表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/61

第二十九話『王国の光と影』

 木製の豪華な模様が入ったベッドの上で目が覚める。

 一瞬自分が何処にいるかわからない錯覚に陥ったが、昨日から城に居るんだとと思い出すと納得した。


 マリエル達は元気だろうか、とふと思い小さく笑う。

 聖騎士と一般人ではもう会うことは殆どないだろう、僕にとって二人目の自分勝手な女性。こっちの話を全然聞かずに近くに寄って来ては距離を詰める。

 迷惑であり嬉しくもおもったのかな……。


 彼女の性格なら、きっと何処へでも元気にやっていくだろう。会いたく無いといえば嘘になるが、もう接点が無くなったからだ。マリエルも解っていたからこそあの夜があったのかもしれない。


「ダメだな。一人でいると変な事ばかり考えてしまう」


 ベッドへ腰掛け頭を切り替える。周りにはもう人は居ない、自分の為に生きて行かないといけないからだ。

 水差しから水を飲み、喉の渇きを潤す。

 改めて自分の荷物も確認する、何も持っていなくて逆に驚いた。


 服は借り物であるし、まぁこれは恐らく貰えるだろうと算段する。旅用の鞄に護身用のナイフ、旅用の衣類や火を起す道具など何も無いのだ。


「良く此処までこれたな……」


 自分自身の危機管理のなさに肩を落とすと、部屋にノックの音が響く。

 返事が遅れると、再度丁重なノックの後に僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。慌てて僕は扉を開けると、全身に鎧を着た兵士が二人。

 さらに、豪華な毛皮のコートを着た中年の男性が僕をにらみ付けていた。


「ふん。お前が村を焼き滅ぼされた生き残りかっ。態々王宮に金をせびりにきやがって、なんで浅ましいんだ」


 僕に聞こえるように喋ると、大小様々な指輪が付けられた指を揉み解す。


「でろっ」

「えーっと、僕は別にせびりに来たわけじゃなくてで――」

「ああ、うるさいっ。喋るなゴミがっ、陛下直々に金を払ってやるんだ。受け取ったら消えろっ」


 僕の話を聞かないで先に歩く中年の男性。無言の兵士僕の肩を軽く指先で叩くと軽く礼をしてくれた。一切喋らすに僕を道案内してくれる。


 長い階段や短い廊下、更には上や下へと歩かされて大きな扉の前に立たされる。先に歩いていた中年の男性は既に居なく。

 兵士が黙ってその大扉をあけると赤絨毯が引かれた大広間へと繋がっていた。


 左右には甲冑を来た兵士と、腕に篭手を付けた軽装な兵士が並んでいる。

 奥には段差がありその上に豪華な椅子があり、一人の女性が座っているのが体系から解った。


 顔にはベールがかけられており表情はわからない。

 その段差から数段したの隣には、先ほど僕をゴミ呼ばわりした中年の男性の顔が見えた。

 ヘラヘラと笑い、段上の上の女性に何かを言っている。


 流石に僕でもわかる。あの方が、王都を納める女王であるだろう。


「えーでは。わたくし。マイボル大臣から報告します」


 僕をゴミ呼ばわりした中年の男性が大臣というのがわかった。

 

「紛争孤児であるヴェル。中央へ行き片方の膝を付き背を丸め下を向くように」


 言われたとおりに動き、中央で止まり方膝を付いて下を向く。

 辺りがざわつくのか空気でわかった。

 マイボル大臣が慌てて喋る。


「女王陛下。勝手に動かれてはっ」

「いいのです。生き残った子に祝福のまじないをかけます。下がっていなさい」


 顔を上げる事が出来ないので僕は黙ったまま時過ぎるのをまつ。

 床を見ている視線に、白いヒールがみえた。ゆっくりと僕の体に覆い被さる女王陛下。

 甘い匂いと共に珈琲の匂いが鼻に流れ込んだ。


「ほら、ヴェルさん。また会いましたね」

「――っ」

 

 思わず叫びそうになる。聞き覚えのある声。メリーアンヌさんの声で合ったからだ。


「騙すようで御免なさいねー。ああでもしないとヴェルさんとお話するきかいなんてないんですもの。そうそうあの篭手は宝物庫に保管してあります」

「えっと、何故僕に」


 何故僕にその情報を伝えるんですか、と意味を短く伝えた。意味を汲み取ったメリーアンヌ女王は小さく僕に喋った。


「わかりません。ただ。女王としての感ですかね」 

 

 僕の体から離れると席へと戻ったメリーアンヌ女王は自らの椅子に戻ったのを音で感じた。

 直ぐにマイボル大臣が大きな声で謁見の終了を宣言した。

 外に出されると背後で兵士が大扉を閉める音が聞こえた。来た時は違う兵士が道案内をし城の外へと出された。


 最後の門の詰め所で待ってなさいと兵士に言われ、言われた通りに詰め所で待機する。

 城の中の兵士と違い詰め所の兵士は明るく、僕を丁重に持て成してくれた。


 老兵士が僕の顔を覚えており、昨日聖騎士と共に来た人物と回りに紹介し始めた。

 若い兵士や中年の兵士は僕の境遇を少し知っていて、襲われた村の生き残りである事を回りに喋り始めた。


 その言葉に感動する兵士まで居て僕は逆に困惑し始める。さらに女王陛下から見舞金を贈与されたと聞いて『よかったなー』と涙汲む者まで居た。


 暫くすると見舞金と名目の袋をもつ兵士が現れた。周りの空気が険悪になるのが感じられた。誰も何も話さす、見舞金をもった兵士は僕の座っている前のテーブルに無言で立つと、小さな皮袋を見せ付ける。他の兵士の目を気にせずに皮ひもを解き袋を逆さにした。


 テーブルの上に金貨や宝石が散らばり、僕よりも周りの兵士が慌ててこぼれた金貨、宝石を拾い集める。


「銀貨五十枚。金貨五十枚。金貨二百枚相当に換金できる宝石が七個以上だ。数が足りなければ、此処の門しか守れない兵士が隠したと思え。女王陛下からのご好意で南通りの宿ミッセルに宿泊をプレゼントされた、これが証明書だ。明日になったら何処へでも好きな所へ行け。わかったのならさっさと金を拾って城から出るんだな」


 言うだけ言うと消えていく兵士。詰め所の責任者らしき年配の兵士が僕に謝る。


「すまんの。兵士といってもワシらみたいな奴と、それを見下す奴らがおって。おい、お

めえらしっかり集めろ」


 他の兵士が「わかってますっ」と元気な声をあげ散らばったお金をかき集めてくれた。

 なるほど、兵士といっても一枚岩ではないのが感じられた。あの大臣も僕を見下していた、一方知り合った聖騎士達は良くしてくれた。

 僕が何度もお礼として、少しばかりの金貨を置いていこうとすると。首を大きく振りそれを拒む兵士達。

 

 大きな手を振り橋を渡った所で前方から馬が走ってくるのが見えた。

 僕は慌てて横に避けるも、馬上の兵士は僕が見えてないのか真っ直ぐに城へと向かったのを後ろから確認した。

 門兵が近くにより、直ぐに門が開かれ馬がその奥に消えていったのが見えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=245169854&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ