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前世還しのカーヴァンクル  作者: 稲葉めと
1章 二匹の龍が出会うまで
6/23

05 囚われの水龍

 巨大な水龍は俺の言葉にひとつ頷いて答える。


『そうじゃな、この身体から消えれば問題ない』

「……できるかもしれない」

『なに?』

「その魔法は身体に直接刻まれてるんだよな」

『そうじゃ、わらわの逆鱗に刻まれておる。まさか削るとは言うまいな、ここは急所なんじゃぞ』



 それは初耳だが、それを知っても俺にはどうにもできないだろう。

 文字を身体に刻むことで掛かる契約の魔法。

 魔法を使った本人でなければ解除できないがすでに他界済み。

 それでも、俺の能力なら解除、いや誤魔化すことができるんじゃないか?

|《前世還し》は姿を誤魔化すわけじゃない、前世に戻すスキルだ。

 前世の身体にまでその魔法で文字が刻まれるとは考えにくい、と思う。

 魂そのものに刻まれてるとお手上げなんだが。



「俺の能力で別の姿に変われば、その魔法を誤魔化せるかもしれない」

『変化の術の類か? 姿を誤魔化したところで魔法の効力は消えぬぞ』

「いや、詳しい話は省くけどたぶん大丈夫だ」

『……そうか。ダメで元々じゃな、試してみてくれぬか?』

「自分で言うのもなんだが、いいのか? 助かりたいからって適当言ってるかもしれないぞ?」



 俺の|《前世還し》は相手が余りに強力な場合、本人に承諾を得るか弱らせないと使えない。

 先ほどのオオカミたちならともかく、この水龍にあっさり使えるとは思えなかった。

 だからすんなり受け入れてくれるのはありがたいんだが、急に現れた全裸の不審者の言葉をなぜ信じてくれるのか。

 信じてもらえないと俺が狼か水龍の餌食になってしまうのだけど。



『ここに縛り付けられて50年じゃ。さすがにもう飽いた』



 そっか、そうだよな。

 家の中に50年、誰とも会わず、話さず引きこもっていたら俺だって通りすがりの誰かのいう事を信じたくなるかもしれない。

 だって漫画もネットもなさそうじゃん。それで引きこもっても楽しいことなさそうだし。



「おっけー任せてくれ。ただ、ひとつだけ謝らせてくれ」

『なんじゃ、ここへ来て急に謝罪など怖いじゃろう』

「いや、変身する姿は選べないんだよ。あともしかしたらお前には使えないかも」



 そもそもまだ前世の確認をしていなかった。

 いきなりはじめから龍として生まれるなんてそうそうないとは思うけど。



『ああ、そんなことか。気にはせん』

「いいのか? もしかしたらありんこになっちまうかもしれないけど」

『……そ、その時はその時じゃな』



 若干どもっているが、それでも水龍はしっかりとうなずいてくれた。

 それなら話は早いと俺は視界を切り替える。

 世界が多重にぶれ、水龍の前世と転生回数が目の前に表示される。

 さてさてどんなのが。



 確認しようとしたところで俺は猛烈な吐き気に襲われた。

 別に前世が気持ち悪い生き物だったわけじゃない。

 むしろなんなのかわからない。

 何十もの生き物が高速で切り替わり重なって見えている。

 ちょっとまて、なんだよこれ。どれだけ転生してきてるんだこいつは!

 うまく制御できない前世視認を一端放置し、転生回数に目を向ける。


「63回!?」

『な、なんじゃ突然大声をあげおって』

「あ、あぁ、ごめん」


 びっくり顔の水龍に謝りつつ、あらためて数字をみる。

 63。間違いなくそう書かれている。

 今日まで転生回数の多いやつは何度か見てきたが、それでも一桁だった。

 二桁なんていると思っていなかったし、前世視認が落ち着かないのは慣れないことをしたせいでパニックを起こしたようなものだろう。

 とはいえ、だ。63もあるのに1つずつ確認していては時間がもったいない。



 えーと、俺が知ってる種族に限定して表示とかできないかな。

 視界では相変わらず水龍に重なるようにして何十もの姿が切り替わっていく。

 だめだ、このままじゃろくに確認もできやしない。



 そこで例の鏡を見てみることにした。

 水龍の前世を見たいと思いながら鏡面にふれると、まるで前世のスマホやPCで画像の一覧を表示したときのように水龍の前世が表示される。

 べ、便利だ。



 ざーっと目を通す。63ともなると色々とあり興味深い。

 その中のひとつに俺は目を奪われる、そのまま水龍の頭にタッチした。

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