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第三十話『第七部隊の末路』

 城下町の中をゆっくりと動く。

 露天でかった皮のポーチや使い古した護身用ナイフ。携帯食料や旅へ道具などを交渉に交渉を得て格安で仕入れる。それでも僕の居た村の物価でいうと数倍はした。


 いくらお見舞金を貰ったとしても、手持ちのお金は適当に遊んで居たら二年ぐらいしか生活できないのがわかった。


 本当にどうしよう。

 大きな通りから外れ路地にはいると少し開けた場所にでた。固定された椅子が置いてあり、中央には噴水も見えた。


 憩いの場って所なのだろう。一つの固定された椅子に座り遠くを見つめると幾つかの船が見えた。

 大小様々な帆が付いており、風を受けて海上を走らせるのだろう。


「いっそ国を捨てるのもいいかもしれないな」


 僕の問いに応える者は居なく潮風が肌に当った。

 気が抜けたのか突然僕のお腹が鳴り響く。周りの通行人に聞かれたらしく僕を振り向くが、音の正体がわかったのか直ぐに前を向き夫々の相手と談笑したり座ったりとゆっくりと時が過ぎ去っていく。


「疲れたかな……」


 一言呟くと僕は重い腰を上げた。海のかなたに日が沈むのが見え始めた。


 メリーアンヌさん、いや女王陛下から頂いた招待状を確認し宿へと向かった。

 赤い壁で豪華な三階立て、窓は吹き抜けではなく城でも見たことないガラスがはめ込まれている窓。

 入り口は赤い布が引かれて階段へと続いていた。

 強面の男性が二人立っており一人が僕の顔をみると、やさしい笑みで近づいてくる。


「旦那様、とうホテルへご利用でしょうか」


 旦那様と言われる年齢ではないが、これは泊まるなら歓迎する。しかし、冷やかしならさっさと帰れの意味だろう。胸ポケットから紹介状を取り出し手渡した。

 紹介状と僕を交互にみ、もう一人の男性も近くによって来た。

 二人は頷くと、低姿勢になり僕をエスコートしはじめる。周りにた数人のギャラリーが僕の事をひそひそと話しているのがわかる。


 そりゃそうだろう。何処にでもいるような村人が、場違いの宿に案内されるんだ。たとえ逆でもそうする。


 室内に入るとメイド姿の女性が待っており、三階にある一番奥の部屋に案内された。

 天幕付きのベッドに、五人は座れそうなソファー。高いガラスを使われたテーブルに染み一つ無い真っ白なシーツなどが目に飛び込んだ。


 それでは、ごゆっくり、後ほど食事を運ばせます。と短くいうと大きな扉を閉められた。

 落ちつかない。


「宿は嬉しいけど此処まで来ると逆に拷問だよ……」


 座ってはいけない気がして僕は床に直接座る、それですら長い毛のじゅうたんが引かれており肌さわりは最高である。

 

 室内にノックが響く。慌てて開けると部屋の中に数々の料理が運ばれてきた。僕が床に座っているのを見ると、訳を聞いてきた。

 素直な意見を伝えると、メイドの一人がソファーやじゅうたん、白いシーツが張られているベッドに幾つかの料理をぶちまけ、飾ってある花瓶を叩き割る。


 驚きで声を失うと、直ぐにメイドの一人が喋り始める。


「ご安心ください。ヴェル様がどのようにお部屋をお使われるのは自由ですが。このように汚れたとしても」


 メイドが二回手を叩くと、部屋に大勢のメイドが入り込んでくる。

 一瞬の出来ことのように汚れた部分を全て取り替え。壊れた壷と同じ壷を設置し部屋から出て行ったのだ。


「ご覧の通り、綺麗になりますのでご安心を。それでは料理の説明をさせて頂きます。此方は今朝取れた――」


 何を食べたのかわからない、いや。色々あり過ぎてわからないが美味しかったと素直な感想を伝えると、メイドは深くお礼をいい部屋から出て行った。

 部屋から出て行く前に室内にはサウナも備わっているらしく、サービスを希望されるか聞いたけど断った。

 そして、「明日の朝までだけとよろしくね」と声をかけた所。「ヴェル様のご予約は一週間となっておりますが」と冷静に返された。


 やはり僕は何か恨みを買ったのだろうか。豪華すぎて胃が痛くなりそうだ。これがマリエルだったら「使えるものは使うわよ」と元気よく返事をしただろう。


 僕はそこで気づいた……なんで、フローレンスお嬢様を思い出さなかったのだろうか。故人だから、いやだからと言ってフローレンスお嬢様とは家族として育った記憶も一番長いのに……。


「寝ようか」


 室内の一番大きいランプを消す。窓からは城下町の活気在る光が部屋へと差し込んできた。

 もちろんカーテンは付いているが、僕はそのままに柔らかすぎるベッドに体を預けた。



 どれぐらいだったのだろう、部屋をノックする音が聞こえた。

 小さな声で僕の名前を呼ぶ声で目が覚める。

 扉を隔てた一枚先から僕の名前確認するメイド。


「夜分申し訳ありませんヴェル様。ファーランス様という女性が面会に来ているのですがどの様に対処致しましょう。もし迷惑であれば追い返しますし、ホテルや部屋を変え隠れる事も出来ます」


 僕は急いで扉を開けた。驚きもせずに立っているメイドに声をかける。


「会うよ。その知り合いなんだ」

「畏まりました。ではお部屋の中でお待ちをお願いします」


 部屋のランプを付け直し。勝手に飲んでいいといわれた保令箱からワインを取り出す。

 用件はわからないが彼女の、いや彼女達の顔は見れるのは何だか嬉しい。ファーが居るという事はマリエルも近くにいるのだろう。


 部屋がノックされた。


「ヴェルさん。夜分に失礼しますね。此方に泊まっているのと聞いたので」


 部屋に入ってくるファーは、右腕を無くし同じく右目は包帯を巻いて僕の知っているファーとは別人であった。


「そして、最後の別れとなります」


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