第3章「土曜日」(4)
「そうだったのですか・・・」
「シャロンはロサンゼルスでも特に貧困層の人が多く集まるスラム街で生まれ、5歳の時に両親を失い天涯孤独のみで彷徨っていたところを偶然通り掛かったアリシアと出会い、その後いろいろあって居候という形でアリシアと一緒に暮らすことになったの」
「そ、壮絶な人生を歩んでたのですね・・・」
私が思ってた以上に大変な人生を彼女が送ってきたかと思うと、何故か他人であるはずの私も辛い気持ちになっていた。
「それにアリシアもね、とても裕福な家庭に生まれたとはいえ、両親が多忙で中々家族で過ごすことが殆どなくて兄妹も友達もいなかったからまた彼女も孤独だったの。だから全く違う家庭出身の2人だけど、似たような想いを抱いてたの」
東さんは少し曇った声だった。
私も改めて、自分自身がどれだけ幸せな境遇で育ったかを実感した。
「おまたせ!ちょっと欲しい本を探していたら遅くなっちゃって」
アリシアさんたちが、会計を済ませ店内の端にいる私たちのほうに駆け寄ってきた。
「イヤぁ、どうシテも読みたかった漫画があってサー」
シャロンさんも漫画の本が入ったレジ袋を左手で持ちながらやってきた。
「いえいえ、楽しんでいただけたのなら、なによりです」
2人の出自について知ってしまったからか、私は少し素っ気無い声で2人に返事した。
「あ!あとそれと、お昼ごはんはどうします?」
時刻はもうすぐお昼の12時になろうとしていたので、私は続けて2人に質問することにした。
「そうね・・・そろそろ皆でフードコートに行こうかしら?」
アリシアさんは、自身の銀色でしなやかな髪を右手の人差し指でいじりながら、軽い感じで答えた。
私や東さん他全員も首を縦に振ったので、満場一致でフードコートに行くことになった。
「というわけで、行きますかー!」
両手を組んで手を伸ばしてから、少し間をおいてアリシアさんは元気な声でそう言った。
「元気ですね、アリシアさん」
朝からずっと明るいテンションを維持しているアリシアさんに、私はつい言ってしまった。
「まぁね!実はこんなに沢山の人と遊びに行くの初めてだから」
「・・・・・・」
「それより、希々も東と仲良くなれそう?東は昔、あなたに命を助けてられてからずっとあなたと友達になりたがっていたから」
「え?!」