マリアの秘密
部屋に行くと、荻野さんとウィン先生が待っていた。
「やあ、雅也くん」
荻野さんは昨日に比べたら元気そうだ。酸素マスクも心電図もついてない。腕に点滴は刺さっているけれど。
「どうして荻野さんの部屋なんですか?」
「オギノさんも関係があるからだよ」
ウィン先生は椅子に座っている。俺にも同じように椅子をすすめた。
「マリアの秘密なのに?」
「それについてなんだけどね、私から話そうと思ってるんだ」
……ちょっとよくわからない。マリアの秘密なのに話すのは荻野さん。そしてマリア本人には内緒……。
「俺もマリアちゃんの秘密については知ってるけど……知ってしまったのはたまたまだ。俺からよりも、本人から聞いた方がいいだろ」
「本人???」
「マサヤはマリアちゃんの年齢知ってるか?」
「え?いえ、聞いてないですけど、俺と同じくらいなのかなと」
「あの子は13歳だよ」
「13歳……思ってたより若いんですね。そうか、背が高いから大人っぽく見えるのか。……ん?」
答えたのはウィン先生じゃない。荻野さんだ。でも、どうして荻野さんがマリアの年齢を知ってるんだ?
「なんで荻野さんがマリアの年齢を知ってるんです?」
「それはね、私があの子の父親だからだよ」
「……んん??」
え?でも、マリアお父さんいるって言ってたし……。あっ、もしかしてあの本に娘がいるって書いてあった……!!
「預けたって言う娘さん……!!!」
「そういうことだね」
「……え、じゃあ、リッツさんとエリーさんって」
「……そうだ。マリアちゃんとは一切血の繋がりはない」
そうか……だからマリアには言えないんだ……。自分と家族の間には血の繋がりがないなんて……知ってしまえばマリアはきっと傷つく……。
「マサヤ、そこもある程度重要なんだけどな、お前を呼び出したのはそこじゃない。なんでこの流れになったか、覚えてるか?」
きっかけは今朝、俺がマリアが狙われていることについて先生に相談したことだ。あのとき先生は狙っているのはあの組織の研究者だと言った。
「あっ……!!マリアは……ナハネ族だ!!!そうだよ!!荻野さんの娘さんだもん!そりゃそうだよ!!」
「マサヤ、それ心の中の声だろ」
ウィン先生に指摘され、あわてて手で口を塞いだ。あんまり大声出しちゃうと聞こえかねない。
「……そういうことなんですね、だから……マリアは狙われる……。マリアはこのことは何も知らないんですね……?」
「……そう、マリアは何も知らない……。今の家族と血が繋がっていないことも、私が父親だと言うことも、自身がナハネ族の数少ない生き残りだと言うことも……」
「俺、誰にも言いませんから。マリアが自分から気づくまで、誰にも」
「雅也くん、マリアのこと、よろしくね」
荻野さんは直接マリアを守ることができない。だから、俺やウィン先生に託すんだ。
荻野さんは昨日手術した割に調子が良さそうだ。
顔色は……まあ、良くはないけど……しんどいとか痛いとかって言うのは無いみたいだ。
「オギノさん、具合どうです?」
「うーん、強いて言えば貧血ぎみですかね」
「スゲー血吐いてましたもんね」
ウィン先生と荻野さんは話している。……血を吐くって、何があったんだろう。
「まあ、診察した感じ悪化はしてなさそうなので、このまま薬で様子見ましょうか」
「あの、なんで荻野さんは入院してるんですか?血を吐いたって……大丈夫なんですか?」
「あ、マサヤは知らないか。そうだよな。お前帰ってくる前だもんな」
「元々はお腹痛くてアリストの病院に入院してたんだけどね、ベッドの空きがなくて転院してきたんだ」
「ストレス性の胃潰瘍だ。昨日手術したのは胃に穴が開いて吐血したからだ」
「なるほど……そうだったんですね」
「でも、不思議だよね。私が転院してきた病院が雅也くんのいる病院で、雅也くんを助けてくれたのがマリアの家だなんて……偶然とは思えないよね」
「……運命、ですかね」
「運命……か、そうかもしれないね」
その運命は俺たちに何をさせたいんだろう。俺たちは……どこに向かっているんだろう……。




