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第二十六話『王都と聖騎士の秘密』

 人、人、人。その多さに圧巻される。

 大きな門を抜け王都に付いた僕はその大きさに圧倒された。

 道幅は広いし、馬車も数台は知っている。道の両側には様々な店がならび、人々が自由に過ごしている。

 

 違うとは思うが一応聞いてみる。


「サン。一応聞いておくけど、お祭りではないよね」

「ええ、違いますっ」


 元気欲答えるサンは誇らしげである。


「これが王都です」


 サンは入り口にある一台の馬車を呼び止める。荷台は黒い箱型になっており人が運べるようになっていた。自らの篭手を店、馬車を動かす人物に離すと直ぐに僕の前へ戻ってくる。


 ぐるっと小回りした馬車が僕の前へ止まると。サンが、直ぐに扉を開け僕を中へと促す。


「凄い高そうな気がするだけど、いいの?」


 周りの馬車を見ると、荷台が薄い箱になっておりその上に数人の人間が座っては移動しているのが見えた。

 サンは得意げになり、僕に話す。僕の話を聞かないままに馬車へと押し込み、サンも中に入ってきた。


 人が歩くより遅く馬車がゆっくりと動き出す。

 四角い窓には薄い布がかけられており、中からは透けて見えるが外からは中の様子が解りにくくなっているとサンが教えてくれた。


 僕はゆっくりと動く町並みを眺めている。サンは馬車の中で小刻みに動きあちらこちらを触っていた。


「何してるのかな」

「これは失礼。いえ、自分はこんな豪華な馬車に乗るのが始めてで。色々確認を」

「前々から疑問に思っていたんだけど聖騎士って薄給」

「いえ、あの。自分はまだ一年も立ってないので力もないですし、飲食住も確保されていて生活に困る事は無いのですが、上に報告など色々あるのです。自分はまだまだなので、同期の奴はもう出世頭で……」


 なるほど、上に報告。簡単に言えばワイロな感じである。


「なので私用でこんな馬車に乗る事など不可能であって、いやーヴェルさんの警護受けてよかったです」

「ああ。そう……マリエル達も大変だな」


 僕が呟くと聞いていたのかサンが答えてくれる。


「ああ、あの人達は別です。聖騎士第七部隊といえば王都でもファンクラブが出来るほどの実力者揃いです。なんていったって全員が純粋な騎士ですからね」


 純粋? 不思議に思いサンに質問をする。


「純粋って」

「あっ。忘れて下さい」

「わかったそうするよ」


 サンとの会話を打ち切って僕は再び窓の外を眺める。僕らが乗っている馬車を指差す子供や、それを抱えて路地に入ろうとする母親。

 柄の悪そうな男にぴったりと腕を組む綺麗な女性などをゆっくりと眺めると、突然腕を引っ張られた。

 

 驚いて前を向くと。鼻息が荒いサンが近くによっている。


「なっなにっ」

「何じゃないです。そこは『教えてよ』でしょ、ヴェルさん」

「いや。僕としても言えない秘密を聞くわけにはいかないし」

「しょうがないですなーヴェルさんは――」

「君、噂話大好きでしょ……」


 サンは勝手に喋りだした。

 マリエル達第七部隊は全員が通常人の二倍から数十倍の集団。

 聖騎士は全員そうであるべきらしいが、近年は違うらしくコネで成れる奴も居るとの話。

 実際にサンは篭手の力で通常の人の数倍の力を出せるらしいが、同期にあたってはそれは怪しいとの事。

 確かめようにも聖騎士同士の私闘は禁止。訓練さえも休む事が出来るらしい。

 そして隊長、副隊長クラスの命令には絶対従わないという暗黙の掟がある。

 変な検索はそれだけで処罰の対象になり聖騎士資格を剥奪の恐れもあるとか。


 第七部隊みたいに、仲間を意識して打ち解けている部隊は無いらしく他の部隊の隊員から言わせると『俺が女だったら間違いなく第七部隊に行きたかった』まで影では囁かれている。


 僕は一通り聞いて思った事を伝える。


「大変だね」


 短い感想を聞いたサンは絶望的な顔になる。以下に自分が大変かを更に熱弁し始める。

 これ以上聞いていても仕方が無いし、馬車は大きな橋を渡ったのを窓から確認できた。


「熱弁もいいけど。もうそろそろ城じゃないかな」


 僕の答えに馬車から顔だすサン。直ぐに引っ込めると、先ほどのなよっとした顔つきとは違い意思が強そうな顔になった。


「そうですね。では行きましょうか。あっ、さっきの話は内緒ですよ」

「大丈夫ですよ」


 馬車を先に降りるサンに僕は続く。門兵がサンの篭手を見て敬礼をし、一歩横に動く。

 直ぐに詰め所から数人の兵士が走ってきてサンの前に立ち塞ぐと、同等たる態度でサンは丸められた紙を見せ付ける。

 

 書面を見る兵士が頷くと城の門は開け放たれた。


 門の内側は大きな広場になっており、遠くに更に門が見えた。

 どういう事なのか質問しようおもったが。先ほどと違いサンは真面目な顔で前へと進む。

 余計な事は僕もいわない方がいいだろう。僕たちが中に入ると大きい門は再び閉じられた。


 第二の門まで無言で歩き、第二の門を守っている門兵にまた丸められた紙を見せるサン。

 やっと城へ入れるのかと思い門の先を見ると更に中庭が見えてきた。先ほどと違うのは大きな噴水や花が植えてある所だろう。

 遠くに第三の門が見えた。

 ややため息交じりの息を吐くと。小さな声でサンが喋る。


「すみません。次で終わりですから、我々聖騎士が無駄口を叩いているとよく思わない人達が居るので」


 第三の門を抜け城の内部へ入った。

 所々に兵士が立ってその内部を守っているのが伺えた。

 サンに後を付いて周り、小さな個室へと案内された。僕を先に通し、サンが一緒に入ってくる。

 頑丈そうな木の扉を閉めると、大きなため息を吐いたサン。


「はー。相変わらず中央は息が詰まりますね。自分の案内は此処までです、恐らく別の者が後から来ると思いますが――」


 トイレの場所、水差しの場所、そして部屋から逃げれない事なども序に教えてくれた。

 一通り説明してくれた後に篭手を見せる敬礼をしてくれた。


「ヴェルさんもどうですか、その篭手似合ってますよ」

「え。僕が、いやでも聖騎士ではないし……」

「なるほど、では自分の篭手に篭手を合わせてあわせて下さい」


 言われた通りに篭手の甲と僕の篭手の甲を合わせた。

 カツン、と小さな音を立て離れる。


「聖騎士同士の挨拶です。信頼や又会いましょうなど意味合いは色々ありますが、それでは」


 短い挨拶と共に部屋から出て行ったサン。

 急に部屋が静かに感じられた。窓からは中庭に幾つもの城門、川があり。その先に城下町が見える。

 僕はやけに豪華な椅子へと座ると、その瞳をゆっくりと閉じた。 

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