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第十三話『戦闘処理』

 ファーが着ていた青いマントで体を隠さ、れぐるぐる巻きにされたフラン。口にすら布を詰め喋らないように脱衣場に転がされている。

 僕はというと半裸であった為に同じく青いマント、こちらはマリエルが来ていた奴で体を隠しつつ正座をしていた。隣ではマリエルも正座をしている。

 

 ファーが笑顔でいるのに周りの空気が冷たい。ミントが着替えが終わったのかパタパタと走ってくる。

 ファーの顔を見ると一歩退くミント。


「ふええ。ファーちゃん、怖い」

「怖い。じゃありませんよ」


 笑顔のまま怒る姿に僕もマリエルもビクっとなる。

 ピンチを助けて貰ったのは嬉しいが何故二人が此処にいるのかを聞いてい見る。もちろん小さく手を上げての事だ。


「ええ、私はミントにヴェルさんがお風呂に行くと言う事で、万が一の事を考えミントを呼び護衛に走らせました」

「うん。ミント護衛ー」

「ミント、少しだけ黙っていてね」


 有無を言わさず言うファーに、ミントは自らの口に両手を当て喋らないポーズをアピールしている。


「ですが、思ったのです。このお風呂場は混浴、護衛といっても男女が一緒に入るというのは余り好ましくありません」

「えーでも、フレイミンちゃんと知らない男の人は一緒に入っていたよー」


 ミントの言葉にファーの口が止まる。


「フレイミンって、何処のフレイミン?」

「フレイミンちゃんはフレイミンちゃんだよ。隊列するとミントの斜め後ろにいる――あっ、ファーちゃんには内緒だった……」

「そ、そう――」


 ファーがため息を付く。段々と笑顔が沈んでいるのが周りの空気でわかる。


「マリエル隊長はしってましたか」


 隣でマリエルが小さく口を開き弁解をはじめた。


「え、ま、まぁ。彼女に恋人が出来たってぐらいは……」

「まぁいいでしょう。責務され果たしていれば。で。話を戻します。ヴェルさんとミントが一緒に入り、なんらかの事が起こってからは遅いので注意もしくは確認する為に私は此処に来ました」


 ファーとマリエルの顔を交互にみる、マリエルもうんうんと大きく頷いている。


「あ、私もまさかとおもってファーの後を追ったの」


 こちらはマリエルである。ファーはマリエルが喋り終わったのを確認して口を開いた。


「所が付く直前に大きな音に水しぶき、さらにはミントの叫び声にちらりと見えたフランの影。私達は急いで助けに来た所です」

「あ、ありがとう」


 お礼を言っておかなくては――。しかし空気がやはり重たい。


「しかしです。ヴェルさんのその篭手に、マリエル隊長のヴェルさんの篭手を見ても驚かない顔。そして、ヴェルさんを狙うフラン、解らない事が多すぎます。なぜ黙っていたのです」


 自分が襲われる理由。それは僕も知りたい、そもそも篭手が無かったら村も平気だったのではないか? 篭手なんてさっさと何処かに捨てれば良かったんじゃ。いや、村唯一の祭具をそう簡単には捨てれないか。

 僕が物思いにふけていると、ファーの質問はさらに続いた。

 

「だんまりですか。ええ、そうですか。隊長は、いえ、マリエルは何時も何時も勝手に先走る、もう一兵じゃないんですから隊長としての自覚をですね」


 隣ではマリエルが小さくなっていくのが解る。直ぐに矛先が僕へと向かった。


「それに。貴方もですヴェルさん。その篭手が狙われてる成らば何故先に言わないのです、私だって鬼じゃありません。そこのフランに対する仕打ちを全員にするわけじゃありません」

「ごめん」

「ファー。私からもごめんなさい。此処まで大きくなるとは思ってなかったの、ファーに心配事ばかりさせてるから私も出来るだけ揉め事はさけようとおもって――」


 もう一度、素直に謝る。マリエルもファーの事を心配してとの事だったのだ、と謝りはじめる。

 ファーも自分自身を思っての事と解り。微笑みながらも少し照れているような顔つきになった。虚を付かれ、


「私も言いすぎました。わ、解ってくれればいいれふ」


 と喋る。本当は、「解ってくれれば良いんです」と言おうとしたのだろうミントがファーの背後に回り口を強引に広げているからだ。


「ふぁーちゃん。こわーい。にっこにこー」


 その顔を見て思わずマリエルが笑い出す。


「いや。ごめん、怒られてるのは解っているんだけどその顔が――」

「みふほっ」

「ふええ。おこっちゃやだー」


 その様子をみてはマリエルは笑いだす。つぼに入ったのかお腹を押さえ始めた。

 ミントを背中から剥ぎ取りため息を付くファー。その顔は最初の静かな怒りよりは諦めの微笑みに近い。


「もういいです。起こってしまった事に対してアレやコレを言っても仕方がないので。それよりもフラン。この四年間何をしていたのかは王宮へ戻って尋問させてもらいます。それからヴェルさん。貴方にも色々とお聞きしたい事があるので」

「なるほどねぇ。とのがたの事は色々聞きたいけどウチの尋問、それはこまるわねぇ」


 全員が声のあった一点をみる、あれだけ拘束していたフランが縄を解き立ち上がっているからだ。


「な、フランっ」


 ファーが叫ぶと「ばいばいー」と手を振り、最後に唇を鳴らして愛想を振りまき、戸を蹴破り逃げた。直ぐに追いかけるも、ほぼ垂直な崖を器用にジャンプし消えていった。

 逃げられた、率直な意見である。


「やられた……。捕縛ロープなんですけど」


 先ほどまでフランが居た場所を見ると、所々焼け焦げた後が見えるロープが散らばっていた。逃げた先を見ると崖の下に青いマントが落ちてある。

 という事はバスタオル一枚で逃げたのか、なんというかアレか痴女なのか、と思ってしまう。


 その切れ端を持って引っ張ると僕の手の中でロープが落ちていく。

 振り返るとファーとマリエルが僕を凝視している。


「ヴェルにい、はどれだけ強いの」


 ミントは手は不思議そうな顔をしているし、二人の視線が怖い。


「確かに、フランに狙われる以上なんらかの力はあるはずです。わかりましたいい機会ですので。ヴェルさんの実力を見せてもらいましょう」

「え」


 僕が驚きの声をあげる、隣のマリエルをみる。マリエルも腕を組み「そうよね」と僕を見てきた。


「ともあれ、今は戻りましょう。それにミントとヴェルの怪我の具合も一応確認しておきたいので」


 ファーの一言で解散となり、すっかり湯冷めした体を軽く洗い流す。他の三人は外で待ってもらっていた。

 胸の傷を見ると傷痕がうっすらと残っているが先ほどまで穴が開いていたとは思えない。

 篭手と交互に見てため息を付く。


「人間離れしてきたな――」


 誰にも聞こえないように僕は呟いた。

 

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