第3章「土曜日」(3)
とりあえず、アリシアさんに連れて行かれながら、ショッピングモールに入った私たち。
休日なのでどこも学生やカップル、家族連れで賑っており、理由もなくファッションブランド店や雑貨店などを巡っていった。
そして昨日の事が夢だったかのように、東さんたちも呑気であった。本当にこんな感じで大丈夫なのかなと私は心の中でぼやいていた。
そんな私を尻目に、アリシアさんは無邪気な子供のように、フロア内を満面の笑みで駆け巡っていた。
「あ!この漫画、前々から日本語版で欲しかったシリーズだわ!」
「本当ダー!ネー、アリシア、コレ買って後で一緒に読まナイ?」
「もちろんよ!」
時刻は午前11時半を過ぎたところ。私たちは3階フロアにある書店に来ていた。
アリシアさんとシャロンさんが店内の漫画コーナーで気になっていた少年漫画の単行本を見つけて、わいわいと盛り上がっていた。
出会ってから1日も経っていないから、2人のことはよくわからないけど、とても仲良しそうに見えた。
「あの2人、とても仲良しそうに見えますか?」
楽しそうにしている2人を書店の端っこから、ぼんやり見つめていた私に東さんが声を掛ける。
「はい、そうですね・・・本当は違うのですか?」
「いえ、本当にあの2人はとても仲良しですよ。あの2人は親友と言うよりも、家族、姉妹・・・いえ2人で1人のような存在ですから」
「2人で1人ですか」
東さんは2人の関係を分かりやすく説明してくれたが、2人で1人というぐらいの仲の良さの表現には少し衝撃を受けてしまった。
あの2人には失礼かも知れないけど、傍から見れば気持ち悪いくらいの仲良さなのかなと考えてしまった。
「はい。アリシアとシャロンは今から10年くらい前に出会ったのですけど、2人の立場は間逆の関係だったの」
「間逆?」
「えぇ・・・アリシアが大企業のCEOの娘と言うのは、昨日聞きましたですよね?」
「はい」
「アリシアがとても裕福な家庭出身であったのに対して、シャロンはアメリカでも最も貧困な家庭で生まれ育ったの」
「えっ?」
私は衝撃を受けた。ルックスがおおよその日本人が考えるようなテンプレートなアメリカ人女性だったので、彼女もアリシアさんと同じような家庭出身と勝手に思い込んでいたからだ。