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力の限り入江さん  作者: 渡邉鍋大
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大ホームラン


 目の前には、小さなお尻。

 真下にはパンティー。

 それも、自分の。


「……」


 風呂場から自室に戻ると、部屋の中が荒らされていた。

 

 犯人は誰だ?

 

 あいつだ。

 

 あの、ケツだ。


 彼の視線の先、『何故か』開いている窓から差し込む、淡い月明かりに照らされたケツが、彼の目の前でフリフリっと軽妙な上下運動を繰り返す。

 現在中学一年。そして明日にめでたく二年生へと進級する小野名雪おの なゆきは、その様子にすーと目を細め、ふむふむと顎に手を添えた。


 ……なるほど。俺の前に見えるケツの大半が黒いのは、ケツの主がまるで怪人ショッカーみたいな恰好をしているからか。

 ケツにおかしな金色が混ざっているのも、そいつの髪が金色だから。

 そして、そのケツがやけに小さく、いい形をしているのも――そいつが俺と同い年くらいの、とてもスタイルの良い金髪ロング髪な女の子だから。

 

 彼はそういった結論を素早く導いて、

 シュシュッと。

 ゴキブリ染みた動きで床を平行移動。

 まったく音を立てずにケツの主に迫る。

 予定の位置で腰を浮かせ、ズン! と、彼女の背後をとった。

 後は締め。彼はさながら忍が印を結ぶような感じで、おおよそ無駄と言える動作も交えながら――最後に両人差し指を天高く突き上げた。


 カンチョ―のポーズである。


 で、カンチョ―のポーズから何をするのかといえば、


「てい!」


 それはもう、

 カンチョ―しかないのである。


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