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生命の行方・第二部  作者: 杉谷ゆぬの(果樹)
第1章・飛ばされてきた場所
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解熱剤

フィルさんは帰り、俺とマリアとその友達が今ここにいた。

俺の体調はというと、喉が痛くてとてもだるい。熱も大分上がってきてるっぽいので自力で動けないんじゃないかと思う。

「マリアどうしよう……。マサヤくんつらそうだよ……」

「うーん……でも、フィルちゃん呼ぶには早すぎるし」

「ねえ、さっき解熱剤もらったじゃん!それ使おうよ!」

「お、そう言えばそうだったね!」

彼女たちは2つある袋のうちの解熱剤の入った袋の注意書を読んだ。

「38・5度以上じゃないと使っちゃダメだって」

38・5度……人間の平熱はだいたい36度台だ。よく考えたら平熱より2度も高いんだ、それだけ体温高けりゃしんどいのは当たり前だよな……。

「マサヤくん、はい。体温計」

マリアに体温計を渡され、脇に挟む。

一分程度で音が鳴った。それを表示は見ずにマリアに渡した。

「わっ!38・9度!マサヤくん、しんどくない?」

「……しんどいよ……。……喉もいたいし……」

思った以上に声が出ない。

「……マサヤくん、声全然出てない……のど痛いの?薬飲めそう?」

「うん……たぶん、平気……」

「マリア!水!」

「ありがとう!はい、マサヤくん」

何とか起きあがってマリアから水の入ったコップと薬を受けとる。

味覚もおかしくなってるらしい。味がわからない。

通らない喉に無理矢理水で薬を流し込む。

「ほらほら、飲んだら寝なくちゃ」

「うん……ごめん……」

女の子たちに急かされ、俺はまたソファに横になった。

そのまま俺は眠りに落ちていく……。



「マリア、マサヤくん寝た」

「うん。ゆっくり休んでくれればいいんだ」

「あとはおばさんかリッちゃんが帰ってくれば安心だね」

彼女たちは眠っているマサヤの様子を見ながら、教科書を開く。

「でも、心配だなあ……」

「なにが?」

「マサヤくんだよ。だって、なんにも話してくれないんだよ?きっと、辛いことがあっても抱え込んじゃうタイプなんだよ」

「うーん……、確かに」

「……あたしたちはあんまり関わらない方がいいのかもしれないね……、マサヤくんの言った通り」

一人の友人が言う。

「……確かにそうかもしれないけど、あたしはやっぱりほっとけないな……」

「……そこがマリアらしくていいんだけど」

「それに、まだ詳しいことはなにも聞いてないじゃん。なにも話してくれないのはあたしたちがなにも聞かないからだよ」

「そうなのかな……?」

友人はあまり納得していないようだ。



しばらくして、マリアの姉が帰ってきた。

「ただいま!」

「あ、お姉ちゃん!」

「マリア、どうした?『飛んできたお兄さん』は」

「寝てる。熱が38・9度もあったからフィルちゃんにもらった解熱剤飲んでもらったよ」

「……なるほど。彼、名前は?」

「スギサキマサヤくんだよ」

「声かけてみてもいい?」

「え?でも、せっかく寝たところだし、寝かしておいた方がいいんじゃない?」

「そうは言ってもね……私一応警察官だからね……」

姉は申し訳ないと思いつつ、マサヤの様子をうかがう。

「まあ、お仕事だし、仕方ないか……」

姉は、一応マリアに確認してからソファで寝ているマサヤに近づいた。



「……キサキくん、スギサキマサヤくん!」

聞き覚えのない声が俺の名前を呼んでいる。

薬が効いているのか、今はさっきほどしんどくはない。

目を開けると、やはり見覚えのない女性にのぞき込まれていた。

「あ、よかった。気分はどう?」

「……あ、いえ……、大丈夫……」

「嘘おっしゃい」

即座につっこまれた。

「う」

「もうちょっとちゃんとしたとこで寝た方がいいわよ。ベッド貸してあげるから」

起きあがると、頭がふらふらして動けそうにない。

しんどくなかったのは寝てるときの話で、起きてるときとは違う。

「マリアとその仲間たち!彼の移動を手伝ってあげてちょうだい」

「はーい!」

彼女たちに手伝ってもらい、俺は何とか移動した。

「でも……、いいん、ですか……?俺が、このベッド使ったら……」

俺の質問にマリアが答えてくれた。

「平気だよ。お父さんはどこでも寝られる人なんだ。マサヤくんが使ってても問題なし!」

「それにお母さんには承諾取ってあるから。気にしなくて大丈夫」

なんだか二人のお父さんにとっても悪いことをしている。

「さて、移動もしてもらったし。お話ししようと思ったけど、ちょっと辛そうだからやめとくわね。改めて、ゆっくり休んでちょうだい。あとでまた誰かしら起こしにくるかもしれないけど、あまり気にしないで」

そう言って、彼女は部屋を出ていった。

(寝てるだけで、大丈夫なのかな…?)

でも、寝てる以外にはなにもできない。

このベッドの持ち主であるお父さんに心の中で謝りながら、俺は目を閉じた。

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