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通帳主のお姉さん
通帳主のお姉さんは、
ちょー優しかった。
「あの私、ほ、本当にごめっ、ごごごごめんなさいでした――ッ!」
「あらまぁー。こーんな可愛らしいお嬢さんが犯人だなんてー。いいえ、お気になさらないで。あなたのような可愛い子に罪なんてないのだからー」
入江の罪をかき消す方法。
それは入江が『社会的な』犯罪者となるのを未然に防ぐこと。
名雪は、入江とともに被害者のもとを訪れ、入江が盗んだ通帳を返した後、頭を下げたまま一つ差し出がましいお願いをした。
――あなたの指示で警察の捜査を中止させてほしい。
と。
失ったはずの通帳は探してみりゃタンスの引き出しにありました。
全部私の勘違いでした。だからもう犯人の捜索はいいです。大丈夫です――と。
そう、警察の人に告げてほしいとお願いした。
そんなちょーお騒がせで、何のメリットもないマヌケ役を引き受けてほしいと、彼は図々しくも頼んだ。
そして、
「もちろんいいわよ」
優しい優しいお姉さんは、快く承諾してくれた。
「た・だ・し」
とある交換条件とともに――。