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力の限り入江さん  作者: 渡邉鍋大
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犯人さん


『ニュースです。昨夜十一時頃。貝原かいはら市内の住宅に強盗が押し入り、現金およそ八千万円の入った通帳を盗んで逃走しました。警察は住宅周辺、あるいは住宅内部に設置された防犯カメラの映像をもとに、犯人の特定に急いでいます』


 名雪が自宅のソファに寝転がって、うっかり消し忘れていたテレビの音声を流し聞きしていると――その背後で彼の妹、小野櫻子おの さくらこが何気ない調子で言った。


「あれ? これってうちの近くじゃん。なになに? おぉ強盗が出たって? いやー最近物騒ねー。ほら、うちも気を付けないとね、お兄ちゃん」

「ん~。そだね~」


 名雪はうつ伏せのままぐぅたらしていたので、テレビの映像にはまったく気づいていない。音声も一応は聴いているが、頭に入ってはなかった。


「ムッ」


 一方、彼の妹はしっかり者だ。まだ小学六年生ながら、見た目もチャラチャラ伸ばしちゃいないショートカットに、真面目そうな顔だち――。

 妹は兄貴のぐぅたら具合にいい加減嫌気がさし(または兄貴の投げやりな受け答えに腹を立て)ソファの上から兄貴の両頬をグッと掴んで、顔を強引にテレビ画面に向けた。


「ど~う? ほら~。う・ち・の・ち・か・く・で危ないよねぇー、お兄ちゃん!」

「あっ、はい。そうでありますね」


 誤解のないよう付け加えておくと、この兄妹に明確な力関係はない。

 しかし、櫻子が怒っているときは別だ。名雪はさっとと身を起こし、ニュース画面に今度は自主的に目を向けた。


「っ!」


 ――思わず、ギョッとした。


 我が家のテレビ画面に映し出されているのが、いつぞやの豪邸だったからだ。


「私、この家知ってる。アレでしょ、お兄ちゃんがよくエッチな漫画を買ってくる本屋の近くでしょ。すっごい大きいから、学校でも有名なのよ」

「……ん、あ、あぁそうね、俺も知ってるよ」

「えっ? そ、そうなの――って、それもそっか。お兄ちゃんよく通るもんね、あそこらへん」

「あぁ……うん、あっいや、それもそうなんだけど……」

「ん、そうなんだけど?」

「いや……まぁ……」


 名雪は、「えっ、なになに?」と、キョトンと首を傾げる妹にいらぬ心配をかけぬよう、心の中で言葉を継いだ。

 あの、お兄ちゃんさ実は、実はね……、

 その、『犯人さんの方と』お知り合いなんだよね……。



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