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生命の行方・第二部  作者: 杉谷ゆぬの(果樹)
第10章・マリアと言う存在
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由季の変化

マサヤは寝ていた。腕には点滴が刺さっている。顔が少し赤いので、まだ熱はありそうだ。

「先生、お兄ちゃん具合悪そう……また出直した方がいいかな……?」

ユキちゃんは心配そうにマサヤを見ている。

「いや、ユキちゃんはここにいてほしいんだ。マサヤが目を覚ましたときにきっと安心すると思うから」

「……うん、わかったよ」

ユキちゃんは小さく頷く。たぶんあまり大きく動かすと傷が痛むんだろう。

「じゃあ、私はマサヤくんの顔見られたし、みんなのところに行ってこようかな。私からもお願い、ユキちゃんはマサヤくんと一緒にいてあげて」

マリアちゃんはそう言いながら部屋を出ていく。きっと気を使ってくれたんだろう。


マリアちゃんが出ていって少し経ったあと、俺はどうしても気になったことをユキちゃんに聞いてみた。

「ユキちゃん、本当は髪を切らなくても良かったんじゃないのか?よく洗えば落ちるし」

「……あのね先生、私ね、実は……今までと違うんだよ」

「違う?」

「うん、先生の知ってる通り、もう私には兵器の能力はないし、それにね、分かりにくいんだけど……私は17歳なの」

「……ん?」

「ね?分かりにくいでしょ?」

ユキちゃんは困ったように笑う。

「精神年齢の話。今までの私は精神年齢が12歳だった。でも、今の私の精神年齢は17歳。お兄ちゃんと同じ歳だよ」

何が違うんだろう……?確かに思春期の5年間の成長は子供から大人へと変わる大切な時期だ。それが一瞬で終わったってことか???

「まあ……言わなきゃわからないけどね」

ユキちゃんはマサヤのベッドの傍らに座り、マサヤの頭を撫でる。

その姿は確かに大人びていて、17歳なのかもしれないと、俺は思った。


「……先生、お兄ちゃん起きないね」

「そうだね。いろいろ溜め込んじゃったんだろう。もう少し寝かせといてあげて。俺、戻るけど、どうする?マサヤ、しばらく起きそうにないけど」

「私、まだここにいるよ。お兄ちゃんに謝りたいの」

「うん、わかった。俺先に戻ってるから、何かあったら呼んでね」



医局に戻ると、マリアちゃんがいた。俊貴とカイもまだここにいる。

「ウィン先生!兄貴倒れたってほんとっすか!?」

「ああ、よく知ってるな」

「さっきマリアちゃんが教えてくれたっす!」

「……すまん、俺が、アイツを……雅也を、追い詰めたのかもしれない……」

「トシタカ……」

トシタカはうつむきがちにつぶやいた。

「わかってたんだ……アイツが由季を助けるために必死でもがいてたの……でも、俺はそれを否定するようなことを言っちまった……」

「気にすることないさ。だって、お前なりに考えてマサヤに声をかけたんだろ?アイツだってわかってるよ」

「それで、兄貴は!?大丈夫なんすか!?」

カイはよっぽどマサヤのことが心配らしい。

「寝てるよ。今はユキちゃんがついてる」

「ユキちゃん、首の怪我がひどくなくて良かったっす」

「ああ、俺も安心した」

ユキちゃんは治癒力が相当高いみたいだ。

「先生、兄貴のお見舞い行ってもいいっすか?」

「もしかしたらまだ寝てるかもしれないけどな、それでも良ければ行ってこいよ」

「ハイっす!トシさんも一緒に行きましょう」

「えっ、でも俺は……」

「気にするなよ。マサヤだってお前に罪悪感あると思うし、お互いに謝ってこい」

カイは戸惑うトシタカの手を引いて、医局を出ていった。


ここには、マリアちゃんと俺の二人だけ。

マリアちゃんは俺を何度も見てはうつむき、を繰り返している。

「マリアちゃん?どうした?」

「……ねえ、ウィン先生、教えてほしい」

マリアちゃんはなにか決心したのか、俺をまっすぐ見て、訊ねた。

「私が……怪しい人や、ユキちゃんに狙われてた理由を……教えてほしい」

マリアちゃんの瞳はまっすぐ俺を見据えている。切実な様子がひしひしと伝わってくる。

……結局、俺から説明することになるのか……。

「……マリアちゃん、落ち着いて聞いてほしい。この話は本来は俺がすべきことじゃない。だから……話を聞いてショックを受けても、自暴自棄にはならないでほしい。そして……難しいかもしれないけど……誰も……恨まないでほしい……」

「恨む?私が誰かを?」

「ああ……、俺のことを恨めしく思うかもしれない。もしかしたら他の誰かかもしれない……。でも、そうはなってほしくないから……」

マリアちゃんはしばらく沈黙し、その後、頷いた。

「……うん、わかった。私、何を聞いても取り乱さない。誰も恨んだりなんかしない。……約束する」

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