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生命の行方・第二部  作者: 杉谷ゆぬの(果樹)
第7章・重要人物集合
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俊貴と荻野

……暇だ。ウィンが階段から落ちたらしい。ニコルは俺の処置をしたあと急いで出ていった。それから俺は一人でぼんやりしているんだが……

「暇だな……」

暇すぎる。誰か来ないかと期待してドアの方を見ると、誰かがドアを叩いた。

「トシさん、大丈夫ですか?」

カイだ。カイは俺の返事を待たずに部屋に入ってきた。

「ん?まあ暇だけどな」

「ユキちゃんに刺されたって聞きましたけど……」

「ああ。聞いたんだな」

「本人から聞きました」

「そうか、由季から聞いたのか……。あれ?」

「どうしたんすか?」

ウィンが階段から落ちた情報を聞く前、ニコルはウィンは由季の話を聞いてるって言ってたはずだ。で、ウィンが落ちて、ニコルが出ていって……じゃあ由季は?カイに話をしたあとどこに行ったんだ?

「由季は?」

「……いなくなっちゃったっす」

「へっ!?」

「俺たちの部屋に来て別れの言葉を残して去っていったっす……」

「そのこと、ウィンとニコルは知ってるのか!?」

「はい。今、ニコル先生が探してます。ソレルさんも病院にいたんで、たぶん一緒に探してると思います」

「ソレルさん?」

「あ、トシさんはソレルさん知らないっすね。警察の人っす。ウィン先生や兄貴によく会いに来てます」

その二人ってことは……やっぱり雅也の暴走事故の件か。

「じゃあ、由季のことはそっちに任せとくか。カイ、ウィンが階段から落ちたって聞いたけど、大丈夫なのか?」

「はい。話し声聞こえたんで、元気だと思います」

「そっか。じゃあ、見舞いにでも行くか」

うつ伏せの状態で寝ていた俺は体を起こす。その様子を見ていたカイはなぜか目を丸くした。

「何言ってるんですか。トシさん、刺されてるんでしょう?安静にしてないとダメっす!!」

「とは言ってもなぁ……寝てるだけって疲れるんだよな」

「まあ、わかるんすけど」

「さ、行くか」

「仕方ないっすね。俺も付き合います」

俺はカイと一緒にウィンのいる病室に向かった。


ネームプレートにはウィン以外にもう一人、名前が書いてある。オギノダイスケ……名前的に少数民族だろう。

ドアをノックするとウィンの声で返事が来た。

「はーい」

ドアを開けるとベッドの上にあぐらをかいて何やらノートに書き込んでいるウィンと、隣のベッドで寝ている明らかに顔色の悪いもう一人がいた。

「トシタカ、お前……安静にしてろよ。怪我人だろ?」

「お前もな」

ウィンに言われて思わず言葉を返す。

「俺はおとなしく自分のベッドにいるだろ?」

「あの……彼らは……?」

顔色の悪いもう一人、オギノダイスケがウィンに質問してる。

「あ、そうそう!こいつがナハネ族の生き残りですよ。サイトウトシタカといいます」

「……なんで俺の紹介してるんだ?」

……もしや、ナハネ族か?でも、こんな大人も生き残ってるんだな。皆殺しにされたのかと思ってたけど……

「この人な、ナハネ族なんだ。今は胃潰瘍で入院してる」

「へぇー……は?ほんとにナハネ族なのか」

「ああ。で、トシタカと一緒にいるのが入院患者のカイです」

「よろしくっす!」

俺の質問の返事もそこそこにウィンはオギノダイスケに紹介を続けた。

「はじめまして……私は荻野大祐と言います……」

「あ、はじめまして。斉藤俊貴です」

本当に顔色悪いな。大丈夫なのか?心配だ……。

「斉藤くん、質問してもいいかな……?」

「はあ、なんでしょう」

「君は同じナハネ族の女の子に襲われて、そのときに兵器の力を失ったと聞いているんだけど……」

「あー……そっすね~。つい何時間か前に由季に刺されて、そのときにICチップ取り出されたんで。ICチップはたぶんもう処分してると思います」

「じゃあ……君はもう生身の人間なんだね」

「そういうことですね」

「なら……その状態でどの程度戦えるかな……?」

戦う……どういう意味でだろう。

「それってどういう意味でですか?」

「うーん……、そうだね、素手の喧嘩かな。でも、相手が素手かどうかはわからないけど……」

て言うことは、この人もナハネ族が未だに狙われてること知ってるのか。たぶん、研究者たちが何か仕掛けてきた時のことを考えてるんだろう。

「ウィン先生も考えてみてくださいますか?」

「ダイさん、俺はいいんすか?」

カイは……まあ、戦力外だと思うけど。

「カイは戦うなよ。死ぬだろ」

「ウィン先生は大袈裟です!!」

「昨日発作起こしたやつがよく言うよ」

「無理はしなくていいんだ。カイくんは発作が起きるような病気だから、それで体調を崩したら元も子もないからね」

「……そうっすか?」

「そうだ。患者に戦わせられねぇよ」

「で?なんでそんなこと確認するんです?」

「うん……私や君を狙ってる相手が来るかもしれないからね……。私は見ての通り戦力にならないから……いざというときに一人でも多く戦える人がいればと思ったんだ……」

「なるほど」

「そういうことなら、俺はサシなら負ける気しないですよ。得物持ってても勝てると思います」

おいおいおい……ウィンがさらりとなんか言ってるぞ……。

「おおっ!ウィン先生さすがっすね!元総長なだけあります!!」

「すごいですね、きちんと更生できたんですね」

えっ、ウィンて元総長なのか?荻野さんはナチュラルに受け入れてるみたいだけど。

「……言っときますけど、俺、警察のお世話になったこと一度もないですからね?」

「でも、セルがウィン先生の偉業をいろいろ教えてくれたっす」

「やめてくれ……黒歴史掘り返さないで……」

俺はノーコメントということで。

「斉藤くんは?どうかな?」

「俺は……多少は戦力になるんじゃないですかね?殴りあいなら自信あるし。今のところ無敗なんで」

「トシさん、それ多少じゃないっす……」

「でも、戦えそうで良かったよ。……戦わずにすむなら、それに越したことはないけれど……」

確かに戦わずにすむならそれに越したことはない。でも、戦うことになったとして、俺たちの人数と相手の研究者たちの人数に差があればあるほど、不利な状況に変わりはない。と、考えては見るけど、口には出さないでおこう。

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