第2章「目的」(1)
時刻はすでに16時半を過ぎていた。
アリシアさんは自分の席に戻りそっと座ると、私に向けて語り始める。
「とりあえず大まかなことを希々さんも東たちから聞いたと思うし、まずはAIsが一体何者かを説明しないとね」
「はい」
私が一番気になっていたことだ。彼らが一体どういう経緯で生まれたのだろうか…もしかしてやばそうなテロリストなのかもしれないけど。
「AIsは元々、ユナイテッド・ジェネラル・テクノ社というアメリカにあった軍需企業で開発が進められていたAIを搭載した自立型兵器だったの」
アメリカの軍需企業でしたか。なんか説得力を感じる。
ただここで疑問となることが一点。
「あった?」
「そう。ユナイテッド・ジェネラル・テクノ社は慢性的な赤字により3年前に経営破綻で倒産したの。しかし、工場跡に廃棄されていたロボットが自動的に起動し、勝手に自らを量産していってAIsという集団になったの」
「怖い…」
ちゃんと全部解体してから撤退してほしいものだ。ユナイテッド・ジェネラル・テクノ社さんよ。
「そして、彼らは自分達を都合で廃棄した人間という存在を憎み支配による報復という極端な結論に至り、そのために身体能力と知力が平均的な人間のサンプル1人を鹵獲しそこから人間そのものを研究する戦略に出たわけよ」
「それに選ばれたのが…」
「希々さん、あなたって訳」
黒幕となる人がいるわけではなく、暴走したAI兵器たちが勝手に行動していたのか。
「そっか。はぁ、何か今更だけどこれからの事考えると気が重くなる…」
私は肩の力が抜けてしまった。
絶望とか恐怖という感情ではないが、これからずっとAI兵器たちに追い回される面倒事が続くと思うとしんどくなるわ。
まぁ太浪さんたちが守ってくれるなら、まぁ一安心…
あ!
「そ、そういえば、あなたたちARMOR・ARMYは一体何者なのですか!」
最も大事なことを忘れていた。
ARMOR・ARMYは一体、どこの誰が何でAIsに対抗しようとしたのか。
それは私が一番知っておかないといけないことだった。
するとアリシアさんは少し高飛車に思える表情を一切変えることなく、再び語りだす。
「RF社って知ってるよね」
「RF社って、あのRF社ですか!?」
「そうよ」
RF社。
その単語を聞いて知らないわけがなかった。
アメリカ西海岸を拠点とし、次世代旅客機や船舶を建造する世界一の重工企業。
「もしかして、ARMOR・ARMYはRF社に何か関係あるのですか?」
「その通り。ARMOR・ARMYはRF社がウラで進めている一大事業よ」
「!?」