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生命の行方・第二部  作者: 杉谷ゆぬの(果樹)
第8章・雅也と大祐の関係
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俊貴の瞳

ふらふらと診察室までの廊下を歩いていると、待合室に俊貴とカイたち3人がいた。

「マサヤ!!!」

キースが勢い良く立ち上がって、俺の手を握る。

「……ただいま、みんな」

「良かった……っ、心配してたんだよ……」

キースは本当に心配そうな目で俺を見つめた。

「マサヤ……手、冷たいよ……?顔色も良くないし……」

「あ、ホントっす。顔青いっすね」

「今から診察室行くところだったんだ」

「兄さんが良ければ俺たちもついていくぜ。トシタカも構わないだろ?」

「ああ」

俊貴と目が合った。俊貴の瞳は左右で色が違う。右目の方が色素が薄い気がするけど、北マルアに投げ飛ばされる前に話してたときは左右対称でもっと濃かったはずだ。

「俊貴、お前の右目、茶色いんだな。前は違った気がするけど」

歩きながら、俺は俊貴に話しかける。

「ああ、なんか……」

そこまで言って俊貴は何故か固まった。

「トシさん?どうかしたんすか?」

俊貴は左右の目を交互に隠し、俺やカイ、セル、キースの顔を見た。

「お?あれ?治ってる?」

「何がっすか?」

「実は右目で色が認識できてなかったんだよ。でも、今は治ってんだ。不思議だ……」

俊貴は首をかしげる。でも、理由は誰にもわからない。

「まあ、雅也のついでに俺も診てもらおう」


診察室の前まで来たので、廊下の椅子に座ってみんなで待機だ。

そのうちニコル先生が来るだろう。今のうちに、俺は俊貴に聞きたかったことを聞いてみることにした。

「なあ、俊貴」

「なんだ」

「俊貴も改造手術受けてるよな」

「ああ」

「そのときのことって……覚えてる?」

俊貴の血の気がさっとひいた。

「……あれだけは……記憶から抹消したいと思ったね」

「やっぱり覚えてるのか」

「お前は?」

「俺は覚えてたわけじゃない。思い出したんだ」

「あれを思い出したのか?ここをこうに切られて……」

そう言って、俊貴は自分の胸から腹にかけてを指でなぞる仕草をする。

「内臓をこねくり回されるみたいな……」

「その言い方やめろよ……気持ち悪くなるだろ……」

「でもそれ以外に言い方あるのか?無いだろ?」

「……まあ、そうだけど……」

「で?何が聞きたいんだ?」

「そのときの傷って残ってる?」

「無いな」

「なんで?」

「知らん。でも、傷跡が残らないようにすることも出来るだろ」

「ニコル先生もそう言ってたけど……」

「あんまり気にすることないんじゃねえか?」

「うーん……」

あまり納得はできないが、俊貴が言うことももっともだ。考えても仕方ないし、気にしないことにしよう。


「ほいお待たせー。なんかいっぱいいんなぁ」

ニコル先生が軽いノリでやって来た。

「俺たちは付き添いっす!」

「俺は雅也のあとに診てもらいたくて」

俊貴はさっき気づいたことをニコル先生に説明した。

「お?確かに不思議だな。じゃちょっと待ってろ」



ニコル先生に連れられ、俺は診察室のベッドに腰かけた。

「本来ならお前の主治医はウィンだから、アイツに診てもらった方がいいんだとは思うんだけどな」

「何か理由があるんですか?」

「ウィン階段から落ちてさ、一応安静にしてないといけないらしいから」

「でも処置室のところいたじゃないですか」

「たぶん部長に手伝わされたんだろ。で、マサヤ。調子はどうだ?」

「今は平気です」

「あんまり顔色良くないけどな」

「あ、でも……長旅でちょっと疲れちゃって……」

「吐き気は?」

「無いです」

「うーん、でもお前元々貧血ぎみだからなー、点滴するか」

「……なんでそこで点滴出てくるんですか?」

「飲み薬でもいいけどな、疲れてるんだろ?ちょっと寝てけよ。俺夜勤だし」

「なんか良くわからないですけど……」

「いいからいいから。ほれ、寝ろ」

ニコル先生に促されて俺はベッドに横になる。

「……俺注射苦手なんだよなー」

「失敗しないでくださいよっ!?」

「わかってるって」

先生は無事、失敗することなく注射針を俺の腕に刺し、点滴をセッティングする。

「ま、ほぼただの生理食塩水だけどな」

「へっ?」

「簡単に言うと体液と同じ成分の水だ。少し貧血用の薬も入ってるけど」

「……その説明、必要あります?」

「いいじゃねえか、そのまま大人しくしとけよ」

「わかってますけど……」

管の中間地点あたりにある筒の中に、ポタ、ポタ、と点滴の液体が……ほぼただの塩水が落ちていく。ぼんやりと眺めているうちに眠くなってきた。

「うう……眠い……」

「抵抗すんなよ。寝とけ寝とけ」

今寝たら夜寝られなくなる……それは困る……

「でも……夜……寝れなくなっちゃう……」

「無理しないのー、おやすみー」

ニコル先生の言葉は魔法の言葉だった。俺の意識はその言葉と共に闇へと落ちていった。

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