第1章「転入生」(5)
「オマエガ・・・トウヤマ・・・キキ・・・ダナ」
「え・・・っ!?」
ロボットは電子音が混ざった人口音声で確かに私の名前・・・「とうやまきき」と言った。
このロボットが何者かすらわからない状況に私のことを知っているのかという謎が追加され、謎が更に深まった。
「な・・・なんで・・・私の名前を・・・っ?!あんた誰よ!」
私はよくわからない恐怖で震えながらロボットに質問した。
「オマエガ、シルヒツヨウハナイ。イマカラオマエノニクタイヲイタダクカラナ」
「私の肉体を乗っ取る?!」
するとロボットは勢い良く私に急接近してきた。
まだ状況の理解はできてないが、ロボットの言っていることが本当だと、少なくともこれから私の身体はこのロボットのモノとなってしまう。
私の心の中の恐怖のパラメーターは最高潮を迎えた。
「いや・・・っ!いやぁぁぁぁぁぁあああああああっ!!!」
私は目を閉じ迫り来るロボットに怯え、無意識に身を固めていた。
あと数秒で私は私でなくなってしまう。つまり東山希々の死を意味している。
それにしても今日は本当に夢を見ているのような日だ。
転入生が4人も来て、その内の2人と知り合えてこれから友達になれるかもしれないと思ったら、謎のロボットに私の身体を乗っ取りにくるという超展開。
夢なら早く覚めてほしい。
しかし、もしこれが夢でなく現実のことであったら、今日は私の命日なのだろう。
私の人生が終わるまで、3、2、1・・・と勝手に心の中でカウントダウンをしていた。
あぁ・・・悔いだらけの人生だったな。
私は死を覚悟した。
ガンッ
すると甲高い金属音が木霊した。
しかし、私は生きている。
ロボットが私に接触した感覚はなかったので恐る恐る目を開けた。
ゆっくりと視界が開いていくと、私を更に混沌の世界へ誘う光景がそこにあった。
「・・・・・・?太浪さんなの?」
尻込みしている私の真上にはロボットの両腕を押さえて動きを止めている太浪さんがいた。
確かにそこにいるのは、太浪さんだった。
しかし、その姿は赤と白を基調としたスーツに背中には複翼を簡略化したような大きなメカが装着されており、さっきまでの制服姿とは大きく異なっていた。
「AIs・・・まさかもうこんなところまでに来ていたとはね・・・!」
「・・・!オマエハ・・・マサカ・・・!?」
「そのまさかですよ!私たちはあなたたちから東山さんを守るためにアメリカから遥遥日本にやってきた特殊武装部隊ARMOR・ARMYよ!」
「クソッ・・・オソカッタカ!」
私は思わぬ形で太浪さんたちが日本へやってきた理由を知ってしまった。
「エーアイエス・・・?アーマーアーミー・・・?私を・・・守るため?」
頭にクエスチョンマークが浮かび続けている私に、太浪さんはロボットの動きを抑えつつ優しい顔で私の顔を見てこう言った。
「大丈夫よ、東山さん。あなたは絶対に私たちが守ってみせますから」