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生命の行方・第二部  作者: 杉谷ゆぬの(果樹)
第10章・マリアと言う存在
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真実を知るマリア

「本来ならこの話を俺からするのは間違ってると思う。でも、今この状況じゃ、そうもいってられないから……」

これは推測にすぎないけど……状況は切羽詰まっている。

ユキちゃんを失った組織はなにか仕掛けてくる可能性が高い。

「うん、わかってる。だって私が聞いたんだもん。それが……私にとってつらいことだったとしても……ちゃんと受け入れるよ」

「……ありがとう、マリアちゃん」


「マリアちゃんが狙われる理由はね……、君がナハネ族という少数民族だからなんだ」

「……ナハネ族?」

マリアちゃんは聞いたことがないようだ。難しい顔をして、首を傾げている。

「そう、ナハネ族。この、ナハネ族という民族はね、普通の人たちに比べて運動能力や自己治癒力が優れているんだ」

「そうなんだー……。あっ、そっか。だから転んで擦りむいてもすぐに治るし、体育の成績もいいのか」

「そういうことだね。今、マリアちゃんを狙っている組織は、ナハネ族の能力の高さを利用しようとしてるんだ」

マリアちゃんは意外とすんなりナハネ族の話を受け入れてくれた。

「なるほど、そうなんだ……。でもどうして私なのかな?他にはいないの?」

「……実はね、ナハネ族は約10年前に町を襲撃されて、ほとんどいないんだ。生き残っているのは両手で数えられるくらいだと思う」

「その、両手で数えられるくらいの中から私が選ばれちゃったわけか……でも、どうして私は今までその事を知らなかったんだろう?教えてくれてもよかったのに」

「隠しておかなきゃいけない理由があったんだよ」

そう。本来ならば一生知ることはなかったかもしれない。それだけ重要で重大な真実。

「私に隠しておかなきゃいけない理由……?」

マリアちゃんは無意識に気づいているはずだ。でなきゃ、ここにきた直後に俺に言ったあの言葉……出てくるはずがない。

「マリアちゃんはナハネ族だ。……でも、ご両親はそうじゃない」

「……え?」

この言葉の意味にすぐ気づくはずだ。

「……うそ、だってウィン先生……!!」

俺はマリアちゃんの顔をきちんと見られなかった。泣きそうな声で、俺を呼ぶ。

「俺は……知ってたんだ。でも、嘘をついた」

「……ほんとう、なんだ……私、お母さんやお父さん、お姉ちゃんと……ほんとうの……家族じゃない……」

「……ごめん……」

「……ウィン先生、なんで、先生はその事知ってるの?」

声から感情は窺えない。俺は、覚悟を決めてマリアちゃんの顔を見た。マリアちゃんは涙を堪え、なるべく冷静にしゃべっているんだというのがわかった。

「……俺は、マリアちゃんがこっちに来る直前に、この話をエリーさんから聞いたんだ。エリーさんが君を俺たちのところに向かわせたのは、俺たちがナハネ族を守ってくれると思ったからだと思う」

「……じゃあ、お母さんたちはどうなっちゃうの?ずっと、私と一緒に暮らしてきてたんだから、組織に狙われちゃうんじゃ……!」

「マリアちゃん、覚えてないか?マサヤとこっちに来る途中に襲われただろう?」

「あっ!私のこと、相手はもう知ってるんだ……。だからお母さんたちを襲うことはない……」

「ユキちゃんを利用してマリアちゃんをさらおうとしてたのもその組織だからね」

「……ねえ、ウィン先生、ナハネ族を守ってくれるって……他にもナハネ族がいるの?両手で数えられるくらいしかいないのに?」

マリアちゃんは純粋に気になったらしい。

「ここにいるナハネ族はマリアちゃんを含めて5人だ。マサヤ、ユキちゃん、トシタカ、オギノさん、それと……」

「私、か……。ウィン先生、私はこれからどうしたらいいかな……?」

「マリアちゃんは変わらないでいいんだ。ただ、なるべく一人では出歩かないでほしい。もし何かあったらすぐに助けを呼ぶんだよ」

「うん、先生……わかった」

マリアちゃんは頷いた。と、同時に堪えきれなくなった涙があふれた。

表情にあどけなさは残っているものの、背が高く、普段年相応に見られないであろう13歳の少女はポロポロと涙をこぼす。

「……っ、先生っ……!なんで、私なの……!?私、わからないよ……!!」

きっと、彼女はわかってる。でも、納得できない。受け入れられない。

「違う……違うんだよ……本当はわかってる……。私だって……うすうすは気づいてた……お母さんたちとなんか違うって……でもね、私は何も知らないのに、どんどんまわりがグチャグチャになるの……、そんなの……嫌だよ……っ」

俺は、泣きじゃくるマリアちゃんの頭をなでる。

「……マリアちゃん、いっぺんに説明して……ゴメンね……」

「……違うの……聞いたのは私だもん……先生は、聞かれなければ言うつもりなかったんでしょ……?」

……確かに、今、こんな状況にならなければ、俺はエリーさんから聞いたことすべてを心の奥にしまっておくつもりだった。でも、そんなこと言ってももう遅い。

「先生は……優しいね……」

「俺は……優しくなんてないよ。……耐えられなかっただけだ……」

俺はこの子のために何をしてやれるだろうか。……もしかしたらただのエゴなのかもしれない。

「……マリアちゃん、俺から言うのも変な話だけど、辛かったり困ったりしたら俺に相談してくれてもいいからね。どんな些細なことでもいいから」

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