マサヤを迎えに
「なあ、トシタカ」
不意にウィンが声をかけてきた。
「ん?」
「お前に頼みがあるんだ」
「なんだよ、俺だって怪我人なんだから無茶なことは出来ないぞ?」
「わかってるって。カイにも一緒にお願いしていいか?」
「なんすか?」
「一応付き添いでニコルにもついていってもらおうと思ってるんだけど、マサヤを迎えにいって欲しいんだ」
カイはそれを聞くなり目を輝かせ始めた。
「兄貴のお迎えですか!?やったー!兄貴帰ってくるんすね!」
「ああ、本当は俺も行きたかったんだけど、頭打ってるからな。もう少し安静にしてないと部長に怒られるから」
「そういうことなら、まあ。でも、ニコルは?いないぞ」
「今警察に連絡してもらってる。そのうちもど……」
「ただいま!」
噂をすればなんとやらだ。ニコルが戻ってきた。
「あれ?トシタカもカイもいるのか」
「由季ちゃんは探してくれるって?」
「ああ。あと、ソレルさんもうマサヤが帰ってくること知ってたよ。少し前に電話がかかってきたんだってさ」
「確か、マサヤはタクシーの運転手さんとマリアちゃんとで手分けして電話してるって言ってたからな。あ、そうそう。ニコル、戻ってきてそうそう悪いんだけど、また頼みがあるんだ」
「なんだ?今日くらいお兄さん、コキ使われてやるよ!」
「カイとトシタカと一緒に、マサヤを迎えに行って欲しいんだ」
「いいよ!!」
ビックリするほど即答でニコルはいい返事をした。
「北マルアからだろ?で、電車で帰ってくるってことは……そろそろ出るか。歩いて駅につく頃にはマサヤたちもつく頃だろ」
というわけで、俺とカイとニコルの三人で駅に向かう。
ニコルは白衣を脱いできたらしい。カイも外出用に着替えている。俺はというと、ウィンが服を貸してくれた。
「はー、マリアちゃんか、どんな子なのかな……」
さっきもウィンが言ってたけど、ちょいちょい出てくる「マリアちゃん」という名前。一緒に来てるっぽいのはわかるんだけど、何でだろう。
「なあ、マリアちゃんて誰だ」
「あ!それ俺も気になってたんすよ!」
「あ、ウィン説明してないのかよ。マリアちゃんはな、オ……」
そこまで行ってニコルは止まる。
「オ?なんすか?」
「お、お世話になってたうちの娘さんなんだ!マサヤが!」
「なんでわざわざ倒置法使ったんだよ」
「たまたまだよ!たまたま!倒置法使いたくなるときだってあるだろ!」
「ないっすね」
「ないな」
「と、とにかく。マサヤのことがきっと心配だったんだよ!だからついてきたんだ」
「まあ、そういうことにしとくか」
ニコルの煮え切らない反応に若干怪しさを感じながら、俺たちは駅へと歩く。意外と遠い。病院から30分ほど歩いたところで、駅が見えてきた。
「あっ、今電車着いたみたいっすよ!」
目の前の線路を電車が走っていた。減速してホームに入っていく。
カイは一人で先に駅へと小走りで向かう。
「カイ、走るな。体に響くぞー」
ニコルに言われ、カイは早歩き程度にスピードを落とした。
俺たちも、少し早足で駅へ向かった。
……俺たちはまだ知らない。マサヤと一緒に来たマリアという少女の正体も、それが何を意味するのかも……。




