雅也と大祐の再会
オギノさんは普通に自室に戻っているようだ。ということは俺の入院している部屋でもある。
部屋に入ると、オギノさんは麻酔でまだ眠っていた。
オギノさんの心拍に合わせた電子音と酸素を体内へ供給する機械音が部屋を支配している。
無色の液体が管を通ってオギノさんの左腕に刺さった点滴の針から体に入っていく。
顔色はやっぱりまだ悪い。処置が早かったとはいえ、吐血したせいで体内の血液量は減ってるんだろう。
「ほら、まだ寝てるだろ」
「で、でも心配だったもんだから……!」
「分かるけどさ、起こしたら悪いだろ?」
「んん……」
オギノさんが小さく呻く。瞼が震え、ゆっくりと目を開けた。
「……あ、ウィン先生……手術は……終わったんですね……」
「はい。オギノさん、気分はどうですか?」
「……気分……、今のところは……おかしなところはないみたいです……」
「起こしちゃったみたいで……申し訳ないっ!でも、俺のいないうちに急変したって聞いたから心配だったんだ」
ニコルは頭を深々と下げた。
「そんな……ニコル先生、顔をあげてください……。心配してくださって、ありがとうございます……」
「マサヤが帰ってきました。マリアちゃんも一緒です」
「雅也くんに会わせてもらえないですか……?私は……どうしても、彼に謝らないといけない……」
「俺としては、オギノさんの体調を考慮して明日以降にしたいと思っています。ですが……」
そこまで言って、走ってくる足音に気づいた。
「待ってよマサヤくん!どうしたの?」
「俺……あの人知ってるはずなんだ。だから……会わなきゃいけない……気がする」
マリアちゃんとマサヤだ。
マサヤは既にオギノさんがここにいることを知ってる。カイから聞いたのか?
「会えないかもしれない……まだ、手術したばっかりって言ってたし……でも、居てもたってもいられなくなって……!」
お、そこの情報も入ってるのか、部長かな。
「……雅也くん、いるみたいですね……」
「一緒にマリアちゃんもいるな」
「……呼ぶか」
俺は部屋のドアを開ける。
マサヤとマリアちゃんは部屋の少し手前にいた。
「お前たち、病院では静かに」
「す、すみません……」
「マサヤくんが、カイくんに話聞いたあと飛び出していっちゃったからビックリしちゃった。おじさん先生にも話聞いてたけど、マサヤくんの会いたい人はここにいるってことでしょ?」
「うん、そういうことだね。……マサヤ、オギノさんもお前と話がしたいって」
「いいんですか……?」
「とりあえず来いよ。そんなところにいたってなにも始まらないだろ?」
二人を部屋の中に招き入れると、マリアちゃんはなにかに気づいた表情でオギノさんのことを見ている。
「あれ?お兄さん、会ったことあるよね?」
なんと。マリアちゃんはオギノさんのことを覚えていた。
「……何年も、前のことだけど……覚えててくれたんだね……」
「うん、あのときも具合悪そうだったね?手術したんでしょ?大丈夫なの?」
「うん……、大丈夫だよ……」
「あのときも大丈夫って言ってたけど、ホントかなぁ?あ、そうだ!マサヤくんはお兄さんと話があるんでしょ?私いない方がいいよね!」
すごく空気読む子だなこの子……!
「じゃあ、ひとまず今日の寝床について考えようか。あ、ニコル」
「ん?」
「俺、ついでに部長にオギノさんの意識戻ったこと伝えてくるから、オギノさんの付き添いよろしくな」
「おお、わかった」
マサヤとオギノさんのことはニコルに任せて、俺はマリアちゃんを部屋から連れ出す。
「じゃ、行こうか」
「うん、そういえば何も考えてなかったなー。どうしようか?」
マサヤにはたくさん話したいことがあるはずだ。




