第1章「転入生」(4)
「ここが多目的ホールです。学年集会は大抵ここでやったりします」
「へぇ・・・広いですね!」
「そういえば、体育館はどこから行けるのですか?」
「体育館はですね・・・」
周りの視線が集まる中、廊下を歩き学校を散策している私と太浪さんたち。
すれ違う人はその度に太浪さんの方を見て、可愛い子ね。と呟いていた。やはり太浪さんは可愛いさは半端ないのだ。
そんな子と今一緒に歩いているのはちょっと誇らしかった。私は無意識に少しにやりとして口を歪ませいていた。
「ふふ・・・」
私はつい邪な笑い声が漏れてしまった。
「転入生の私と一緒にいて嬉しい?」
「あ・・・、いえ確かに嬉しいですけど、何も邪なことは・・・」
「希々、あんた何に考えてたん?」
「え・・・いやぁ、何も」
「ふぅん・・・。まぁええわ。ねぇ、太浪さんと加藤さんはなんでアメリカからここに引越ししてきたん?」
瑠琉は唐突に何気なく馴れ馴れしそうに2人に問いかけた。
「ちょっと、瑠瑠!まだ親しくなったないのに馴れ馴れしく話しかけない!」
「いいの。むしろ馴れ馴れしくして欲しいわ」
「僕の方も同じくですよ」
「そうですか・・・」
「それで、私たちがアメリカからここに転入してきたわけですよね・・・」
太浪さんは少し真面目な表情になり、声を詰まらせた。
「話辛いん?」
瑠琉は再び2人に問いかけた。
「・・・」
「・・・」
ふと私は加藤さんの方を向いたが彼女もまた真面目な表情で黙っていた。
太浪さんたちはたまたま集団でアメリカから転入してきたのだろうと思っていたが、転入して来た理由について訊くと黙ってしまったので私は2人を怪しく感じてしまった。
それからしばらく沈黙したまま散策していき、校舎裏の庭に着いていた。
「えーと・・・、ここが校舎裏です」
「せやで!ここは運動部の練習・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
太浪さんと加藤さんは何か言いたげそうではあったが沈黙し続けていた。確実に気まずい雰囲気になっている。
「あの・・・さっきの瑠琉からの質問は気にしなくていいですよ」
「えーと・・・違うのですよ。実はね・・・」
ちょっと困惑した顔ではあったが、太浪さんはようやく口を開いてくれた。
「ん?」
すると突然は瑠琉は、太浪さんの会話を遮った。
「ん?じゃないでしょ!気まずい雰囲気になった切欠はあんたでしょ!」
「いや、そうじゃなくて、何か不気味な音聞こえへん?」
「え・・・!?」
「音・・・っ!」
「何よ?不気味な音って?」
「何やろ・・・上手くは表現できないけど、モスキート音をより鈍くした重々しいモーター音みたいなやつ」
私が耳を澄ましたら確かにそのような音が聞こえた。ただここは千里ニュータウンだし、隣町に空港があるから高度を下げて飛んでいる旅客機のエンジン音だと思った。
「ここから空港近いしどうせ飛行機のエンジンの音でしょ」
私は呆れた口調で、そう瑠琉に言い返した。
しかし、その時だった。
「・・・!?おい!希々後ろ!!」
「う、後ろ?!」
流石に急に声を荒げた瑠琉に驚いて私は後ろの方を振り向いた。
次の瞬間、私の目に映った光景に驚いた。
「・・・っ?!」
そこにいたのは、銃や剣などの多数の武装を身に纏っている、日曜日の夕方に放送しているアニメに出てきそうな約2mのホワイトカラーのロボットが一体私の目の前に浮かんでいた。
私は気が付いたら尻込みしていて、驚きのあまり何も言葉が出なかった。