かれている。

 その上には水差しが二つ、酒瓶が二つ、コップが八個と大人数を想定した数が置かれている。

 挟むようにある革製のソファーも片方だけでも五人は座れそうだ。


「疲れたーーっ」


 フローレンスお嬢様はソファーに勢い良くすわると足をパタパタとし始める。

 マリエルもその向え側にすわり僕とアデーレは立ったままで室内を見回した。


 部屋がノックされる、直ぐに僕は扉の前に立つ。

 後ろをを振り返るとアデーレだけが剣の柄に手を置いているのが見えた。万が一の予想だろう。


 僕は一呼吸をして扉を開けた。

 時代遅れの格好に見える赤い髪の女性と、短い金髪がまぶしいおちゃらけた男オーフェンが立っていた。


「オーフェン! それに――」


 僕が喋り終わる前に、マリエルとアデーレが喋った。


「ヒバリ様っ」


 後ろをを振り返るとマリエルもアデーレも片膝を落として顔を下にしている。

 ヒバリにしか見えない女性は手を前に出して僕らを見る。


「我をヒバリと呼ぶって事はじゃ。お主ら王国の人間かの? 残念ながら我は――」


 ヒバリに似た人が喋り終わる前にオーフェンが大きな声で話しだす。


「何か勘違いしてるっぽいが、俺の上司であるヒナマモリ様。それもしてもヴェル。お前ばっかりずるいぞー。両手に花所が、三人もつれてるとは。俺にも一人ぐらい紹介しろ」

「あのねえ。僕は君が心配で態々此処まで来てるんだよ」


 僕の言葉に笑顔になるオーフェン。腕を無理やり握手しながら喋る。


「とは言うけど、言わなかったか? 失敗しても放置しとけって」

「ああ、確かに聴いたけどほっとけなくてね」

「ヴェルお前も無事で良かった……」

  

 オーフェンが握手している手を解いて僕に抱きつこうとする。抱き付きたくはないが僕彼の行為を無駄にする事もない。


 再会を祝して両手を広げると、オーフェンはそのまま僕の横にいるフローレンスお嬢様へと抱きついた。


「え、ちょっと。何、何で私なの」

「うーん。言い匂い柔らかいー。お、なんだヴェルお前は男と抱き合うつもりだったのかっ」

「キャーちょっと、変な所揉まないでよっ」


 オーフェンの手がフローレンスお嬢様の尻を触り始めた。

 直ぐにマリエルが立ち上がる。


「ヴェル。もう少し友達は選んだほうがいいだろう。フローレンスさんをはなせっ。わっこらこっちに引っ付くな」


 オーフェンが直ぐにマリエルへど抱きつく。アデーレが黙って剣を抜いたので僕がそれを止める事になる。


「まった。アデーレ斬るのははまずい。こんな人でも斬っては不味いから」

「おお、良く見たらこっちの女性も中々の美人っ。今夜一等地に部屋を取ってあります。一緒に夜明けの過ごしませんか」


 アデーレが剣を持ったまま後ろに下がり始めた。

 ヒナマモリと呼ばれている女性がため息を付き、僕に向き直る。


「お主ら一体何しにきたんじゃ」

「捕まったオーフェンを心配してきたんですけどね……」


 当り構わず抱きつくオーフェンをみてため息を付くとヒナマモリが笑い出す。


「何はともあれ少し情報を共有したほうが良さそうじゃの」 

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