第1章「転入生」(9)
それから、なんとか次の授業に間に合った私はこのあと15時30分の終礼のホームルームまで太浪さんと一切喋ることはなかった。
そして、終礼後30分経った16時過ぎ。他のクラスメイトたちは部活に行ったり、帰宅したりして私たちの教室には殆どいなかった。
私と太浪さんは加藤さんがこの教室に来るのを待っているのだが・・・。
「で、なんで瑠琉もいるわけ?」
本来なら関係はない瑠琉もここで加藤さんを待っていた。
「そうですよ。そもそもあなたは巻き込まれるはずのない人なのに・・・」
太浪さんも不安そうな表情で瑠琉に言った。
「せやな・・・たしかにウチはそのAIsっちゅうやつとは無縁や。しかし、親友が狙われているのに何もできないのが嫌なんや」
「だけど、私のせいで瑠琉がAIsによって命を落とす可能性もないのよ」
「希々・・・ウチはあんたのそういう他人想いなとこが大好きや・・・だからどうしてもウチだけじっとしているのが・・・」
「他人想い・・・ですか・・・」
「太浪さん?」
「わかったわ、白石さん。あとでリーダーに相談してみるわ。とりあえず今は一緒に加藤さんを待ちましょう」
意外にも太浪さんの方から瑠琉に相談の話を持ち掛けた。ところで・・・。
「リーダーって?」
太浪さんの会話の中から突然出てきた「リーダー」という単語が気になったので訊いてみた。
「あ、私たちのチームのリーダーのことよ。実は私たちARMOR・ARMYは他にもチームがいて、日本に来た私たちはその中のチームAに属するの」
「残り2人のメンバーのうちのどっちか1人なのですか?」
「そうよ」
「ちなみにARMOR・ARMYって他に何人くらいいるのですか?」
「そうね・・・今のところ私たちも含めてざっと40人くらい」
「結構、多いですね・・・」
私はARMOR・ARMYはそれなりに多人数で構成されている部隊であることを知った。
ガラッ・・・
ドアが開く音がしたので振り向くと、加藤さんがようやく教室に入ってきたようだ。
「あずまさーん!鈴乃です!少しクラスメイトの方とお話していまして遅れました申し訳ございません!」
「大丈夫よ鈴、さぁ行きましょう」
もう教室には私たち以外誰もいなかったので、ドアの鍵を閉めてから残り2人に会いに向かった。
「鈴、アリシアとシャロンって何組だった?」
「はい。アリシアさんが1組、シャロンさんが3組です」
太浪さんは加藤さんに残り2人がどの教室にいるか小声で聞いていた。どうやら残り2人のメンバーの名前はアリシアさんとシャロンさんらしい。
そして、どちらか1人がチームAのリーダーなのか。
その時だった。
「「「きゃあぁぁぁぁぁ!!」」」
何人かの悲鳴のようなものがこの先の廊下から聞こえた。まさかAIs・・・!?
では無さそうだった。
取り巻きのような女子生徒たちに囲まれている1人の金髪のスタイルの良い女子高生がそこにいた。
「いきなりモテモテだね~シャロン」
「全く・・・困ったものヨ!Help me アズマ!」
「シャロンさん1組に行きますよ!早く来てください!」
どうやら残り2人のメンバーのうちの1人であるシャロンさんらしい。
「わかってるわヨ!あれ・・・もしかしてその子がキキ?」
「え・・・?あ、はい!」