倒れるマサヤ
「おい!マサヤ!しっかりしろ!」
マサヤはそのまま机の上に突っ伏して動かなくなってしまった。
声をかけても反応がない。
「どうかなさいましたか!?」
司書さんが慌ててやってきた。
「救急車を1台呼んでください!」
そう伝えると司書さんは頷き、連絡しに行った。
脈を確かめてみると少し早い。そして、体温が高い。コイツ、熱だしてる。
「救急車来ました!!!」
俺はマサヤと一緒に救急車に乗り込み、病院に向かった。
「正直にいう。ストレスだ」
「……やっぱりか」
今日の救急外来の担当はニコルだった。
「マサヤいろいろ溜め込んでただろ?一気に爆発したんだ。お前が迎えに行ってホッとしたのもあるかもな。まあ、とりあえず休ませといてやろうぜ」
「……でもビックリした……。返事したと思ったのにそのまま倒れて動かなくなるんだもんよ……」
「俺もアイツのことなるべく気に掛けるようにはするからさ」
「ああ、頼むよ」
マサヤは今病室で寝てる。その間に、俺はユキちゃんの様子を見に行くことにした。
ユキちゃんの意識は戻ったと部長から聞いた。部屋に行ってみるとユキちゃんの姿はなかった。
「あれ?」
確かにユキちゃんの傷は大したことはない。でも、もうそんなに動くのか?
ユキちゃんを探そうと部屋を出て、ナースステーションへと向かう。
「あっウィン先生だ!」
「ウィン先生ー!」
後ろから女の子二人の声がした。振り向くとマリアちゃんと、髪を短く切ったユキちゃんがいた。
「ユキちゃん!?髪の毛どうしたんだ……?」
「さっき、マリアちゃんに切ってもらったの。血で傷んじゃったから」
ユキちゃんの首には包帯が巻かれている。俺が巻いたんだけど。とはいえ……女の子の髪を切らざるを得ない状況にしてしまった責任感もちょっと感じている。
「ユキちゃん……ごめんな」
「先生はなにも悪くないよ。それに……私はお兄ちゃんに辛いことをさせようとしちゃった……お兄ちゃんがそんなことできるわけなかったのに……」
ユキちゃんは申し訳なさそうな顔で首を小さく振った。
「……そうだね、マサヤは……人を傷つけることや人が傷つくことを極端に嫌っているから……。でも、マサヤは誰も傷つけなかっただろう?もし、マサヤがユキちゃんのことを傷つけていたら、それはマサヤ自身が自分を否定したことになると思うんだ」
「……うん、お兄ちゃんはお兄ちゃんだったね」
ユキちゃんはニコッと笑った。なんだか少し雰囲気が変わった気がするけど、具体的にどう変わったかと言われるとわからない。
「ねえ、ウィン先生」
マリアちゃんに声を掛けられた。
「ん?マリアちゃん、何?」
「マサヤくん体調崩したって聞いたよ?ホント?」
「私もそれ、気になってたの」
「ああ、それか。うん、たぶんいろいろあって疲れがたまってたんだと思うんだ。今は病室で休んでるよ」
「お見舞いに行ってもいい?」
「うん、いいよ。ユキちゃんは?どうする?」
「私も……行ってもいいの?」
「もちろんだよ。もしかして……ちょっと会いづらい?」
ユキちゃんはマサヤに罪悪感があるんだろう。手が、所在無げにもじもじ動いている。
「うん……、……でも、本当にちょっとだけだよ!お兄ちゃんのことが嫌いになったとか、そういう訳じゃないから!」
「わかってるから大丈夫だよ。じゃあ、案内するね」
俺は女の子二人を連れて、マサヤの病室に向かった。




