雅也、帰省
電車の止まる音と振動で俺は目を覚ました。
満員電車とまでは行かないが、座席は埋まり、つり革に掴まり立っている乗客もパラパラといる。そんな中、俺とマリアは座っていた。
「マサヤくん、次が降りる駅だよ」
「ん……、うん……」
各駅停車の電車に乗って約一時間。俺たちはもうすぐワーナルに着く。
とても眠い。なかなか眠気が無くならなくてぼんやりしていると、マリアが顔を覗き込んできた。
「マサヤくん、眠そうだね」
「うん……電車初めてだったから……なんかちょうどいい揺れで……眠くなる……」
たぶんそれだけじゃないだろう。ここ数時間の出来事で俺は気を張っていた。そのせいで思いのほか疲れてるのかも知れない。
マリアというと、自分が狙われているにも関わらず、のんきに携帯ゲーム機で遊んでいた。
「あ、そろそろ着くね!」
電車は止まり、乗客が次々と電車を降りていく。俺たちもその流れに乗り、電車を降りた。
「ついたー!私ワーナルはじめてなの!マサヤくん、案内して?」
「マリア……それ目的違うから……。それに俺もワーナルの人じゃないから案内できないよ」
「そうなの?じゃあ、仕方ないか。本来の目的は……病院だね!さ、行こっか!」
マリアは目的を思いだし、率先して前を歩く。改札口を出ると、遠くで手を振っている人物が見えた。
「あーにきーー!あー!にー!きー!」
俺のことを兄貴と呼ぶのは俺が知っている限り一人しかいない。
「マサヤくん、知り合いなの?」
「うん、友達。きっと迎えに来てくれたんだ」
俺たちはすぐに声のする方へ向かった。
すると、そこにはトシタカの姿も一緒にあった。
「……よう」
俊貴は小さく手を挙げる。話は聞いてたけど……ほとんど無傷じゃん。
「はじめまして!私、マリア・イグレントです!お世話になります!」
マリアが自己紹介し、カイとニコル先生も同じように自己紹介する。
「俺はカイと言います!よろしくっす!」
「俺はニコル。マサヤが入院してた病院の先生なんだ」
「カイくん、ニコル先生!よろしくお願いします!」
3人が自己紹介しているうちに、俺は俊貴に話しかける。
「お前……なんで生きてるんだ?」
「……ずいぶんな言い方だな。あのプログラムだよ。あれには俺たちを簡単には死なせないプログラムが組み込まれてる。だから俺は死ななかった」
「……」
やっぱりそうなのか。俺も……そのプログラムで一度生かされてる……。
「俊貴、ICチップはまだあるのか?」
「ない。由季にとられた。由季は今行方不明だ」
「……!?それっていつだ!?」
「今日の昼だ」
由季が……行方不明……!?待て、落ち着け俺……。由季は今行方不明、俊貴は由季にICチップをとられたと言ってる。ということは、俊貴は由季に襲われてる。
………………
「お前、平気なのか?」
俺の口からは純粋な疑問が出てきた。
「え?なにがだよ?」
「動いてていいのか?由季に襲われたんだろ?」
「ああ、それか。大したことないから大丈夫だ」
確かに、俺たちナハネ族は元々身体能力は高い。でも……だからといって刺されてすぐはさすがに……俺だって安静にしてたのに。
「……で、由季が行方不明ってどういうことだ?」
俺は俊貴の体調が気になりつつも由季のことを聞いてみる。
「俺を襲ってICチップを奪ったあといなくなった」
「……まさか、洗脳されてたのか……?」
「いや、あれはあいつの意志だった。あいつも何か考えてるんだ。……だからいなくなった」
「……」
由季の意志……でも由季の心は洗脳された12歳の時点で止まってるはずだ。
12歳の女の子がそんな危ない真似するのか?まさか……
「兄貴ー!トシさん!そろそろ帰りましょう!」
カイの声で現実に引き戻された。
「あ、うん。わかった」
「兄貴、考え事っすか?」
「うん、でも大丈夫」
俺たちは病院へと歩いていく。
そういえばウィン先生は来ていない。何でだろう?




